第1話 シズルを意識した広告的ハンカチ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考プロセスを伺うとともに、創作のスタンスに迫るこのコーナー。第5回目はサン・アドの高井薫氏。第1話では六本木ヒルズの「CLASSICS THE SMALL LUXURY」(六本木ヒルズ ウエストウォーク4F)で販売されている商品ハンカチに注目する。



第1話 シズルを意識した広告的ハンカチ


ユニークなアイデアを盛り込みつつ
ド真ん中を突くデザイン


──今回ご紹介いただけるハンカチでは「商品」をデザインされたわけですよね。

高井●これまで、さまざまなアートディレクターがこの商品のデザインには参加されているのですが、私も去年からデザインさせていただいているんです。たとえば今までは、数字の「4649」で「よろしく」、蟻が10匹で「ありがとう」、小石を並べて「恋しい」と読ませるような、ダジャレをテーマにしてきました。








左上から「4649」は「よろしく」
右上の「蟻が10匹」は「ありがとう」
左の「並んだ小石」は「恋しい」




──ユニークな作品が多いですね。しかも、たくさん工夫が盛り込まれています。

高井●そうですね。たとえば、サイコロと木が描かれているハンカチは、サイコロを英語に言い換えるんですよ。「ダイスキ」ですね。あとは、最初の頃に作った「39」を「サンキュー」と読ませるハンカチをバージョンアップさせて、「1009」でネイティブ風に「センキュー」とか(笑)。普通、あえてデザインしないことを真面目にきれいに作ったら面白いかなと思って。








左上から「39」は「サンキュー」
右上の「1009」は「センキュー」
左は「サイコロ(ダイス)と木」で「ダイスキ」






──今年も、また新しい作品が発売されているそうですね。

高井●最新作は宝石の模様にしたんですよ。今年は「ラグジュアリーなものを」というオリエンもあったので。私はデザインについて考えるときに、ド真ん中を突くのが好きなので、「ラグジュアリー」から連想して、ダイヤモンド、ルビー、サファイアといった宝石のビジュアルを、そのままハンカチに印刷することにしたのです。

──素材として布を扱うのは、これらの一連のハンカチのプロジェクトが初めてだったのでしょうか?

高井●そうですね。今回の宝石は特に、布だからこそ面白い作品だと考えています。実際にはとても固いものが、ハンカチという柔らかいものに印刷されている。紙に刷る場合とは違ったユニークさがあるのではないでしょうか。

──ダジャレシリーズの中でも、「スキヤキ」にはどんな意味があるのでしょうか。

高井●「スキヤキ」という文字が書いてあって、誰かに渡すときに、好きな人には「スキ」の部分だけが見えるように折って渡す、ということを想定したものですね。私は、デザインするもののシズルを大切にしているんです。たとえば、ハンカチのシズルは何かと考えたら、やっぱり「触る」ことと「折る」ということなんですよ。だから、二つ折り、四つ折りにしたときの状態は計算して作っています。

好きな人に渡すときは「スキ」、そうではない相手には「ヤキ」を向けて渡す。「折る」というハンカチならではのシズルを大事にしたデザイン





──なるほど。そのほかに気を配った点などはありますか?

高井●六本木ヒルズにいらっしゃるお客様をターゲットと考えたときに、その方たちに嫌われないようにすることは心がけました。たとえば、気持ちの悪いものだと手に取ってもらえないじゃないですか。それは避けるようにしています。

──インパクトを出すために、反対に気持ちの悪いものを提示するという手法もあると思うのですが。

高井●確かにそのような方法もありますが、私はそれをなるべくやらないようにしています。普段は広告主の代理でデザインをしているという意識が強いので。アイデアありきで考えるのではなく、クライアントのためになるものの中で面白いものを探すわけです。私の仕事はかなり親切ですよ……、と思うのですが(笑)。

──ちなみに、これらの作品は「商品」なわけですが、「広告」との違いのようなものはありましたか?

高井●広告も売り上げに直結しなければいけませんが、そのポスター自体が売れるわけではない。そのような点では違いがあると思います。ただ、せっかく私に依頼してもらったのだから、広告制作者ならではのハンカチを作ろうと考えました。それが、最初のダジャレシリーズのハンカチを作るきっかけにもなっています。白いハンカチを媒体としたときの、私からお客様へのメッセージですね。

──ただ見た目にこだわるだけではないのですね。

高井●そうそう。宝石ハンカチもそうなのですが、広告的な発想がハンカチに活きていると思います。ハンカチには定番のかわいい花柄などとは異なるアプローチで、驚かすことやメッセージ性があるものを作ることが私の使命かなと思ったわけです。

(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


次週、第2話は「デザインにおける自分らしさ」について伺います。こうご期待。


[プロフィール]

たかい・かおる●1967年東京生まれ。多摩美術大学卒業。サントリー宣伝制作部を経て2002年よりサン・アド。最近の仕事には、サントリー、ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング、アナザーエディション、CLASSICS the Small Luxury 、Franc francなどがある。ADC賞、朝日広告賞グランプリなどの受賞経験がある。

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