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バイラルクリエイター養成講座


入門編 第1回 バイラルってなんだろう?

 


本能を直撃し、ハートをワシづかみにするバイラルムービーや人に言わずにはいられないバイラルサイトが続々と増え始めている。理屈抜きにおもしろいモノのまえでは、どんなに偉大な伝統的な戦略も勝てない。Web2.0に躍る世の中に沸々と蔓延し始めているバイラルを、ぼくらのクリエイティブワークのひとつに取り入れてみないか。バイラル元年を迎えた今こそ、やっと広告がおもしろくなってきそうだ。
解説:バイラルエンジン

 

 

 

 

 

 

 


[プロフィール]

バイラルエンジン●東京都出身。バイラルディレクター。オフライン・ソーシャルネットワーキング、完全紹介制の覆面クリエイターユニット「バイラルエンジン」代表。カンヌ国際広告賞、Eyeblaster Creative Awards、宣伝会議賞、東京インタラクティブ・アド・アワードなど受賞。世の中のムーブメントは、すべて人が仕掛けている。


 

 

 

バイラルの意味とは?

 

バイラルとは、「ウイルス(性)の」という意味をもつマーケティング用語である。人から人へと情報が伝わっていく様子を、まるでウイルスが繁殖するかのように重ね合わせたもの。とくに噂によって形成される企業や商品・サービスの「評判」や「推奨」を、ブランディングや販促に活用しようとするマーケティングメソッドである。図1がその例となる。

図1
図1
クチコミと同義に使用される場合もあるが、会話中心だったクチコミ(口頭伝達)に対して、バイラルはCGM(Blog、SNSなど生活者メディア)によるカキコミ(文字の書き込み)である点が大きな差だ。クチコミは人々の興味が薄れたり、熱が冷めたりして時間が経てばやがて消えていくが、図2のようにWeb上のカキコミは削除しない限り、時間が経ってもなかなか消えることがない。

図2
図2
しかも、これまで埋もれてしまいがちだった過去のカキコミ情報も検索機能の向上やRSS、パーマリンクの浸透によっていつでもすぐに引き出しやすくなってきている。これまで、目に見えなかった噂や評判が、クチコミからカキコミになって、文字として目に見える形で広まる時代に入った。

 

 

Web1.0時代のバイラル

そもそもこの言葉が広まり使用され始めたのは、セス・ゴーディン氏の著書「バイラルマーケティング」(2000年)といわれている。日本においては90年代、インターネットによるクチコミマーケティングがすでに期待を集め始めていた。このため、バイラル的な戦略は今にして初めて始まったことではなく、Web1.0時代からすでにあったといえる。Web1.0時代からの流れが、図3である。

図3
図3
Web1.0時代の代表的な事例としては、「サントリー無頼派(ぶらいは)」がある。テレビCMなどマス広告を一切使わずに、Webだけで広告を展開。それにも関わらず、定番ウイスキーを抜いて「コンビニでのウイスキー売上トップ10入りを果たした」と報じられて一気に話題を集めた。図4が「サントリー無頼派」の例だ。

 

図4
図4

 

ブランドサイトが「噂の震源地」となって、人から人へとバイラルを広げてアクセスを稼いだという。日常の出来事や哲学的な思考など、日々のさまざまな思いを赤裸々に綴られた「無頼派日記」。それは今でいうブログのような存在に近い。

また、SNSのような独自のコミュニティがあり、さらにその中ではポイントが蓄積できるオンラインゲームもあった。また、マニアックな趣味の分野でカリスマ的なアクセスを集めるサイトを束ねた膨大なリンク集が用意された。ソーシャルブックマークのような役割を担った。至る所に、人々が「ハマる」要素と「サプライズ」が仕込まれていた。

バイラル元年の幕開け

バイラルは今、従来のサイト集客の発想を根底から覆すものとして期待を集めている。図5を見てみよう。これまでは完成したサイトに、いかに多くの人を集めるかで頭を悩ませがちだったが、バイラルでは人に伝えたくなるような噂の種をいかにサイトの制作段階に仕込んでおくかが重要となる。

 

図5

図5
広告投下によって、瞬間的にアクセスを高める広告依存型サイトに対して、バイラル型サイトは、Webに仕込んだ噂の種をきっかけに興味をもつ人々を広げていきながら継続的なアクセスを促す手法である。図6のアクセス推移が、対比例だ。

 

図6

図6

 

今年はバイラル元年といわれるほど、国内からバイラル事例が続出している。大手スポーツメーカーによるバイラルムービーや、カプコン「極魔界村」などゲーム業界によるバイラルムービーが人気を呼んでいる。

一方で、バイラルムービーばかりでなく、自動車メーカーのブログパーツやPEPSI NEXのバイラルゲーム「NEX GAME」、PIP手法を初めてバイラルサイトに採用したダイドーD-1「新庄さんはまだですか?」などバイラルWebの取り組みが活況だ。

バイラルを誘発する表現手法は、ムービーやゲームやブログパーツなどますます広がってきている。しかし、まだまだ時代は始まったばかりだ。今後どんなバイラルアイデアが登場するか楽しみだ。

 

 

 



次回につづく
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