旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考プロセスを伺うとともに、創作のスタンスに迫るこのコーナー。第7回目はドラフトの関本明子氏。第1話では、エスクァイア マガジン ジャパンが発行する2つの雑誌に掲載された作品を紹介する。
第1話 写真とイラストを合わせた作品
仕上がりイメージが固まっていれば
組み合わせる作業も難しくない
──まずは「Esquire」本誌に掲載された作品について、どのような企画だったのかを教えてください。
関本●「Veuve Clicquot(ヴーヴ・クリコ)」というシャンパンのブランドをテーマにした企画です。「Veuve」は未亡人という意味で、「Clicquot」はシャンパン業界では有名な女性の名前なのですが、この方をモチーフとすること以外は規制もなく、楽しく自由に制作できました。
──この作品では、写真とイラストが組み合わせていますね。
関本●「Veuve Clicquot」は、フランスのなかでも伝統的なブランドなのですが、同時に、これからもずっと続いていくものです。その象徴として、イラストを描いている“途中”の状態を、写真と線画を合成して表現しました。写真もパーツごとに撮影し、組み合わせて使用しているんです。
関本●「Veuve Clicquot(ヴーヴ・クリコ)」というシャンパンのブランドをテーマにした企画です。「Veuve」は未亡人という意味で、「Clicquot」はシャンパン業界では有名な女性の名前なのですが、この方をモチーフとすること以外は規制もなく、楽しく自由に制作できました。
──この作品では、写真とイラストが組み合わせていますね。
関本●「Veuve Clicquot」は、フランスのなかでも伝統的なブランドなのですが、同時に、これからもずっと続いていくものです。その象徴として、イラストを描いている“途中”の状態を、写真と線画を合成して表現しました。写真もパーツごとに撮影し、組み合わせて使用しているんです。
──このように複数の要素を組み合わせていく作業は、位置合わせなどが難しいのではないでしょうか?
関本●仕上がりイメージの固まっていない状態で撮影を行うと大変かもしれませんが、あらかじめ完成した状態を想定してから撮影すれば、それほど難しくはありません。ちなみに、この作品では、写真も自分で撮影しているので、マッチしなかったら、すぐに再撮できたのも1つの大きな要因です。
──イラストの部分は、なぜこのような赤い線で表現したのでしょうか?
関本●「Veuve Clicquot」のパッケージやラベルには、もともと赤い文字の筆記体が使われているのですが、そのイメージから何かできないかと考えた結果です。私は、仕事においてもそうですが、表現方法や考え方を、元にあるテーマの中から探し出すようにしています。テーマを掘り下げれば、アイデアがたくさん見つかります。全く別のものから異なる表現を持ってくると、なかなか、うまくまとまらず難しいんです。元のテーマから見つけたほうが自分でも納得いくし、自然な仕上がりになります。
──この線はパソコンによるものではなくて手描きですか?
関本●まず鉛筆で描き、スキャニングをしてから、さらに調整を加えています。はじめからMacで描いた線を合成すると、写真とうまくマッチしないんです。雑誌は手に取って近くで見ることができるものだし、線の質感はおざなりにしたくない。特に今回、このような世界観のディレクションをするうえで、ディテールにもこだわることは重要だと考えながら制作しました。
──この線はパソコンによるものではなくて手描きですか?
関本●まず鉛筆で描き、スキャニングをしてから、さらに調整を加えています。はじめからMacで描いた線を合成すると、写真とうまくマッチしないんです。雑誌は手に取って近くで見ることができるものだし、線の質感はおざなりにしたくない。特に今回、このような世界観のディレクションをするうえで、ディテールにもこだわることは重要だと考えながら制作しました。
──それでは続いて、もう一方の「touch of ACTUS 2006」に掲載された作品について、概要をお聞かせください。
関本●こちらの雑誌は、子どものためのインテリアを特集した「Esquire」の別冊です。紙で家を形作った「nume」という商品があるのですが、これを用いて「おとぎ話」をテーマに、作品を自由に制作する企画です。「nume」は、子どもたちがクレヨンや絵の具でイタズラ描きできるように白いダンボールで作られているのですが、私はこれが鳥小屋だったら面白いと考えて、鳥が集まっているビジュアルを制作することに決めました。
──ここまで大量に鳥を密集させるアイデアは、どこから生まれたのでしょうか?
関本●もともと何かが集まっているビジュアルが好きだったこともありますし、ヒッチコックの映画からインスピレーションを受けた面もあります。「Veuve Clicquot」の場合と違い、こちらではテーマが漠然としたものでしたし、アーティスティックな表現が求められている部分もありましたので、自分のアイデアの引き出しの中から発想していったんです。
──小屋に集まっている鳥のビジュアルは、写真を印刷しているのですか?
関本●いいえ、飛び立っている鳥を含めて5羽が剥製で、あとは全てイラストです。「イラストを立体にして、それをさらに写真に撮影したらどうなるんだろう」といったアイデアを実践してみました。
──イラストで描かれた鳥も、剥製と同様に、かなりリアルな仕上がりですね。
関本●私の描くイラストは、あまりデフォルメされていないものが多いんです。小さい頃に、写真ではなくイラストで描かれた動物図鑑がすごく好きだったのですが、そこに掲載されているのは説明のためのイラストなので、写真では見えなくなってしまう毛の一本一本までリアルに表現されていました。私のイラストのタッチは、そのような絵に影響をうけているのかもしれません。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第2話は「アートディレクターの描くイラスト」について伺います。こうご期待。
関本●いいえ、飛び立っている鳥を含めて5羽が剥製で、あとは全てイラストです。「イラストを立体にして、それをさらに写真に撮影したらどうなるんだろう」といったアイデアを実践してみました。
──イラストで描かれた鳥も、剥製と同様に、かなりリアルな仕上がりですね。
関本●私の描くイラストは、あまりデフォルメされていないものが多いんです。小さい頃に、写真ではなくイラストで描かれた動物図鑑がすごく好きだったのですが、そこに掲載されているのは説明のためのイラストなので、写真では見えなくなってしまう毛の一本一本までリアルに表現されていました。私のイラストのタッチは、そのような絵に影響をうけているのかもしれません。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第2話は「アートディレクターの描くイラスト」について伺います。こうご期待。
[プロフィール] せきもと・あきこ●1976年東京生まれ。2002年東京藝術大学大学院デザイン科修士課程修了、株式会社ドラフト入社。2002年文部科学大臣賞受賞(D-BROS・カレンダー「HANG2002」)、2005年ADC賞受賞(ワコール ウイング ブールマルシェ・ CI パッケージデザイン)、2006年JAGDA新人賞受賞、日本パッケージデザイン大賞2007大賞受賞(ワコール ウイング ブールマルシェ パッケージデザイン)。主なクライアントに、BOURGMARSHE(インナーウェアーショップ) 、Aco (アクセサリーブランド) 、rinden (玩具ブランド)など。 |