このコーナーでは、旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスを伺うとともに、創作スタンスに迫っていく。第1回目はFLAMEの古平正義氏。 第1話は、イギリスの実験建築集団『アーキグラム』の世界観を、現代のグラフィックデザインと印刷技術で蘇らせたポスターとビジュアルブックからうかがった。
今っぽい雰囲気を取ってつけるのではなく、
いまの方法を駆使して現代的な表現にする
??2005年に水戸美術館で開催された『アーキグラムの実験建築1961-1974』展のポスターとビジュアルブックの制作を手がけられましたよね。
古平●僕は、もともと『アーキグラム』のファンだったんですよ。それが知り合いを通じて水戸美術館の方に伝わって、仕事の依頼が来たんです。自分が好きなことって人に言っておくもんだなって実感しました。
??ファンだったからこそ、意識されたことはありますか?
古平●この展覧会は世界中を巡回していて、それぞれの国でポスターが作られてきたんです。だから、今までのどのポスターよりも格好いいものにしたいと思いました。けれども、今までのポスターでは、アーキグラムのロゴやキャラクター、グラフィックをメインに使ってデザインされていて、彼らの作品のオイシイ部分はすでに使われてしまっていたのです。
??そんな中で、どのように制作コンセプトを立てたのでしょうか?
古平●僕は、もともと『アーキグラム』のファンだったんですよ。それが知り合いを通じて水戸美術館の方に伝わって、仕事の依頼が来たんです。自分が好きなことって人に言っておくもんだなって実感しました。
??ファンだったからこそ、意識されたことはありますか?
古平●この展覧会は世界中を巡回していて、それぞれの国でポスターが作られてきたんです。だから、今までのどのポスターよりも格好いいものにしたいと思いました。けれども、今までのポスターでは、アーキグラムのロゴやキャラクター、グラフィックをメインに使ってデザインされていて、彼らの作品のオイシイ部分はすでに使われてしまっていたのです。
??そんな中で、どのように制作コンセプトを立てたのでしょうか?
『アーキグラムの実験建築1961-1974』展ポスター
古平●アーキグラムの作品はコラージュが特徴的なんです。だから、彼らのコラージュ作品を素材にして、さらにコラージュしていこうと考えました。さらには、1960?70年代のコラージュを、現代の印刷技術を駆使して、新しい見え方のビジュアルにしようと考えました。彼らが見たときに「新しい!」と感じてもらえるようにね。
??その“新しさ”はどうやってデザインしていったのでしょうか?
古平●彼らの作品の面白いところって、混沌とした世界観なんです。そういった素材を使ってとにかくテンションの高いものになるように、感覚的にデザインしていきました。それは本人たちが見たときに、すごく怒るかすごく喜ぶかのどちらか、というくらい触れ幅の大きいもの。中途半端はなし。普通につくるんだったら、彼らの優れたビジュアルをポンとひとつ配置してデザインすればいいわけですからね。 それに、展覧会の会場構成はアーキグラムのメンバー自らがディレクションしているので、展覧会自体は過去のものではない。“今の展覧会である”ということもちゃんと伝えたいと思いました。
『アーキグラムの実験建築1961-1974』展ビジュアルブック(表紙)
『アーキグラムの実験建築1961-1974』展ビジュアルブック(中面)。アーキグラムが当時作ったグラフィックを古平氏がレイアウトし、復元に近い状態で蘇らせた。それらはページの合間に挟み込まれている
古平●既存の“今っぽい感じ”に合わせて作ることはありませんね。そうではなくて、今の印刷技術や紙の使い方を開拓するのです。たとえば、このポスターではアルグラスというレインボーのホログラム紙を使っているのですが、この紙を普通に使っても面白くない。そこで、どこが紙の地なのかわからないくらい色をのせて、コラージュしたいろんなグラフィックの隙間からレインボーをのぞかせたんです。それは箔押ししているかのようにも見えるけど、よく見ると違う。そんな風に使うことこそが、今っぽさに繋がるのだと思います。
??ポスター1枚にアーキグラムの世界観を凝縮したデザイン勝負のポスターですよね。
古平●たとえば、広告だと商品をタレントで訴求することがありますよね? このポスターの場合は、グラフィックデザインがタレントの代わりなんです。だから他の仕事に比べると、僕のデザインの“我”が強く出ていると思います。
??水戸美術館の方に見せたときの反応はいかがでしたか?
古平●最初、評価はしてもらったのですが、ちょっと凄すぎて普通の人には伝わらないのではないか、という意見もありました。けれども、アーキグラム自体がサブカルチャーなのに美術館のポスター然としたものを作るのは、ちょっと違うと僕は思ったんです。だから、このデザインである必要性をきちんと伝えることで、最終的にはこの案に決まりました。
実際、アーキグラム本人たちも喜んでくれました。ラフデザインを見たメンバーのデニス・クロンプトンの返答は「It's Great! Very busy, Very Archigram(すばらしい。大変手が込んでいて、アーキグラムらしい)」。オープニングレセプションでは、メンバーのピーター・クックに「世界中で展覧会をやってきて、いろんなポスター作ってもらったけど、君のが一番だ」って。最高の褒め言葉。本当にうれしかったです。
(取材・文:山下薫 人物写真:栗栖誠紀)
次週、第2話は、「文化としての広告」についてうかがいます。こうご期待。
[プロフィール] こだいら・まさよし●1970年大阪生まれ。'93-96年アキタ・デザイン・カン勤務。'97年独立しフリーランス。'01年FLAME設立。 JAGDA新人賞、東京ADC賞、ニューヨークADC特別賞などの他、アーキグラムのポスターとビジュアルブックがそれぞれThe One Showシルバーを受賞 |