一方的なコミュニケーションはしたくない。 - WEBクリエイティブの舞台裏 第1回「Googleで、もっと。」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

一方的なコミュニケーションはしたくない。 - WEBクリエイティブの舞台裏 第1回「Googleで、もっと。」

2024.4.25 THU

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一方的なコミュニケーションはしたくない。

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馬場氏


Googleでブランディングを担当する、グーグル(株)シニアマーケティングマネージャー馬場康次氏。今回のキャンペーンに至る経緯、制作過程、業務について聞いてみた。


──今回のような形の、大がかりなキャンペーンは初めてですか?


馬場●日本において、テレビコマーシャルも含めた統合的なコミュニケーションを始めたのは2009年11月からです。そのときは「さがそう」というキャンペーンでした。グローバルで「Search On」というコンセプトで展開されていたものをローカルでも展開したんです。でも、日本独自という意味では初めてですね。


──テレビコマーシャルが6本、オンライン動画が16本。アイデアに苦労されたのでは?


馬場●はい(笑)。10倍以上のアイデアが浮かんで、その中から絞りました。ちょっとふだんみなさんがやらないような使い方で、期待を超えるようなものを目指したのですが、それを見た方々に共感していただかないとならない。Googleはグローバルカンパニーですが、われわれ自身はつねに日本のユーザーのことを考えています。ですから日本のユーザーの心に響き、共感されるといった点がすごく重要と思いアイデアを選んでいきました。


──ターゲットは幅広く?


馬場●そうですね。たとえばファッションショーをテーマにしたもの(「画像検索で、fashion show」)は当然若い女性がターゲットになりましたが、それだけではなく、たとえばタブプレイ編(「クロームで、タブを楽しもう」)は全世界であらゆる年代をターゲットにしています。結果としてですが、エア・スカイダイビング編(「Google Earth でエア・スカイダイビング」)は男性から支持を頂いた。でも、特にターゲットを絞っているわけではありません。Googleのサービスにおいては、あらゆる層のみなさんに使っていただいているので、いろいろなバリエーションの中で結果として女性向けだったり男性向けだったり、すべての層の人に訴えかけるものだったり。それは意識して選んでいきました。






──大がかりなセットを組んだり、撮影はたいへんだったのでは?


馬場●たいへんでしたね。企画も含めて2カ月で、われわれもたいへんでしたが、実際の制作クルー、代理店の方々にはすごく難しいお願いをしたと思います。


──制作会社は?


馬場●メインのエージェンシーはワイデン+ケネディさんです。でも今回は制作期間が短い中で多くの本数をつくらなくてはならなかったので、ほかのエージェンシーさんにも入っていただいてます。


──ちょうどお正月を挟んでの展開で、そこは意識しました?


馬場●特にお正月向けにつくったわけではないですが、タイミングとして「トップページに新年の抱負を」というテーマは考えました。Googleのトップページのバックグラウンドを変えられる機能ですが、背景画像に新年の抱負を入れましょうと。そこで新年用の画像も用意したんです。そのときそのとき、みなさんが関心を持っていることに合わせていくようにやりました。


──ちょうどAndroidスマートフォンの気運が高まり、音声検索やGoogle翻訳などホットな機能が時期的にもかみ合いましたね。


馬場●そうですね。やっぱり今回のキャンペーンの表現フォーマットの中では、音声検索や翻訳、マップ系の新しいプロダクトは扱いやすかった。特に音声検索はすごくインパクトがあるので、表現もしやすいし伝わりやすい。一方で毎日使っていただくということを考えると、ブラウザとしてのGoogle Chromeや画像検索は身近なプロダクトなので、そういう当たり前のプロダクトをどう面白く伝えるか苦慮しました。


──今後、独自のブランディング・プランを増やしていくのですか?


馬場●それはイエス&ノー(笑)。というのは、グローバルな会社だと本社が決めたブランド・コミュニケーションを世界中で展開するというような決まりがあったりしますよね。Googleの場合は、それぞれの国でそれぞれ最適なものを考えるという方針になっているんです。たとえば、最初のキャンペーン「Search On」を採用したときは、ぼくらもいろいろ考えていたのですが、本社のほうで考えていたコンセプトがまさに我々がやりたかったことなのでそれを採用した。今回は独自で考えて、米国でもいいアイデアがあったから一部採用した。ぼくらはぼくらですごく考えるのですが、自分たちだけではなく米国、ヨーロッパとつねに情報交換しながらいいものを考えている。ですから逆に競争ですね。日本で考えたアイデアが世界中で採用されることもあるので。そういう志は持ってやってます。そこは一般的なグローバル企業と違うところかもしれませんね。


──ブランディングの担当をされて、ふだんはどのような業務を主に?


馬場●いわゆるマーケティングというとふたつの活動があって、ひとつは新しいプロダクトが出るときにみなさんに知ってもらうような業務。それから今回のキャンペーンのようにブランディングがあるのですが、私の場合はブランドのコミュニケーション、もしくはさまざまなプロダクトやサービスを組み合わせることによって「もっと便利になる」というようなメッセージを伝えていくことをしています。基本的には次に向けてのプランをつくる、いまやっていることをエクスキューション(実行)するということになります。つねにユーザーの方がどう思っているか知ることが重要なので、そのためのいろいろな調査をしたり、マーケットの状況がどう変わっているか……いまならスマートフォンがどんどん伸びているので、その中でどういうふうにプロダクトを紹介していけばいいかという業務ですね。


馬場氏



──Androidの活況で仕事の幅が広がりました?


馬場●もともとGoogleはモバイルサービスの提供をしてましたから、われわれもキャンペーンを設計するときにPC向け、モバイル向けという形でつねに考えていたのですが、スマートフォンが伸びることによって、PCとモバイルというか、そのへんの分け方が少しずつ変わってきていると感じています。スマートフォンでできることが限りなくPCに近づいて、デバイスをメインに分ける必要があるのか……いろいろなことを変化に合わせて考えています。また、スマートフォンが伸びることによってユーザーがインターネットに接する行動や方法も変わっていくので、そこでぼくらも新しい提案をしていかなければならない。特に日本の場合、スマートフォンはいちばん進んでいると世界中から思われていて、日本で行なうモバイルの試作というのは社内でも世界中から注目されているんです。もともとぼくらモバイルを大事にしてきましたが、確かにそれがもっと強まっているのは事実です。


──今後、やってみたいキャンペーンはありますか?


馬場●いままでも一方的なコミュニケーションはしたくないと思っていて、必ずインタラクティブ性があって、ユーザーが参加できる形が理想だと考えている。「さがそう」をやったときも、検索ワードと結果を見せるだけでストーリーをつくっていくというシンプルなフォーマットだったのですが、検索ストーリーメーカーというユーザーもテレビコマーシャルと同じような動画を自動的につくれるツールを制作して、実際みなさんに参加してもらったんですね。最終的にグランプリをとった作品がオンエアされたり。だからこれからもユーザーに参加してもらったり、ソーシャルメディアも伸びてきてますので、そういったことを上手に使いながらやっていきたいですね。





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エイクエント

エイクエントは、1986年米国ボストンで設立、現在世界7カ国に拠点を持ち、マーケティング、デザイン専門の人材エージェンシーとしては世界最大級です。そのネットワークと世界各地で培われたノウハウが、多くのスペシャリストの皆様から厚い信頼と高い評価を受けています。マーケティング、デザイン分野でお仕事をお探しの皆さまはぜひご連絡をください。

URL:http://www.aquent.co.jp/

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