第2話 Webの未来を「NIKE +」には感じる | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2004年にP&Gの「アイラブ困ったさんコンテスト」、2005年にコカ・コーラ ジョージアの「Radio GEORGIA Special Dream Navigators」などにおいて、ブログやポッドキャスティングをいち早くマーケティング手法に取り入れ、Webクリエーション・アウォード「Web 人 of the year」賞受賞。2007年にはナイキジャパン「キメワザバトル」で東京インタラクティブ・アド・アワード金賞受賞といった数々の賞を受賞してきたビーコン コミュニケーションズの渡辺英輝氏。Webならではの新しいツールや技術を広告マーケティングにタイミングよく取り入れる彼のセンスは業界でも評価が高い。そんな渡辺英輝氏に現在のWebの状況、そしてWebの未来についての話を聞かせていただいた。

第2話 Webの未来を「NIKE +」には感じる


ランナーの気持ちになってアイデアを考える


——最近の渡辺さんの仕事について教えてください。

渡辺●前回も話したように、最近は僕の仕事における役割も変わってきています。昔の「アリエール アイラブ困ったさんコンテスト」や「ブカツブログ」みたいに、僕がやりましたといえる作品はあまりないのですが、12月10日にローンチした「NIKEiD」のプロモーションサイト「 If you were a boy,」に携わりました。

このプロジェクトは2007年の東京インタラクティブアドアワード でグランプリを受賞した Nike Cosplay のメンバーを基本に、新たなメンバーが加わった豪華キャストになっています。GT.INCの伊藤さんがCD、プロデューサーはビーコンの柿並と井田が担当していまして、ウェブはRoot Communicationsと.SPFDESIGNの鎌田さん、そして映像はCMディレクターの江口カンさん+TYO MEGURO-2のチームです。





——GT.INCの伊藤さんとは一緒に本を書いていましたよね。


渡辺●ええ。伊藤さんと本は一緒に書きましたが、仕事を一緒にやるのははじめてです。伊藤さんは、いま日本を代表するインタラクティブを得意とするCDで、ものすごくリスペクトしている人だったので、はじめて一緒にお仕事をさせていただけて光栄でした。彼とコラボレーションをしていく中で、クリエイティブのアイデアや企画は彼に委ねて、僕はアイデアを引き出させるようなお手伝いというか、環境作りを担当させてもらいました。


『Webキャンペーンのしかけ方。広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告”』
(インプレスジャパン)著者:渡辺英輝、阿部晶人、螺澤裕次郎、伊藤直樹



——「 If you were a boy,」では、どのようにアイデアを出していったのですか?

渡辺●コンセプトや企画をつくっていくために、伊藤さんと長時間に渡っていろいろな話をしましたね。こういう考え方ではどうかとか、こういった技術を使ってみたらどうだろうかとか、いまWebとしてどうなんだろう。もっと新しくておもしろいことができないだろうかとか。伊藤さんも僕もランナーで、カンヌの授賞式に行った時にはお互いビーチサイドや街中を走ってました。その時に感じたランナーの気持ちになっていろいろなアイデアを話し合ったりしました。

このプロジェクトでは、最初のコンセプトメイキングでは伊藤さんを中心にビーコンの井田と、僕の3人で考えました。途中から柿並がビーコンに入社したので、その時点で制作進行などは柿並に委ねて、僕は総合的なところで関わるようになりました。いまは具体的なところは伊藤さんと柿並に委ねています。ですので、このプロジェクトに関してはエージェンシー側の最終責任者として関わっています。



インターネットだから可能なプラットフォームサービス


——「NIKE +」の新しさ、素晴らしさについて教えてください。

渡辺●Webの未来として、僕が見ているもののひとつが「NIKE +」なんですね。あれのすごいところは、プロダクトとWebサービスが合体しているところです。ランナーの走った記録がアップロードされることによって世界中のランナーが繋がりあったり、ランナーとして楽しんでいる姿が、「NIKE+」のなかに入っていくのがおもしろいですよね。ユーザーとのインタラクションを、リアルなランニングデータを通じて、やりとりをしているというところがすごい。


いままでの広告展開だったら、新商品を告知するだけだったのでしょうが、「NIKE+」はユーザーのデータがアップロードされることによってサイトそのものが、企業が提供するプラットフォームサービスになっているんですね。「NIKE +」を使い続けている限り、365日かける何年間もずっと、その人の生活の一部になるわけじゃないですか。


それっていままでのキャンペーンサイトとは全然違う。通常のWebにおけるキャンペーンサイトは短いものだと1週間とか3ヶ月で短いんですね。それが何年と続くサービスのほうが価値として明らかに高いんじゃないかなって思うんですね。

日本の身近なところでは「UNIQLOCK」もその例だと思うのですが、あれもブログに貼ったり、スクリーンセーバーとして使っている限り、長期間にわたってネット上で使用されるわけで、しかも中身も変わっていく。あれも時計というサービスをユニクロが提供しているわけで、けっして一回きりでは終わらない。

電車の乗り換え情報のように消費者の生活の一部になれるようなウェブサービスは、企業広告ではほとんどなくて。「NIKE +」や「UNIQLOCK」のようなものが企業のサービスのひとつとして成立することがすごいと思うんですね。TVCMとはまた違う効果だったり、違う価値がそこにあるわけで。従来型の広告とは、また別の次元の話になってきていると思いますね。

スポーツブランドのナイキが、ここまでランナーの生活に入り込むものをつくってしまったのは素晴らしいですよね。ランナーにむけてトレーニングメニューを用意したり、アドバイスをしたり、イベントを開催したり、それをすべてオンラインで吸い上げている。

それっていままでできなかったサービスなんですよね。参加しているランナーにとって「NIKE+」はもはや生活に欠かせないサービスになってくるわけで。こんなに喜ばれるサービスもインターネットだからこそだと思いますね。


——ビーコン コミュニケーションズらしい作風というのはありますか?

渡辺●あくまでも広告代理店ですから、作風というのはクライアントが求めることによって違ってきていますね。

広告って人の心をなんらかの形で動かすのが目的だと思うんですね。ああ、これいいなって思ったり、クスッと笑ったり、最終的には買いたいなと思ったり。コミュニケーションを通じて消費者の感情がちょっとでも動くようなプロジェクトをできるだけやりたいですし、得意としていきたいです。

あと、僕らはWeb制作会社ではないので、Webの枠だけに自分たちを当てはめるということはしないようにしています。僕らはインターネットにおけるスペシャリストではあるんだけど、他のメディアのことも考えないといけないと思っています。

インターネットという枠にとどまらず、もっと大きな企画を考えてもいいと思うし、むしろ考えた方がいいと思っていますね。実際にはなかなかそうはいかないのですが、そういったことを日々考えているということが重要じゃないかなって思います。クライアントからも、Webだけではなく、商品を手に取ってさわれる場所やショップへ誘導したいという要望も増えてきていますし。




(取材/蜂賀亨 撮影/谷本夏 )



[プロフィール]
ビーコン コミュニケーションズ
デジタル部 部長 渡辺英輝

1996年米国インディアナ大学、経営学部卒業。
株式会社野村総合研究所を経て、2000年ビーコン コミュニケーションズ入社。
2005年Webクリエーション・アワード「Web人 of the year」賞、東京インタラクティブ・アド・アワード金賞、カンヌ国際広告祭、New York Festival ほか受賞多数。
著書に「Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる"つぎのネット広告"」(インプレスジャパン)がある

http://www.29man.net/

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