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ソーシャルメディア 2-01
ソーシャルメディアサービスの始まりから現在にいたる歴史(中編)
TwitterやFacebookの登場により、近年急速に広がりつつあるソーシャルメディア。ここでは、その始まりから現在にいたるまでの流れについて解説する。また、今後の流れについて具体的な事例を紹介しながら検討していく。
制作・文/小川浩(株式会社モディファイ)
最近の企業におけるソーシャルサービス利用の傾向
2009年頃からTwitterを中心に熱を帯びてきたソーシャルメディアマーケティング。だがTwitterは人間関係が非対称であることと、アカウント自体に匿名性が強いために、炎上しやすいというリスクがあった。しかも、Twitter上での炎上は、Blogのコメント欄のそれとは違って、発生し難いがいったん起きると、まるで高層ビルの中にいる時の火災のようにどこで燃えているかが把握し難い。火や煙が見えているところが火災の発生源とは限らないように、いくらTwitter上で炎上を抑えようとしても、次から次へと前後のやり取りを知らないツイートが生まれ、そしてストリーム上をのたうつように流れていってしまう。これらを探し出し、ひとつずつ消火していくのは非常に困難だ。Blogの炎上とは全く異なる、次元の違うデータの動きをしているのだ。
そこで、最近はFacebookページを軸にTwitterを補完ツール(というより、インタラクティブ性の強いRSSフィードのような役目)として使うやり方が、最も効率的な手法であるという認識が強まってきたように思う。
さらに、このトレンドに加えて、テレビCMなどのマスメディアを利用できる大企業のソーシャルメディアマーケティング参加の事例が、豊富にみられるようになってきているのも最近の潮流と言えるだろう。しかも、マスメディアマーケティングとソーシャルメディアマーケティングを個別に行うのではなく、それぞれの役割を理解したうえで連携させることをようやく覚えてきている【01】。
どういう意味かというと、ソーシャルメディアは消費者との直接対話に適したメディアだが、一気に消費者の耳目を集めるという力には欠けるので、マスメディアによって補完してやらねばならないということだ。これを我々はアテンション獲得力の欠如、と呼ぶ。
時間や場所に縛られないソーシャルメディアの中では、テレビCMなどのマス広告を多用したマーケティングと異なり、決められた時間に想定するターゲットに向けて集中的に情報を発信することができない。広く一斉に認知させることが苦手なのだ。
結果として人間の注意を一気に引く力が弱くなる。そのため、新規事業や商品の市場投入によって、短期間にシェアの獲得を得ようと思えば、必ず従来型のマスメディアとの組み合わせが必要となる。テレビCMや全国紙での紙上広告(つまりマス広告)に予算を割ける大企業ならば、マス広告によって消費者からのアテンションを集め、そして今度はそのアテンションをオフラインからオンラインに載せて、ソーシャルメディア上に設置した自分たちのアカウントのフォローやファン化(いいね!)に変換させることを考えるべきだ。筆者はこれを著書にて「直接対決戦」という戦略として紹介している。
【01】現在では、ソーシャルメディアを様々なサイトや他メディアと連携させたプロモーションが、当たり前となりつつある。
企業の古典的な戦略
ソーシャルメディアマーケティングを行う目標は次の二つである。(1)ソーシャルメディアへ情報を効率的に流通させること=クチコミを生むこと(WOMマーケティング)
(2)ソーシャルメディアから自社サイトへ (あるいは店舗)の誘導を最大限に引き出 すこと。
従来のソーシャルメディアマーケティング事業を行う企業の場合、一般的に次に挙げるような提案をすることが多い。
ペイパーポストによる広告
ペイパーポストはソーシャルメディアに対してクチコミに乗せてもらうために、有名ブロガーや芸能人など、もしくは恣意的に集めた主婦などの特定層のブロガーに対してお金を支払って、商品に対するレビューを書いてもらう方法である。(ちなみに人気のある芸能人ブログなどに掲載してもらう場合、一回あたり200〜300万円とも言われている)ペイパーポストは、記事広告と同じだが、雑誌やテレビCMと違い、そもそもパーソナルなメディアであるソーシャルメディアに載せている時点で、それが広告なのか、それともユーザー自身の意見なのかの区別を見せづらく「やらせ」との線引きが難しいというリスクを持つ。
だがペイパーポストはそれを広告と明記して用いれば当然合法的な手法であり、瞬発的な効果を持っていることは間違いない。とは言うものの、本質的にはソーシャルメディアマーケティングと呼ぶよりも、古典的なメディア広告の一種と言える。
クチコミ検索
また、クチコミを検索エンジンを使って集積し、どんなユーザーがどのようなことを会話しているかを調べて分析するという手法は、ソーシャルメディアを使ったクチコミ調査であり、有効ではあっても受動的な施策であるとも言える。クチコミ検索広告としての効果を求めるのなら、市場調査を生かすための攻撃的な施策との組み合わせでなければ意味はない。実際、この手法は通常SEO/SEMとの連携を前提として採用される。
実は現在、こうしたクチコミ調査は、Twitter登場以降、やや時代遅れになりつつある。なぜならソーシャルストリームにおいては情報の鮮度は一瞬で古びていくからだ。いまやリアルタイム検索の時代であり、第三者に依頼して分析結果を待つのではなく、いままさに何が起きているかを自ら調べることが可能になってきている。
(後編に続く)
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【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。
※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。