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ソーシャルメディアサービスの始まりから現在にいたる歴史(後編) - Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策

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Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策

ソーシャルメディア 2-01
ソーシャルメディアサービスの始まりから現在にいたる歴史(後編)

TwitterやFacebookの登場により、近年急速に広がりつつあるソーシャルメディア。ここでは、その始まりから現在にいたるまでの流れについて解説する。また、今後の流れについて具体的な事例を紹介しながら検討していく。

制作・文/小川浩(株式会社モディファイ)



企業による情報発信の成功事例

ソーシャルストリームによってリアルタイム化しつつある新しいソーシャルメディアを活用するには、人任せにするのではなく、やはり企業が自分自身でアカウントを作り、自ら情報発信をすることが一番だ。

また、仮にソーシャルメディア自体の運用は無料でも担当スタッフを置くなど、きちんと手間とコストをかけるべきである。ブログやFacebookと、Twitterとでは役割が違うし(ブログやSNSはまとまった情報の整理と公開に向いているが、Twitterは経過報告やユーザーとの対話に向いている)、マス広告との連動の有無によってソーシャルメディア自体の活用方法は大きく変わる。コンタクトポイントがそれぞれの仕組みによって違うのだ。これらを考慮することなしにソーシャルメディアマーケティングの採用に踏み切ることは危険である。

最近の事例で、もっとも洗練された手法を見せているのは、2011年10月に有楽町駅前の再開発としてオープンした有楽町ルミネだ。

彼らのマーケティング戦略は、ソーシャルメディアマーケティングにおける「直接対決戦」のセオリー通りと言える。まず、特設Webサイト【01】を設置し、otona(大人)とは、というメッセージを中心に自分たちのブランディングを行う。つまりここは、大人の女性のための空間ですよ、と明確に位置づけたのだ。

マーケティングは、人間の心の中にある種のブランドイメージを植え付け定着させることを一義に考えるべきもので、このブランドイメージに即したメッセージをシンプルに伝える努力こそが重要だ。さらに、Facebookページ【02】とTwitterアカウント(@lumineyurakucho)を設置する。そのうえで、テレビCMを中心にヘビーローテーションでマスメディア展開を行い、消費者のアテンションを引きつける。

さらにそのアテンションをFacebookの「いいね!」ボタン(と小さくURL)を見せるだけのクリエイティブで、ソーシャルメディアのトラフィックへと変換させることを狙ったのだ【03】。

テレビCMのクリエイティブは全部で5種類だが、すべてこのFacebookページへの導線だけで終わっている。これまでのテレビCMは、Googleを思わせる検索イメージによる、SEO/SEM(検索エンジン最適化&検索エンジンマーケティング)によるテレビからネットへの、アテンションのトラフィック変換をはかるものだったが、このルミネの戦略は、SMO/SMM(ソーシャルメディア最適化&ソーシャルメディアマーケティング)にフォーカスしている。

あとは、順当に集めたFacebookページのファンによるトラフィックをさらにWeb全体に拡散し、そのトラフィックを今度はオフラインのトラフィックに変換させる、つまり実際に店舗に足を運ばせる、顧客として定着させる、という戦略が必要になる。このようなオンラインのトラフィックから、オフラインのトラフィック、すなわち実店舗への誘導につなげることはO2O(Online to Offline)と呼ばれ、今後のマーケティングにおける最大関心事になっている。

オンラインクーポンを発行しているGrouponが実際に客として足を運べる範囲に限定してクーポンを発行し、ユーザーを実店舗に誘導するというビジネスを成功させたことによって、このO2Oはネットマーケティング専門家の注目を浴びるようになった。

もちろん、現時点において大きなにぎわいをみせていたとしても、数ヶ月、数年後につながる本物のトラフィックであるかどうかはまだ分からないが、現在のところ正しいスタートを果たしたと言えるだろう。

有楽町ルミネ以外では、ユナイテッドアローズ グリーンレーベルリラクシング(以下UAGLR)のソーシャルメディアマーケティングも、非常によい事例になる。UAGLRの場合、有楽町ルミネ同様、テレビCMを展開できるだけの資力があり、人気女優を起用した広告を実施している。UAGLRでは有楽町ルミネと違って、テレビCMからダイレクトにFacebookページにトラフィックをつなぐ手法はとっていない。ただ、その分店舗とネットの接触をうまく試みている。

UAGLRでは、45を超える全国の店舗とにBlogを設置し、そのBlogをすべて統合した特設サイトを構築している【04】【05】。

さらに個々のBlogごとにTwitterアカウントが取得され、Blogの更新時にTwitter【06】への自動投稿がなされるようになっている。同時に、特設サイトと密接に連動するFacebookページが開設され【07】、クリエイティブも統一されているのだ。

実は店舗のスタッフが投稿すると、UAGLRの本社のマーケティングスタッフに自動的に連絡が入り、内容をチェックして承認するとサイトに反映させるというオンラインワークフローも採用されており、店舗が自分たちで投稿する自由がありながら、ブランディング上必要な本社チェックも効率的にできるという仕組みになっている。すべての店舗はBlogだけでなく、Googleマップを利用した地図や、店舗を指定した採用申請フォームなどが用意され、店舗専用のWebサイトとして活用できるようにもなっている。

こうした技術を応用しつつ、Facebookページ上でFacebookクーポンをうまく活用したプロモーションをして店舗誘導したり、次にセールの対象にしてほしい商品をユーザーに決めてもらうようなキャンペーンを展開している。

【01】有楽町ルミネの「Otona?」サイト。(2011年12月1日を持って公開終了)
【01】有楽町ルミネの「Otona?」サイト。(2011年12月1日を持って公開終了)

【02】有楽町ルミネのFacebookページ。
【02】有楽町ルミネのFacebookページ。

【03】「いいね」ボタンとFacebookのURLのみを告知。
【03】「いいね」ボタンとFacebookのURLのみを告知。

【04】UAGLRのホームページ。(http://www.green-label-relaxing.jp/html/)。なお上記は2011年11月時点のもの。
【04】UAGLRのホームページ。(http://www.green-label-relaxing.jp/html/)。なお上記は2011年11月時点のもの。

【05】UAGLRのホームページ。(http://www.green-label-relaxing.jp/html/)。なお上記は2011年11月時点のもの。
【05】UAGLRのホームページ。(http://www.green-label-relaxing.jp/html/)。なお上記は2011年11月時点のもの。

【06】Blogと連携したUAGLRのTwitter。
【06】Blogと連携したUAGLRのTwitter。

【07】UAGLRのFacebookページ。
【07】UAGLRのFacebookページ。


炎上リスクによりネグレクト(無関心)リスクを回避

前述のとおり、昨今では多くの大企業がソーシャルメディアマーケティングの採用に踏切り、さらにマスメディアとの連携による効力の最大化を考えるようになってきている。さらに、ソーシャルメディアの主役もTwitterからFacebookに移りつつあり、その結果として炎上リスクはかなり薄くなってきている。

Twitterと違い、Facebookではユーザーが実名で参加しており、不用意に悪口雑言を行えば、自らの評判を落とすレピュテーションリスクをはらんでいる。そのため、ユーザーが過激な発言を控える傾向にあり、企業にとってはTwitterよりもFacebookページを中心に戦略を講じるほうが都合がよいということになってきたのだ。

逆に言えば、ユーザーは誹謗中傷をしない代わりに興味のないFacebookページには見向きもしない。数十万もの「いいね!」を集めるページがいると思えば、最低数の「いいね!」も押してもらえないページも多い(これまでは25人から「いいね!」を押してもらわなければ、独自URLを獲得できなかったが、2011年12月現在は登録時にURLを登録できるように仕様が変更されている)。つまり、ユーザーからの憎悪を集めることによる炎上すらできず、冷たい無視によって存在を認めてもらえなくなるということだ。プロモーションにとって、注目されずに存在すら気付かれないことは、ある意味で炎上する以上に致命的とも言える。

このような結果を避けるためには、中途半端な参加ではなく、綿密な戦略立案と定期的な情報公開、そしてその内容の精査を繰り返し行っていく必要がある。Twitterでは、あえて過激な言動をすることで注目を集める、ある種の炎上マーケティングのようなやり方をすることもあった。が、Facebookページを中心としたマーケティングの場合、この方法は逆効果と言える。

2008年の米国 オバマ大統領の選挙戦はソーシャルメディアマーケティングの奇跡的な成功例だった。なにしろ、2年間で集めた献金額7.5億ドルのうち、実に5億ドルがネット経由だったのだ。同時期のライバルであるマケイン候補がネット経由で勝ち得た献金額が10分の1の5000万ドルだったことを考え合わせればその凄さが理解できるだろう。

しかし、見落としてはならないことは、オバマ陣営が凄まじい金額をオンライン広告に投じていることだ【8】。

2008年のオバマ陣営のオンライン広告予算は実に1600万ドルだった。出稿先はGoogleが750万ドル、Yahooが150万ドル。Facebookでは64万ドルの広告枠を買っている。さらに独自サイトをつくるにも、運営チームを維持するにも大きなコストがかかっている。

ちなみに、Facebookに支払った64万ドルは、Facebook内でのバナー広告がほとんどだったらしい。Facebookの広告はいわゆるターゲティング広告であり、Facebookが持つソーシャルグラフをうまく使って、男女や年齢層、住んでいる場所や学歴など、かなり細かいターゲットの絞り込みをしたうえで広告を出せるのが強みだ。絞り込んだターゲットのおおよそのリーチ可能人数も把握できるし、自分のFacebookページのファンではない人の中から狙いうちすることができるのもよい。予算を割り当てて、Facebookページのファン数を増やすためにある程度のコストをかけることは割にあうはずだ。

とにかく、恐れるべきは炎上ではなく無関心である。そのことを忘れてはならない。

【08】UAGLRのFacebookページ。
【08】Facebookにおけるオバマ大統領の2012年キャンペーンページ。


米国ソーシャルメディアマーケティング

現在、ソーシャルメディアマーケティングの市場規模は、米国ではおよそ1000億円規模に成長していると思われる。


米国の主要プレイヤーとはいっても、そのほとんどは、この数年以内に創業した新興ベンチャーだ。しかし、彼らは非常に多額の資金を集めており、この分野の事業構築に腰を据えて取り組んでいる。彼らの調達額は

・Buddy Media $38M(≒30億円)

・Vitrue $33M (≒26億円)

・Involver $11M(≒8.8億円)

・Wildfire $4.1M(≒3.3億円)

といったように非常に巨額だ。社員数は平均して100 〜200人、売上規模で言うと(未上場企業なので推定だが)だいたい数億円から数十億円程度のようである。

市場規模が急拡大していることや資金が潤沢なこともあり、数年以内に数倍の規模にふくれあがってくることは間違いないだろう。また、彼らは徐々に日本市場に侵攻しつつあり、電通やDACといった伝統型の総合代理店との提携を加速させている。


より大きな成功事例はいつ生まれるのか

彼らはFacebookページの開設代行を行うと同時に、ページを簡単にカスタマイズできるソーシャルアプリを数多く用意している。そのうえでFacebookページやTwitterへの投稿管理ツールを用意し、ファンを増やす(Acquire)と同時に、いいね!やコメント、シェアの数をポジティブに増やしていく(Engage)、ネガティブなコメントが入ってこないように、巧みにコミュニケートしていくこと(Moderation)も同時に行う。こうした作業を経て、顧客企業の目的に即しているのである。


日本では、アメリカのようにFacebookばかりを見ていればよいというわけにはいかない。また、オバマ陣営の事例のような成功体験が国内にまだないために、勢いに弾みがつかない状況だ。

やはり顧客企業の気分をポジティブにするには、素晴らしい成功が必要であり、ソーシャルメディアマーケティングを本格的に日本国内に根付かせるために求められているのはそういう、誰にでもわかりやすい、大きな成功事例をまず用意することだ。前述の有楽町ルミネやUAGLRのような事例を超える、大きな売上とつながった成功を用意することが業界全体の活性化につながるだろう。


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【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。

※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。

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