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Flashの現状とこれからの展望(後編)- Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策

2024.4.20 SAT

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Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策

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Flashの現状とこれからの展望(後編)

HTML5の台頭によりFlashへの風当たりの強さが目立っているが、本当にFlashはWebにとって必要のなくなった技術なのだろうか? FlashとHTML、それぞれのメリット・デメリットを改めて見つめなおしてみよう。

制作・文/ハヤシユタカ(有限会社ムーニーワークス)、岩澤学(リトルフロア)



HTML5+JavaScriptの持つ優位性とは(2)

コスト面

Flash に比べてHTML は安いというイメージが一般的に存在する。一昔前の「Flash=動く」と「HTML=制止」の構図であれば間違いないが、現在のHTMLに求められることの多様性から、単にHTMLだからコストが安くなるという状況ではなくなった。

Webコンテンツ制作の最大のネックは、やはり閲覧環境ごとの動作の違いにつきる。HTMLでは閲覧環境ごとの違いや対応がFlashに比べて圧倒的に多くなることから、どこまで細かく作り込むか、いろいろな閲覧環境に対応してどこまでユーザーに配慮した気配りができるか、などクオリティを追求する度合いにより状況は変わってくるだろう。

現在氾濫しつつある、ただ動けばいいといったような質の低いサイトを提供してもHTMLであれば許されるという状況であれば、コストや工数の面で、Flashに比べてメリットは大きいだろう。

だが、質の高いサイトを提供するという当たり前のことを前提にすると、絶対的に閲覧できないiOSという環境は存在するが、少ない工数で古いブラウザでも動作し、より多くのユーザーに同様の体験を提供できるメリットは大きい。クオリティとスピードの両立を図れるFlashがHTMLよりも優位に立つ場面も多くあるだろう。

Flashが衰退していく中でも、勢いを増しているアメーバピグ【01】などのフルフラッシュのサービスがある。HTML5+JavaScriptでも、作ろうと思えば不可能ではないだろうが、ブラウザごとの検証や調整に掛かる工数などを考えると、開発スピードやコストの面からもFlashの方がやはり優位であり、選択した理由が推測できる。

最近は、Flashサイトを見て感銘を受ける機会が減ったが、KIBO ROBOT PROJECT【02】【03】は、細部までの作り込みやコンテンツ遷移時の驚き、コンテンツ内容と表現のマッチなど、オーソドックスでありながらFlashの魅力を改めて感じさせるフルフラッシュサイトである。

HTMLでこのサイトを作ろうとしたときに、同じ時間と工数でこのクオリティを再現できるだろうか? またそのサイトは、古いブラウザやiOSでも同様の体験を得られるのだろうか?

動作が不安定で、ブラウザを限定すればHTMLで作ることができるかもしれない。だが特定のブラウザで見られないのであれば、FlashではなくHTMLで作る利点は大きくはないだろう。

【01】Flashが衰退していく中でも会員数や売り上げを伸ばし続けている株式会社サイバーエージェントのアメーバピグ(http://pigg.ameba.jp/)
【01】Flashが衰退していく中でも会員数や売り上げを伸ばし続けている株式会社サイバーエージェントのアメーバピグ(http://pigg.ameba.jp/

【02】コンテンツ内容と表現がマッチしたクオリティの高いFlashサイト・KIBO ROBOT PROJECT(http://kibo-robo.jp/)
【02】コンテンツ内容と表現がマッチしたクオリティの高いFlashサイト・KIBO ROBOT PROJECT(http://kibo-robo.jp/

【03】ページ移動の表現が心地よく、特にJOIN USのページ移動への繋がりはすばらしくFlashの魅力を感じられる。
【03】ページ移動の表現が心地よく、特にJOIN USのページ移動への繋がりはすばらしくFlashの魅力を感じられる。


FlashとHTMLは共存すべき

以上から、iOS以外で閲覧することが前提ではあるが、1ソースで多くの環境に対して同様の体験を提供できることから、リッチな演出やエンターテインメント性を求められるコンテンツにおけるFlashの優位性はゆるぎないだろう。

また、開発スピードが短縮でき、HTMLでは難しいFlashならではの細かい作り込みが行える。先に述べたFlashのデメリットをしっかりと潰すことができれば、Flashの魅力が再認識され、Flashを今後も選択する理由が確立されるだろう。

言い換えるなら、HTMLがFlashと同じコストとスピードで開発が行え、現在の主要ブラウザに対して同様のクオリティを出せるのであれば、Flashを選択する理由はなくなりFlashの時代は間違いなく終わるだろう。

HTMLを使うべきシチュエーションが増えたことは間違いなく、HTML5はすばらしい技術あることは確かだ。ただ、まだまだ成長過程にあるものなので、特定の状況や環境下では、まだFlashを凌駕する存在になっていない。現時点では、Flashを選ぶべきシチュエーションは確実にあるので、しっかりと制作者側が目的に応じて、両者のメリットを比較し判断する必要がある。


Flashは終わるべきなのか

つい1 ~2年前のFlash全盛の時代には、お祭り的なフルフラッシュのキャンペーンサイトが乱立されていた。それらはクオリティが高く同業者から評価される一方で、制作者の技術力や表現力、アイデアをただ競い合っているだけで、クライアントやターゲットユーザーにとって利益になっているのか、疑問を感じていた方も多かっただろう。ある意味、Flashサイトが減少したこの状況は、なるべくしてなったとも言えるのだ。

今後、HTMLをベースに考えるという状況は間違いない。ただし、熟考せずにHTMLを選択し、時代に流されてしまうのも間違いである。

一昔前には、なぜFlashで作っているのかわからないサイトが多く存在したが、現在は逆にFlashで作った方がいいのに、閲覧環境を限定してまでHTMLで作成する理由がみえないサイトが現れてきている。

本当に終わるべきなのはFlashの技術ではなく、話題性を優先して制作者が技術力やアイデアを誇り合うような意図や目的がわかりづらいサイトを作ってしまう姿勢だ。HTMLで作ってるから凄い、と言ったようなサイトが作られる状況が続く限りHTMLでも同じ問題が生まれるだろう。


FlashとHTML選ぶ基準

今は、 HTMLとFlashどちらかを選択するだけではすべてのユーザーにリーチできる時代ではない。より多くのユーザーに、よりよい体験を提供するためには、サイトの内容や目的、閲覧されるシチュエーションやターゲットを想定して、最適な技術を選択し、それぞれのデバイスに最適化したコンテンツを用意する時代といえるだろう【04】。

HTMLとFlashは敵対する関係ではなく、共存しお互いのメリットを生かし、デメリットをつぶし合うことができる。サイトの内容に応じて、よりリーチしたいターゲットの環境に合わせてフラットに使い分けたり共存させることで、ユーザーにもクライアントにも制作者にとってもベストな体験を提供できるのだ【05】。

【04】Flash の閲覧できない 環境、HTML5の動作しない環境はそれぞれライブラリ類の導入なども考慮したもの。また、将来のAndroid端末については、公式のFlash Playerはリリースされない旨がアナウンスされている。
【04】Flashの閲覧できない環境、HTML5の動作しない環境はそれぞれライブラリ類の導入なども考慮したもの。また、将来のAndroid端末については、公式のFlash Playerはリリースされない旨がアナウンスされている。



【05】FlashもHTML5もお互いを完全に凌駕することはできない。両方の技術を共存して使用することで、お互いのメリットを生かし、デメリットをつぶし合うことができる。
【05】FlashもHTML5もお互いを完全に凌駕することはできない。両方の技術を共存して使用することで、お互いのメリットを生かし、デメリットをつぶし合うことができる。


今後/新たな可能性

最後に今後のFlashの可能性について言及すると、Flashに対しての風当たりはやはり強く、Flashを単にswfにパブリッシュしてブラウザプラグインで動作させればよいという状況は確実になくなるだろう。

Flashの開発はHTML5やAIRに対しても向けられている。スマートフォンに対してはアプリ形式でコンテンツを提供し、Flashを閲覧できないブラウザ環境ではHTML5で書き出すなど、それぞれの環境に合わせた提供方法で出力する方向に向かいはじめた。

Flashの最大の魅力は、直感的にアニメーションを作れるインターフェイスであり、そこにプラスされた高度なScript言語であり、少ない開発時間やコストで多くのデバイスにコンテンツを提供できる1ソースマルチデバイスにある。これらを実現できるツールは現状Flash以外にないため、Flashの優位性や可能性はまだまだ大きい。質の高いコンテンツをより多くの環境に対して短時間で作ることができるFlashが見なおされる時期が、じきに訪れるかもしれない【06】。

【06】直感的にアニメーションを作れて、プログラムも組める。1ソースマルチデバイスに対応した唯一のツールとしてFlashの本当の価値や魅力が伝わるのはこれからなのかもしれない。
【06】直感的にアニメーションを作れて、プログラムも組める。1ソースマルチデバイスに対応した唯一のツールとしてFlashの本当の価値や魅力が伝わるのはこれからなのかもしれない。


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【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。

※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。

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