第1回 片付けの基本は「隠す」こと? | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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新しい年を迎え、みなさん身ぎれいな環境で過ごしてますか? 年末、せっかく大掃除をしたのに、早くも散乱した雑誌、いつの間にか湧き出るホコリ……日々の生活や仕事が生み出す有象無象の蓄積物にお悩みでは?
今回の「ザ・対談」では、現代美術家の松蔭浩之さん、漫画家/コラムニストの辛酸なめ子さん、二人の“ソウルメイト”に登場いただき、整理整頓の奥義から「生活をデザインする」ことの肝要まで、身を持ったエピソード満載に語り合ってもらいました。


第1話 片付けの基本は「隠す」こと?



松蔭浩之さん(左)と、辛酸なめ子さん(右)


都内某所にて、松蔭浩之さん(左)と辛酸なめ子さん(右)

落ち着いて飲んでるだけ……



──最初に、お二人の近況を振り返りたいと思います。まず松蔭さんは昨年、ミヅマアートギャラリーで、津村耕佑さんと「妄想オーダーモード」展を開催されました。

松蔭●去年はあれが大きかったですね。ここ3年間、雑誌連載で撮りためてきたものを、ああいう形で発表できたのはよかった。

辛酸●共通の知り合いで、懐かしい人がたくさん登場してて。松蔭さん、ほんと女性の美しさを出す才能がおありですよね。

松蔭●ありがとうございます。あと、あの連載をまとめた『FANTASY MODE』は、僕にとって初の作品集だったんですよ。

辛酸●初ですか? 意外ですね。

松蔭●ええ、日本では。海外の出版社からは僕の作品集というか、松蔭論みたいな文字ばかりの本が出てますが。英語だから、ちゃんと読んでない(笑)。

辛酸●ああ、それは拝見してなくて。

松蔭●面白いよ。外人は俺のことを「なんか、けったいな奴だ」と思っているみたいで。

辛酸●私は、松蔭さんの女装姿の笑顔が好きなんですよ。

松蔭●セルフポートレートは身内……小沢剛くんとかソウルメイトな方には絶賛されているけど、売れないんですよ。

辛酸●そうなんですか?

松蔭●まったく評価されない。だから、今度はあれを海外に出したくて。ま、いかんせんミヅマも僕のセルフポートレートは売る自信がないみたいで(笑)。

辛酸●あと「STAR」展も大好きです。

松蔭●あれはいまだに世界中を巡ってて。いま台湾の美術館で展示してます。一昨年はシンガポールのビエンナーレに選ばれて。

辛酸●ご活躍のようで。

松蔭●いやいや、結構地味にやってますよ。

──落ち着いて制作できる環境で?

松蔭●いや、落ち着いて飲んでるだけ(笑)。だから、かつてライバルと言われた会田誠くんとか、多くの後輩たちも、やっぱりブレークしたのは時間を惜しんで制作に費やしているわけですよ。

辛酸●友達もあまり作らず。

松蔭●そうそう。でも僕は、人間関係をデザインするじゃないけど、もう有象無象に広がってしまって……。去年、一番大変だったのはお芝居だったんです。アングラ演劇なんだけど、2ヶ月訓練させられた。

辛酸●それでまた、人間関係のしがらみが?

松蔭●そうそう。

辛酸●で、飲みに呼び出されたり。

松蔭●うん。だから、断り方とかも身に付いて……と言いたいけど無理だったり(笑)。


松蔭浩之さん
FANTASY MODE

落ち着いて遊んでるだけ……と「昭和40年会」会長らしい風格を漂わす松蔭浩之さん。
右は昨年上梓した、ファッションデザイナー・津村耕佑さんとの共著『FANTASY MODE』のカバー。
バイリンガル・マガジン『ART iT』にて、2005年4月から連載開始の『津村耕佑の妄想オーダーメード』を一冊にまとめ、
未収録写真/新規テキストを収録。山口さよこ、鶴田真由などなど、輝かしい女性を被写体に“妄想を着せた”珠玉の作品集。
発行:グラフィック社(2625円)

チリやホコリは写真に写らない



松蔭●辛酸さんは最近、どうなの?

辛酸●去年は共著で『皇室へのソボクなギモン』という本を出しました。竹田恒泰さんという明治天皇の玄孫さんと対談して、天皇家の秘密をいろいろと聞いて。

松蔭●すごい! そこまで行ったか。セレブになったねぇ。この対談の依頼がきたとき、僕なんかと釣り合いがとれるのかと心配しちゃって。

辛酸●心にもないことを(笑)。

松蔭●いやいや、ずいぶん遠くに行かれてしまって。あなたがアンダーグラウンドな活動をしている頃から写真を撮ってますけど、こうやって話すのも久しぶりじゃない?

辛酸●ええ。

松蔭●最近は本当、テレビで見るだけの人になっちゃって。

辛酸●そんなことは……でも松蔭さん、夕方の半端な時間にテレビをご覧になってるんですか?

松蔭●うん(笑)。

──辛酸さんはもう一冊『片付けられない女は卒業します』という本も刊行されて。

松蔭●あ、僕は今日、その話をしようと思ったんです。失礼ながらまだ読んでないんだけど、片付けるということとデザインって関係あるでしょ?

辛酸●時勢的には、佐藤可士和さんの本が売れてますよね。

松蔭●でも片付けって、基本は隠すことでしょ?

辛酸●ボックスに詰めたり、それを整理しているんですよね。

松蔭●ゴダールの『中国女』みたいなもんじゃないの? 本の背を全部赤く塗ればインテリアになるという。

辛酸●ああ、なるほど。

松蔭●すごく時代を超越して要約しましたが(笑)。たとえば無印良品とかでインテリアを揃えるというのも、そういうことじゃないのかな。中身は腐ったミカンが入ってても、プレーンな段ボールとウッディな感じの収納の中で暮らしていれば、整理整頓されているように見える……と。

辛酸●チリやホコリは写真には写らないし。臭いモノにフタみたいなものですね。

松蔭●うん。だから、デザイナーズ・マンションみたいなところに住んで、悠々自適に暮らしている女性とかを見ると、逆に警戒しますね。腐ったものが冷蔵庫の奥にあるんじゃないかって(笑)。

辛酸●そういう女性はデトックスを大切に考えているので、腸内洗浄をするぐらいキレイにしてるんじゃないですか? 腐ったゴミとか、なさそうに思うけれど。

松蔭●ああ、なるほど。ナマモノを持ち込まないのか。ウチに。

──でも、ホコリは毎日、湧き出るじゃないですか。

松蔭●そうだね。出る出る。

辛酸●フローリングの色が薄いと、ホコリが目立たないんですよ。

松蔭●ああ。よくできてるよね(笑)。


辛酸なめ子さん
片付けられない女は卒業します

立ち居振る舞いに“セレブ”感を漂わす、メディア・アクティビストの辛酸なめ子さん。
右は昨年上梓した『片付けられない女は卒業します』のカバー。
旧住居での暗澹ぶり、新築マンション購入、新居での生活……と“住まい美人”への変身を綴ったドキュメンタリーだ。
今回の対談のサブ・テキストとして、購読をおすすめいたします。
発行:メディアファクトリー(1200円)

次週、第2話は「整理ができる人と整頓ができる人」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)



松蔭浩之さん

[プロフィール]
まつかげ・ひろゆき●1965年福岡県生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、88年よりアートユニット「コンプレッソ・プラスティコ」として活動。92年、初の個展「スーパーエロス・ハイパーヴィーナス」を開催。以降、現代美術家として様々なアート・アプローチを行うとともに、写真、グラフィックデザイン、インテリアデザインなど、多彩な分野で活動中。


辛酸なめ子さん

しんさん・なめこ●1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン専攻卒業。コラムニスト、漫画家、イラストレーターなど、幅広く活動中。池松江美名義でアート制作、小説も発表。94年、フリーペーパー『GOMES』の漫画グランプリでGOMES賞を受賞。2000年、作品集『ニガヨモギ』を上梓後、著書多数。http://blog.smatch.jp/sinsan/



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