第2話 新しいサービスを生み出し続ける | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
タイトル画像

2鎌倉にオフィスを構える面白法人カヤックは、絵画の測り売りオンラインショップ「ART-Meter」(リアルショップも併設)。ブレインストーミング支援ツール「babooo」や名前から人間関係などを探る「WEB素行調査」、このほかにもブログパーツ、ブリッジメディアなど、さまざまなサービスをリリースし、いま注目を集めている組織である。今回は代表取締役である柳澤大輔氏に、カヤックという組織について、柳澤氏が考えるWebの未来について話を伺った。

第2話 新しいサービスを生み出し続ける


コミュニケーションをとった人が勝ち



——会社組織や提供するサービスに、カヤックならではの特徴というのはありますか?

柳澤●ひとことでは説明が難しいですが、設立者3人が全員プログラマー出身なので、うちが作るものには、どれも必ず技術的に新しい要素が伴っているのが特徴かもしれないですね。あと、組織としては社内的なイベントも多いですね。年に2回「ぜんいん社長合宿」と呼ぶ合宿をしています。その際には、メンバーをシャッフルしてチームで何かを作って競わせたりもします。その過程でいろいろな考えを学ぶことができると思うんですね。

外から見ると一見おもしろい、楽しいサークルみたいに見えるかもしれないですが、実際にはプロフェッショナルとしての厳しさはあって、その意識は全員が持っていると思います。社内的なルールもいくつかあって、コミュニケーションをとった人が勝ち、コミュニケーションをとらない人が悪いということもありますね。人それぞれで価値観は違いますが、基本としてはいいものを作って、外に出すということが仕事なので、他人に何かを伝えるということができないといけないと思っています。

——コミュニケーションというと、ブレスト支援ツール「babooo」はまさにコミュニケーションサービスとして有効なサービスですよね。


カヤックの社内風景。センターの畳スペースではスタッフが打ち合わせ中


柳澤●うちは、「チームで何をするのか?」「誰とやるのか?」といったチーム性を重視しているので、ブレストはとても重要だと考えています。自分ひとりで考えるよりも誰かとコラボレーションしたほうがおもしろいモノが作れるだろうし、自分の能力が引き出されますよね。同じ業種の制作会社が組むとスキルが同じかどうかと考えるかもしれないですが、決してそういったことはなくて、コラボレーションをするとおもしろいものができることが多いんです。ブレストはコラボレーションには欠かせない要素です。

慣れていないと最初は発言するのが難しいかもしれませんが、そのうち誰でも参加できるようになるんですよね。発言しないのは、自分の意見が何もないということではなくて、恥ずかしいとか、自分の意見を他人にどう思われるかという恐怖が原因なんです。それをまず取り去るようにしています。そうすると少しずつ発言できるようになってきます。ときには否定されることもありますが、それにも慣れてくると、さらにいろいろな意見が言えるようになって、ブレストを通じておもしろいアイデアがたくさん生まれてきます。ですから、社内では週に何回もブレストをやるようにしています。


常に新しいものを生み出し続けたい


——「面白ラボBM11」では年間77個の様々なサービスをリリースしていますが、すごい量ですよね。

柳澤●自分達がやりたいことをやるためにはなんらかの目標が必要だし、何の目標もないところで実験をしても仕方ないので、年間77個のサービスをリリースしようということで目標を決めて達成しました。

僕らが最も恐れているのは、新しいものがなにも出てこなくなる企業とか、変化を怖がる企業になること。ネット業界で10年間やっていますが、ヒットを飛ばした企業が、さらにまたヒットを飛ばすというのはなかなか難しいと感じています。広告会社やWeb制作会社は新しい技術が出ればそれを使って、常に新しいものを作ることもできますが、ネットビジネスではそうはいかないわけで。本腰を入れてコミュニティを応援するためには、長い付き合いをしなければいけないですし、伸びるのに3年かかるとことだってあります。そういった点においてうちは大ヒットはないですが、毎年小ヒットは出していて、その文化は作れそうな気はしています。

——それぞれのサービスを売却しているのはどうしてですか?

柳澤●うちの使命は、常に新しいサービスを生み出して、人と人を結びつけるということです。新しいモノが作れなくなってしまわないように、作りあげたサービスを売却して、自らを追い込んでいるということもありますね。続けられなくなったら解散だといつも言っていますから。

ゼロから1を生み出す人と、1からはじめる人とは性質が違っていて、感覚的にいうと僕たちはその中間という感じですね。何か新しいものを生み出すことはできたとしても、それを伸ばすためにはさらにエネルギーが必要ですから、その部分はそこに長けたところに売却してお願いしてしまう。

これは、ネット業界では、売る方だけではなく、買う方にも意外と理に適っていることが多いのです。なぜなら、ネットの世界の場合、“お上”がサービスをつくって「さぁ参加してください」というスタイルでは、芽が出て伸びてはいかなくて、草の根的に下から立ち上がってくるものが大きくなることもよくあります。ですから、そういった草の根的に出てきた芽を大きなところが買うという流れは意外と双方にハッピーなのです。

そして、草の根的なコミュニティや媒体を、大きな企業が自ら運営しようと乗り出してきています。広告だけではユーザーとのコミュニケーションは十分にとれませんし、ダイレクトにユーザーとつながることを恐れない企業が、結局得をする社会になってきたのだと思います。



(インタビュー/佐伯宗俊(black★bath) 撮影/谷本夏 )



[プロフィール]
面白法人カヤック 代表取締役  
柳澤大輔

1974年2月14日、香港生まれ。慶応義塾大学環境情報学部を卒業後。ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。
1998年、友人とともに合資会社カヤックを設立。2001年、WEBの受託制作を事業とするグループ会社(株)クーピーを設立。
現在(株)カヤックおよび(株)クーピーの代表取締役を兼任

twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在