第1話に引き続き、資生堂の成田久氏によってデザインされた作品を紹介。その制作過程における思考のプロセスに迫る。第2話ではヘアケア商品を扱うブランド「マシェリ」の雑誌広告をピックアップ。
第2話
女性を素敵に演出する
「マシェリ」
複合的な要素で魅せるイメージ
フランス語で「愛しい人」を意味する「マシェリ」。女性の髪に対する愛情をサポートするブランドだ。現在、シャンプー、コンディショナー、トリートメントといったヘアケアラインナップには3つのカテゴリーが用意されている。
「小悪魔をイメージさせる『ピンク』、お姫様や日だまりのようなかわいい『黄色』、リッチな豊かさを前面に出した『エステ』があります。『エステ』のイメージカラーは紫。それぞれを色で明確に区別できる展開です」
広告に起用されているのは鈴木えみさん。ここで驚かされるのは、3色すべてのパターンで登場する鈴木さんから受ける印象が大きく異なること。
「商品の特徴にあわせてメイクや構図などトータルで雰囲気を変えています。以前は“メイクに凝り過ぎると、メインである髪が注目されにくくなる”と懸念されることもありましたが、商品の認知度が高まってきたおかげで、このようなシチュエーションにこだわった演出も可能になりました」
イラストを線画にした理由
マシェリの商品では、女性らしい香りやグロス髪が意識されている。成田さん曰く「THE 女の子ブランド」。当然メインターゲットは女性。広告でもモデルの髪の美しさを効果的に訴求することが求められる。
「このブランドの広告では、透き通る髪の透明感や軽やかさを表現し、フワフワとした柔らかさを感じさせたいと考えています。特に今回の雑誌広告では、ドローイングをアイコンとして盛り込んでいますが、ベタ面より軽やかな見え方を狙って線画にしているのです」
これらのドローイングは、すべて成田さんが描いたもの。ここでも、色ごとに異なるモチーフが採用されており、それぞれ「キラキラと輝くダイヤ」「フワッと香りが舞っている花」「甘過ぎない印象の大人のアクセサリー」をイメージ。いずれも商品の特徴をうまく表現した女性に愛されるモチーフである。
女性に訴求するためのデザイン
ヘアケア商品の広告について「化粧品と同じで、直に肌に使うものだから、安心感を与えることが大事」と語る成田さん。加えてもう1つ大切なポイントがある。
「シャンプーなどの商品は、あれこれ考えて買うのではなく“ひと目ぼれ”で買っていただくことも多いのです。だから瞬間的に“あ、これ素敵だな。使いたい”と感じさせなければいけません」
「シャンプーなどの商品は、あれこれ考えて買うのではなく“ひと目ぼれ”で買っていただくことも多いのです。だから瞬間的に“あ、これ素敵だな。使いたい”と感じさせなければいけません」
そのためマシェリの広告では「女性の心理で考えながら、憧れるシチュエーションの演出を心がけている」とのこと。だが、デザインしている成田さん自身が男性である以上、女性の立場で考えることに限界はないのか。そんな問いかけには次のように答えてくれた。
「女性向けのブランドを担当するうえで無理はしていません。もともと“女性を素敵に演出をしたい”との想いがあって今の仕事に就いているわけですから。それに、ピンクや赤といったカラフルなものが好きなので、自分には向いていると思います。楽しんで仕事をしていますしね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第3話は「アンバランスな緊張感のある構図」について伺います。こうご期待。
「女性向けのブランドを担当するうえで無理はしていません。もともと“女性を素敵に演出をしたい”との想いがあって今の仕事に就いているわけですから。それに、ピンクや赤といったカラフルなものが好きなので、自分には向いていると思います。楽しんで仕事をしていますしね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第3話は「アンバランスな緊張感のある構図」について伺います。こうご期待。
●成田 久(なりた・ひさし) |