デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第3回「探検ドリランド」(2/2) | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第3回「探検ドリランド」(2/2)

2024.4.20 SAT

【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

デザイン・クリエイティブ目線で語る

ソーシャルアプリ制作の裏側

第3回 グリー株式会社「探検ドリランド」(2/2)


 Interview 2/2 

キャラクターづくりに注力して
ハンターの背景までつくりこむ


タナカ ウサギ氏
メディア事業本部
クリエイティブセンター
アートディレクター/デザイナー
タナカウサギ氏
「探検ドリランド」のデザイン面でのこだわりを聞くと、キャラクターづくりを非常に重要視していることがわかる。アートディレクターとして企画側から出てくるデザインに関する発注を一括管理するタナカ氏は、「デザインの中心は、キャラクター(ハンターやキング)です。バナー画像などでは、かっこいいキャラクターはよりかっこよく、かわいいキャラクターはよりかわいく見せるようなクリエイティブを心がけています。特にハンターカードのデザインは一番の核になるものなので、ディレクターとともに最低でも1カ月、長いときは数カ月の時間をかけて制作していますね」と話す。千田氏も「施策に合わせて、どのようなハンターをつくるかをしっかりと決め、アイデアをテキストだけでなくラフなども描いてデザイナーに伝えるようにしています。キャラクターの性格や背景、住んでいる環境などもきちんとストーリー立てしていますね」と力説する。

iPhoneではFlashが使えないため、スマートフォン版の演出はHTML5が使われている(クリックで拡大)
iPhoneではFlashが使えないため、スマートフォン版の演出はHTML5が使われている(クリックで拡大)
一方で、動きのあるインタラクティブな演出やアニメーションの制作を担当するデザイナーの高氏は、スマートフォンが普及することで大きな変化があったことを明かしてくれた。「フィーチャーフォンではFlashでアニメーション表現を行っていましたが、iPhoneではFlashが使えないので、スマートフォン向けにはHTML5を使わなければなりませんでした。自分をはじめチームのメンバーは、Flashを得意とする人が多く、Flashを使えばタイムラインで簡単につくれる表現でも、HTML5では最初からコードを打たなくてはならないことに苦労しましたね。まずは、ライブラリをつくることから始めて、JavaScriptではできるだけFlashのActionScriptライクにアニメーションをつくっていけるようにしました」と話す高氏。ライブラリを活用したアニメーション制作のほか、さまざまなコンバータも試行錯誤しながら使っていったという。

また、アニメーション表現はシンプルにすることを心がけていることも高氏は明かす。「探検ドリランドのアニメーションは、基本として引き算の考えでつくっています。演出は見せるべきものだけに絞り、むだなものはとことん削除しています。また短いアニメーションで最大限のインパクトを与えるために、色彩のメリハリにはこだわっていますね。ダウンロード時間を短くし、負荷を抑えてユーザービリティを上げることに注力しています」と高氏が話せば、タナカ氏も「3G回線となった今も、その考えはあまり変わっていません。お客様も多いため、回線が太くなったとしても、ストレスなく遊んでもらうためにできるだけ軽くするようにしています」と話す。

GREE Platformで提供される英語版の「探検ドリランド」。スクロールが必要なことがわかりづらくないよう、ファーストビューに必要なボタンを集めるなどの工夫が行われている(クリックで拡大)
GREE Platformで提供される英語版の「探検ドリランド」。スクロールが必要なことがわかりづらくないよう、ファーストビューに必要なボタンを集めるなどの工夫が行われている(クリックで拡大)
続いて、UIのデザインについて話を聞くと、意外にも「日本語版はあまり変えられないが、英語版に特有の変更がある」という答えが返ってきた。

まず、日本語版については、「探検ドリランド」を長く遊んでいるユーザーを考えて、大きな改変は行っていないという。「ずっと楽しんでくれているお客様も多いので、その人たちがわかりづらくなるような変更はできないと考えています。また、日本語版はフィーチャーフォン、スマートフォンと同じUIにしていますが、今後はそれぞれに合う、異なったデザインにしてことを予定しています。英語版については、画像が一画面におさまっているとスクロールが必要であることに気づかない海外の人が多いため、スクロールできることがわかるようにしたり、ファーストビューに必要なボタンを集めたりと遊びやすいように工夫しています」(タナカ氏)


結果や反響がすぐに見えるのが
ソーシャルゲームづくりのやりがい


グリーでは、これまでコンシューマゲームのデザイナーやFlashでモバイルゲームを制作していた人が入社することが多かったという。実際に、タナカ氏は前職でコンシューマゲームを開発しており、高氏はFlashでゲーム制作を行っていた。しかし、その流れも今後は変わっていくのではないかと高氏は話す。「最近は3Dをやっていた人やさまざまな人が来ているので、自分が入社した2年前とは異なり、業界の違いによる垣根はなくなってきていると思います。環境はどんどん変わるので、自分が得意なスキルをずっと使えるわけでもなく、さまざまな分野から吸収することが重要だと思いますね。また、ここ数年でモバイルのFlashは終わったと思われがちですがが、再びWebでFlashを使っていた人たちが活躍できるような可能性も出てきているように感じます」と高氏がいうように、現在のスキルをベースに今後どのようなスキルを吸収し、何をやっていくかが重要となっていくのだろう。

最後に、グリーに入社してソーシャルゲームを企画・制作することで感じた「やりがい」についてもうかがってみた。

高 泰俊氏
メディア事業本部
クリエイティブセンター
デザイナー
高 泰俊氏

高氏は「制作者として、結果や反響がすぐに見えて、しかも量が多いということが魅力ですね。反応を見て、指標を立てながらより喜ばれるものをつくっていけることにやりがいを感じます」と話す。同じように、タナカ氏も「早いものだと朝つくったものが夕方には公開されて多くのお客様が見てくれているのがうれしいですね。そのぶんたいへんですが、またよいものをつくりたいという気持ちになります」と話してくれた。また、タナカ氏はテレビアニメのキャラクター監修などもやっており、「ゲーム内にとどまらず、東京ゲームショウのムービーのデザインやアニメのキャラクター監修、グッズのデザインなど、さまざまなことができるのでうれしいです」とも答えている。

シニアマネージャーの千田氏は、前職で感じた経験からソーシャルゲームづくりのやりがいを話してくれた。「以前、トレーディングカードゲームの全国大会を開いたときに、ある地区の予選で参加者がひとりしか集まらず、結局その少年が地区代表になったことがありました。その少年は、全国大会でほかの参加者に太刀打ちできず惨敗してしまったのですが、落ち込んでいるだろうと声をかけてみると、輝いた目でありがとうと言ってくれたのです」と千田氏は話す。その少年は、トレーディングカードゲームを買うのも、対戦相手と戦うのも時間をかけて電車に乗らなければならず、ふだんは家でひとりでトレーディングカードで遊んでいたというのだ。全国大会に出ることで、自分の好きなゲームをやっている多くの人に出会え、一緒にゲームを楽しむことができたことを心から楽しんでくれた、と千田氏は話を続ける。「ソーシャルゲームでは、近くに仲間がいなくてもユーザー同士がコミュニケーションを取りながらゲームを楽しむことができます。今は、そのような環境を提供できていることがうれしいし、やりがいを感じるところですね」

「ソーシャルゲームでは、ユーザー同士がコミュニケーションを取りながら楽しめる場を提供できることが喜びですね」(千田氏)
「ソーシャルゲームでは、ユーザー同士がコミュニケーションを取りながら楽しめる場を提供できることが喜びですね」(千田氏)
グローバルにソーシャルゲームを配信できるプラットフォームを提供し始めたグリーでは、地域や場所の垣根を越えた皆で楽しめるソーシャルゲームを今後もつくり続け、プラットフォーマーとしても良質でおもしろいゲームを提供していく。東京ゲームショウ2012でも大きな注目を集め、「ゲームの進化は止まらない」をテーマにしたグリーが、スマートフォン上のソーシャルゲームをどのように進化させていくのかに注目していきたい。

(取材・文・撮影:野本幹彦)





グリー株式会社

創業者の田中良和氏が開発したSNS「GREE」を運営・提供するため、2004年に設立されたグリーは、「インターネットを通じて、世界をより良くする。」をミッションに、インターネットを中心としたサービスを展開している。2007年には、初のモバイルソーシャルゲームとなる「釣り★スタ」をリリース。2012年は初めてE3 2012やgamescom 2012など海外のイベントに出展し、国内有数のゲーム開発・提供会社として着実に規模を拡大している。グローバル化にも積極的で、2012年8月現在で10カ国11拠点を展開。GREE Platformによる海外でのゲーム配信も2012年5月から実現している。
URL http://www.gree.co.jp/



<<< 前編に戻る


twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在