第2回 現状分析と企画 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBディレクションの極意


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)
セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/



第2回
現状分析と企画


企業のWebサイトを構築するとき、制作から運用までさまざまな人物がかかわることになる。その多くの人物をまとめあげ、作業をスムーズに進行させるためにWebディレクターの存在は欠かせない。そこで、ここではWebディレクションに焦点を当てて、Webサイト構築・運用の進め方、コツ、心得などをそれぞれの場面ごとに解説していこう。


前回は、プロジェクトを円滑に進めるためにはいかに準備が大切かということを中心に紹介してきたが、今回はWebサイト構築の戦略的な部分である「現状分析」と「企画」について、実際のプロジェクトの現場で行われている方法を交えながら解説していく【1】。Webサイトを制作するうえで 「現状分析→企画→設計→制作」という流れは、たとえ1ページだけを制作する小規模なサイト制作の場合でも必ず存在する【2】。

Webサイト制作のおもな流れ。このうち、「現状分析」と「企画」はWebサイト構築の戦略的な部分となる
【1】Webサイト制作のおもな流れ。このうち、「現状分析」と「企画」はWebサイト構築の戦略的な部分となる

ページを制作するうえでの作業フロー
【2】ページを制作するうえでの作業フロー


現状分析

●アクセスログ解析の重要性

現状分析フェーズで欠かせないのがアクセスログ解析だ。アクセスログはいわばWebサイトの健康状態を見るためのデータである。まず、このアクセスログを分析することでWebサイトの悪いところを見つけ出す作業を行う。アクセスログに関してはそれ自体で一冊の本が書けるほど奥の深いものであるため、ここでは現状を把握するために何を見るべきか、そのポイントについて簡単に説明していく。ポイントを絞って的確にサイトの現状を把握するようにしたい。

1.Webサイトを訪れたユーザは何を求めているのか?

ユーザーの求めているものを把握するためには次の2点を押さえておく必要がある。

Webサイトのカテゴリごとのアクセス数
企業側は商品情報ページを見てほしいということで必死に更新を行うが、実際に見られているのはサポートページばかり、という話は珍しくない。限られたパワーをどこに注力するかを判断するためにもWebサイトのカテゴリごとのアクセス数を検証することは非常に有効である。

サイト内検索キーワード
サイト内検索のキーワードを知ることも非常に大きな手がかりとなる。思いがけないワードの発見もある。リニューアル後のコンテンツを検討する場面で必ず有用な情報となりうるので、ぜひともチェックをしてほしい。

2.ユーザーはどこから訪れているか?

検索エンジンから訪れるユーザーが多いのか、もしくは出稿中の広告から訪れる場合が多いのか、アクセスログ項目のリファラーを見ることでユーザーがどこから訪れているかがわかる。また、検索エンジンから訪れているユーザーについてはどのようなキーワードでサイトへ訪れているかも確認することができる。

3.ユーザーはどのような人物か?

ユーザーは個人ばかりとは限らない。Webサイトへのアクセスは非常に多いが、実は自社の社員やライバル企業の社員ということもある。いくらWebサイトへのアクセスが多くてもそういった人々で多くを占めているのであればそれはまったく意味のないものになる。個人に訪れてほしいのであれば個人ユーザーが多いか、企業に見てほしいのであればターゲットとする企業からきているか、これらを検証できるアクセスログ項目が参照元ホストである。


●ヒアリングのポイント

ヒアリングの内容は、おもにクライアント企業の現状や今後目指す方向性などについて聞く。できれば、直接のWebサイト担当者だけにヒアリングを行うのではなく、Webサイトにかかわるコンテンツの担当者へもヒアリングしたい。ヒアリングの目的は現状を知るという意味もあるが、裏側に別の目的をもっている。それは社内プロモーションである。Webサイトリニューアルのプロジェクトが走り出しているということをヒアリングという形で社内に広く周知するのである。しかも各担当者には協力を得ているので、一緒にやっている感も演出しやすい。以下にヒアリングのポイントを解説しよう。

1.ヒアリングは少人数で

複数の部署の担当者へヒアリングを行う場合は、必ずそれぞれの部署ごとに時間を分けて行いたい。大勢いる場合と1~2名の場合では意見の出しやすさがまったく異なってくるため、できるだけ少人数で行うようにしてほしい。

2.ヒアリングは中立な立場で

複数名にヒアリングを行う場合は、必ず中立の立場で聞く必要がある。だれかを批判したりすることはできるだけ避けなければならない。ヒアリングは事象を集める機会であり、結論を出す場所ではないということを覚えておかなければならない。

3.ヒアリングの項目は簡潔にわかりやすく

ヒアリングの際に何を聞けばいいかはクライアントからの要望によって異なるが、【3】であげたポイントを押さえておけばいずれの場合も問題ないだろう。

代表的なヒアリング項目。これら基本的なことを押さえておけば、さまざまなクライアントからの要望に対応できるだろう
【3】代表的なヒアリング項目。これら基本的なことを押さえておけば、さまざまなクライアントからの要望に対応できるだろう


現状分析の方法として「アクセスログ解析」と「ヒアリング」について紹介してきたが、現状を知る方法はこのほかにも「サイト調査」、「ユーザーアンケート」などがある。ただし、今回紹介したふたつの調査を押さえておけば企画や設計の作業に入ったとき、目指すべきゴールが大きくブレることなくプロジェクトを進行することができる。

企画

単純にWebサイトを構築するといってもまったくゼロから進めるのはあまりにも効率が悪い。プロジェクトが変われば企画の内容が変わるのは当然であるが、どのような企画の場合であっても押さえておくべきポイントは同じである。ここではそのポイントを紹介していこう。

Webサイトをどういった方向で構築するのか、構築を行うことでどのような成果を狙うのかをこの企画フェーズで検討する。

サイトの目的を共有する
Webサイトは大まかに以下の4つの系統に分けられる。

● 販売・申込み系
● 広告・販売系
● サポート系
● 情報提供系


プロジェクトを進めるにあたってどの方向でブランディングを行うのか、Webサイトの方向性を定める必要がある【4】。方向を定めたら、その方向性はもちろん、後に記す目指すべきゴールといったサイト制作の目的をプロジェクトメンバー同士が共有しておくことが重要である。

成果の設定
方向性が決まれば、次に成果を設定する。たとえば「販売・申込み系Webサイトであれば、その販売数や申込み数アップ」、「広告・宣伝系Webサイトであれば、アクセス数やユーザーアンケートなどでの訴求力アップ」、「サポート系Webサイトであれば、コールセンターへのお問い合わせ数ダウン」、「情報提供系Webサイトであれば、アクセス数やユーザーアンケートでのイメージアップ」などである。必ず、企画段階で“何を”成果とするかを決めておくようにしよう。

ゴールとステップの設定
Webサイトの構築が大規模なものになればなるほど時間と労力がかかり、決められた時間内にすべてのことを行うことが難しくなってくる。そのような場合でも、理想的なゴールの姿を描いておくことで今後の進め方が非常にスムーズになる。ゴールを決めていないと、ひとつの作業を終えて次の作業へ移る際にまた企画から考え直さなくてはならず、Webサイトに一貫性がなくなる。しかし、ゴールをきちんと決めておけば、自分が今行っている作業を第一ステップと位置づけることができ、それが次の作業へとつながっていく【5】。このように最初にゴールを決めて、プロジェクトにかかわる人間がひとつひとつステップを切りながら同じゴールに向かうという進め方がプロジェクトを成功に導く近道だといえる。

企画は構築するWebサイトによって大きく異なってくる。ただし、すべての企画において以上のようなことを決めておくことで、以降のプロジェクトを非常にスムーズに進めることができる。

Webサイトは「販売・申込み系」、「広告・販売系」、 「サポート系」、「情報提供系」の4つに分けられる
【4】Webサイトは「販売・申込み系」、「広告・販売系」、 「サポート系」、「情報提供系」の4つに分けられる

Webサイト構築のステップ例
【5】Webサイト構築のステップ例



本記事は『Web STRATEGY』2005年 冬号 vol.2からの転載です
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