第5回 Webプロモーションの重要性 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBディレクションの極意


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)
セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/



第5回
Webプロモーションの重要性

企業のWebサイトを構築するとき、制作から運用までさまざまな人物がかかわることになる。その多くの人物をまとめあげ、作業をスムーズに進行させるため にWebディレクターの存在は欠かせない。そこで、ここではWebディレクションに焦点を当てて、Webサイト構築・運用の進め方、コツ、心得などを
それぞれの場面ごとに解説していこう。


これまで4回にわたり、Webサイトの構築方法について説明をしてきた。大まかな流れはつかんでいただけたと思うが、WebディレクターといえどもWebサイトをリリースして終わりかというと、けっしてそういうわけではない。Webサイトは、構築しただけでプロモーションなど何も行わなければ単なる無人島となりかねない。プロモーションには小さなことからできるもの、コストのかかるものとさまざまだが、Webディレクターが最低限知っておくべき、Webプロモーションについて説明していこう。

Webサイト構築だけにとどまらない

ようやくWebディレクターという職種が確立されてきたが、クライアントがWebディレクターに求める分野はまだまだ狭い。「Webサイト構築を仕切る人」「現場監督」というイメージがあるようだ。

しかし、筆者が考える理想のWebディレクター像はそれのみにとどまってはいない。自分たちで決めたものを順を追ってつくるために多くの人をまとめ、誘導していくことは、当然だれにでもできることではないし、必要とされるべきことであるが、これからのWebディレクターを目指すものとしてはもう一歩踏み出して、いかに結果を残せるかを考えられなくてはならない【1】。つまり、Webサイトをつくるということは何かしらの結果を求めてつくっているのである。極端な場合、Webサイトをつくらなくても結果を残せる案件があることも事実だ。

【1】Webマーケティング概要図
【1】Webマーケティング概要図

今回はWebを使って結果を残す活動の中でも、Webサイト構築ではなく、プロモーションにスポットを当てて説明していくわけだが、実際、Webサイト構築には携わっていてもWebプロモーションはクライアント任せ、というWebディレクターは多いのではないだろうか。つくりっぱなしではなく、プロモーションまで提案できるWebディレクターであるほうが、クライアントからの信頼をこれまで以上に勝ち取ることができるのは言うまでもない。

Webプロモーションで気をつけるべきこと

実は、Webサイトのいちばん弱い部分は「告知能力」である。今やだれもが簡単にホームページをつくれる環境にあり、日々何万という新しいWebサイトが公開されているのが現状だ。その中で世間に存在を知ってもらうという活動がいかにたいへんかは、すぐに理解できるだろう。

Webプロモーションと一言で言ってもさまざまであるが、ここで伝えたいのは「Web独自のプロモーションに過度な期待をしすぎない」「広く告知しようとしない」「世間の流れでWebプロモーションばかりに気をとられすぎない」といったことである【2】。

【2】Webプロモーションで気をつけるべきこと
【2】Webプロモーションで気をつけるべきこと


過度な期待をしすぎないこと


筆者は現在、(株)セシールのWebマスターをしている。Webディレクターというよりはむしろクライアント側の立場でWebの運営を行っているのだが、社内からはWebサイトに関するさまざまな相談を受ける。そのときに気づくのが、みんなの期待が大きすぎるということである。もちろん、これまでにない新しい媒体に期待を寄せるのは大いに結構なのだが、現実と期待の大きさがあまりにもかけ離れていると、さすがに首をかしげることになる。クライアントから相談を受けた場合に現実と期待のギャップの大きさに気づいたら、きちんと現実を伝えることもWebディレクターの仕事である。

広く告知しようとしないこと

プロモーションを行うのに「告知しようとするな」というのは矛盾していると思われるかもしれないが、単純に告知をするなというわけではなく、ターゲットを絞って告知することがWebプロモーションの強みである。ターゲットを絞ることによってピンポイントでの告知を積み重ね、一定の量のアクセス、売り上げ、成果を追う。Webプロモーションは地道な活動なのである。

Webだけにこだわらない

前述したように、Webサイトのいちばんの弱点は「告知機能」である。今、だれもが知っているような有名なサイトもけっしてWebの世界だけで周知されているわけではない。テレビCMやニュース、新聞、雑誌などさまざまなメディアに取り上げられて大きく利用者を伸ばしているケースが多い。ある程度まではWebの世界だけで人が集められるかもしれない(実はこれだけでも結構なパワーが必要)が、一定以上の利用者を獲得しようとすると、Webの世界だけではもはや不可能であることを知っておかなければならない。

Webプロモーションを設計する際は、Webだけにとらわれず、目的やターゲットに合わせて他の媒体も含めてフラットに検討するべきだ。限られた予算をバナーへの出稿に使うか、駅の中吊り広告に使うか、という選択肢があってもいいだろう。

基本的なWebプロモーション

ビジネスの場でWebサイトの重要性が認識され始めて、数年がたつだろうか。ようやく、Webプロモーションの形も確立されてきている。そこで、定番といわれているWebプロモーションの形をいくつか紹介しよう。すでにご存じかとは思うが、実際に筆者が現場で感じている意見も含めて、参考にしてほしい。

また、ネット広告媒体の詳細についてはネット系広告代理店の土俵になるが、Webディレクターとして最低限の情報を知っておくと、プロジェクトを進めるうえで有利なので一度目を通しておくといいだろう。

バナー・メルマガ広告

バナー・メルマガ広告とは、ポータルサイトなどに出ているバナーやメールマガジンに差し込まれている枠などのことである。ターゲットや成果指標次第ではあるが、正直に言うと、費用対効果を考えるとあまりメリットがないと筆者は考えている。

単純にアクセス数を稼ぎたい、そこに成果指標をおく、というのであれば費用対効果もあるかもしれないが、現実的にはWebサイトにアクセスされるだけでは成功とはいえず、何かしらのユーザー情報を取得することや、サービス・商品を購入してもらうことで初めて成功といえるのだ。それを考えると、この手の媒体に費用を投下するのはあまりオススメできない。筆者自身も何度も苦い思いをしたことがあるが、そういった経験を踏まえると、クライアントにそのリスクを十分に伝えることや、同じ費用で他のプロモーションプランを提案することが有効だと考えられる。

アフィリエイト広告

会員登録や売り上げ、つまり実績が上がった段階ではじめてフィーが発生するアフィリエイト形式の広告は、非常に有効である。ただ、フィーを自由に設定できるため利益計算をしっかりとしておかないと売っただけ赤字ということにもなりかねない。その点にさえ気をつけていれば、有効なプロモーション手段であることはまちがいない。

実際の現場でも売り上げを向上させる施策として、アフィリエイトに力を入れている企業は多く、これからもしばらくその流れは変わらないだろう。

アフィリエイトを始めたい場合、アマゾンのように自社でシステムを組むことも考えられるが、A8netやリンクシェア、バリューコマースといったアフィリエイト事業者を介して契約するのが現実的である【3】。もちろん、そういった代理店を通すことでフィーは抜かれるが、それも基本的に成果報酬形式であるのでリスクは最小限ですむ。また、運用体制についてはクライアント企業側で兼任でもかまわないので、担当者をつける必要があるだろう。直接の費用対効果を狙うのであれば、アフィリエイト広告を使うことをオススメしたい。

【3】アフィリエイト代理店
【3】アフィリエイト代理店


リスティング広告

リスティング広告とは、オーバチュアやアドワーズ広告のような検索エンジンの結果ページに表示される、テキスト広告のことである。成果指標次第ではあるが、ターゲットを絞り込んで告知したいときには有効だ。

これもアフィリエイトと同じく成果報酬型の広告で、検索結果に表示された広告テキストを表示しているぶんには費用は発生せず、クリックされて初めて広告費が発生する。通常、購入するキーワードは数個単位ではなく、少なくても百個以上になる場合が多い。大型の不動産サイトや中古車サイトなどは、地名+物件名などでキーワードを購入するため、数万キーワードの出稿になることも珍しくない。これは極端な例ではあるが、現在どのキーワードを購入しているか、そのキーワードで成果が出ているか、などをつねに見ながら、出稿を取りやめたり、別のキーワードにしたりといった管理をし続ける必要がある。やはり、クライアント企業側は兼務でもいいので担当者をつける必要があり、実際のキーワード出稿手続きなどはネット系広告代理店【4】へお願いすることが多い。

【4】ネット系広告代理店リスト
【4】ネット系広告代理店リスト


SEO(SEM)

おおよそ、このSEOとキーワード広告は同じ機能だと理解しても問題ないだろう。ただし、キーワードを購入しているか、購入せずに上位に表示させるかの違いである。

一見すると、キーワード広告のように毎回キーワード購入費を払わなくてもすむSEOは理想的に思われる。しかし、現実的には特定のキーワードで上位に表示させるために高い費用を支払い、上位表示を維持するためにまた高い費用を払う。他のキーワードで上位表示させようとするとまた費用……、といった具合に非常にコストのかかる施策である。また、特定にキーワードに対して、無理やり上位表示をしているために、検索エンジンのアルゴリズムが変わると上位転落というリスクも抱える。特にSEO対策は不動産や中古車情報など動的に生成されるWebサイトで有効であり、テンプレート側に対策を埋め込むことで、各詳細ページが上位表示されるようにする場合が多い。

実際の現場では、SEO対策とリスティング広告を併用している場合が多く、SEO対策ではビッグワードを、リスティング広告で細かなキーワードを、といったような形で使い分けるとより有効に活用できるのではないかと考えられる。

自社メルマガ

プロモーションという切り口では語れないかもしれないが、インターネットを使って販促活動を行っていくうえで、メルマガを省いては語れないだろう。それほど有効な手段だと思われるので、ここで触れておこう。

登録者や購入者のメールアドレスを取得して、以降の販促活動に使うというのがメールマガジンの一般的な使い方だが、その使い方に気を配っていないと、せっかくの有効な手段も無駄に終わる恐れがある。とにかくメールアドレスを取得すればいいというものではなく、一定額以上の購入者や特定商品の購入者など、できるだけ狭い範囲でのセグメント化が重要である。また、それらユーザーとのコミュニケーションについてもメールを出すタイミングを十分に見計らって、できるだけ絞り込んだ情報を提供するのがいちばん効果の出る方法である。

今回紹介した施策は、どれもWebマーケティング活動を行ううえで基本的、かつ標準的なプロモーションとなっている【5】。クライアント担当者はWebサイトの構築というミッションに加え、こういった集客活動にも責任を負っている場合が多い。そのため、Webプロモーションに精通したWebディレクターとしてアドバイスできるということが非常に有利となる。

【5】基本プロモーションマトリクス
【5】基本プロモーションマトリクス


本記事は『Web STRATEGY』2006年9-10 vol.5からの転載です

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