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第6回 これからのアプリデザインに必要な知識とスキル そして、それをとりまく環境

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秋葉ちひろのAndroidアプリデザイン入門(6)

第6回
これからのアプリデザインに必要な知識とスキル
そして、それをとりまく環境


2013年5月9日
解説・文:秋葉ちひろ

今まで5回に渡って、Webデザイナーさん向けにAndroidアプリデザインについて連載をしてきました。最終回となるこの回では、今後の展望も含めてまとめていきたいと思います。


■なぜいま、Androidアプリデザインなのか?

AndroidにはAndroidのシステムインターフェイスがあり、iPhoneのそれとはまったく違うものです。また、Androidのガイドラインには、「Pure Android」という項があり、そこには「iPhoneの○○のマネをしてはいけない」ということが、画像付きでしっかりと書かれています。

<span style="font-size:7pt;">(クリックすると拡大します)</span>
(クリックすると拡大します)

参考:Pure Android | Android Developers
http://developer.android.com/design/patterns/pure-android.html


では、なぜいま、Androidアプリデザインなのでしょうか。理由は3つあります。


(1)ひとつにはやはりネイティブということ
iOS、Androidの二大OS、そしてWebをプラットフォームとしたOSなど、すでにたくさんのデバイスがあります。各OSのマーケット(iOSではApp Store、AndroidではGoogle Play)に出ているもののほとんどは、ネイティブアプリです。

#ネイティブアプリとは、各OSにいちばんあった開発技術でつくられたアプリのこと。iOSではObjective-C、AndroidではJavaとなっている。

iOS用とAndroid用のネイティブアプリを作るためには、開発する技術が違うので、場合によっては2チーム必要になってしまいます。今のネイティブアプリ開発の現場における課題のひとつは、工数を減らすこと。もし、これらのOSに対するアプリをワンソースで作れたとしたら、労力も工数も夢のようです。

その候補のひとつとして、「HTML5とJavaScriptで動くWebアプリ」が挙げられるでしょう。

しかし、実際問題としてHTML5を使ったアプリが現時点で魔法のステッキかというと、そうではありません。なぜなら、ネイティブアプリとそれらを比べたときに、どうしてもネイティブのほうが良いパフォーマンスが期待できるからです。簡単にいえば、写真をフリックしてスムーズにアニメーションさせる場合、Androidのネイティブアプリだとそんなにむずかしくなかったとしても、HTML5とJavaScriptではどう効率的に実装してもカクカクしてしまうのです。

HTML5の技術を使って職人的なチューニングをしなくても、Androidアプリに慣れたエンジニアがAndroidに特化してさっと実装したほうが、ワンソース化のために割く労力よりも少なくてすむことはよくあります。その分、Androidアプリに慣れたデザイナーがいれば、デザイン面も問題なくアプリが作れることになります。

#カメラやセンサーなどのデバイスを使わない場合や、凝ったアニメーションや効果にこだわらない場合は、ネイティブパーツ+WebViewというハイブリッド形式のほうが効率が良い場合もあります。


(2)次に、これからの未知のデバイスのUIに向けてという点
少し前に「Androidは当初、デジカメ向けだった」と、Androidの生みの親、アンディ・ルービンが発言したことは大きな話題となりました。

参考:
・新経済サミット2013:「Androidは当初、デジカメ向けだった」 生みの親 アンディ・ルービンが語る“素早い転換”の価値 (1/2) - ITmedia ニュース
なんと華麗なる勘違い...アンドロイドはデジカメOSとして爆発的に売られるはずだった? - ギズモード・ジャパン


今回の話では、当初はデジカメ向けOSだったはずのAndroidが、なぜかスマートフォンとして大きな市場を作ってしまったというものですが、今後は逆のことが考えられます。すでに、デジカメについてはAndroid OSが搭載されたものも発売されています。

参考:
・hotokina 2012:注目は「D600」 Android OS搭載「COOLPIX S800c」も人気 ニコンブース - ITmedia デジカメプラス
ポラロイド、世界初 Android 搭載のレンズ交換が可能なミラーレス一眼スマートデジタルカメラ「Polaroid IM1836」発表 - Google Pad


PCブラウザやスマートフォンで見る画面をいつも考えているわたしたちにとって、それ以外のインターフェイスデザインを考えることにはやや抵抗があるかもしれませんが、使っている技術が同じとなると、一気に親近感がわいてくるものです。他にも、先日行った眼科医では、電子カルテとしてiPad端末が使われていました。また、医療機器の操作もタッチデバイス化されるとなると、そこにインターフェイスの設計はおのずと必要になってきます。


(3)Webサイト、Webアプリ、iOSアプリ、Androidアプリのすべてを総括して考えるため
今いちばん重要なのは、このことだと考えています。ひとつのサービスを展開するとしても、マルチデバイス対応は必須です。先ほども述べたように、OSによって最適なアプリの開発技術はまちまちです。しかし、各OS向けにデザイナーも別々についていたとしたら、スキルの差によって、各OSごとにデザインの差が出てしまうことがあるかもしれません。

そうならないために、デザイナーはひとりですべてのOSを担当するか、もしくは個々のデザイナーをまとめてクオリティを維持するためのアートディレクターが必要になるでしょう(プロデューサーが兼任できれば問題ないのですが…)。

そして、これからはWebブラウザをベースにしたスマートフォンのOSも出てくることでしょう。しかし、おそらくWeb OS用の「ガイドライン」にあたるような、アプリを作る際のインターフェイスの指示書は出てこないと思います。Webアプリのインターフェイスに制約はなく、無限の可能性をみなが探し求めているからです。大海原の中にある小さな島を手探りで探すようなもので、正解に近いものがたくさんある中で、いちばん良しとされるものを作り出すのは豊富な知識と経験が必要になります。

そう考えると、ネイティブアプリはガイドラインがある分、設計やデザインが楽です。インターフェイスを作る初心者でも、ガイドラインを見て作ればそれなりのものは作れるようになりますので、はじめのとっかかりにはとても良い材料だと思います。



■アプリの設計について

アプリのデザインに携わっていると、Webサイトのデザインをするとき以上に、「そのパーツがどういう意味を持っているのか」「ほんとうにこのデザインでユーザーに伝わるのか」「このデザインでユーザーがほんとうに使いやすいのか」ということを、自然と考えるようになります。

スマートフォンの場合、画面に配置できるボタンの数も限られますし、順序も重要です。また、ボタンにテキスト(文字)をつけられない場合はアイコンのみで表現しなければならず、これもまた頭を悩ませます。そういった意味では、ワイヤーフレームがあるから簡単にデザインできるよというわけにはいかず、さらに奥に含まれた意図をくみとった上でデザインをしなければ、本当に良いデザインとはいえないでしょう。

また、これは個人的な見解ですが、今までWebデザインをしていて、「Webアプリ」のデザインをする必要が出てきたときには、ネイティブアプリのインターフェイスを一度しっかりと見てみることをおすすめします。

今までのWebサイトには必要なかった「アクション」(たとえば、カメラを起動したり、位置情報を取得したり)についてのインターフェイスの参考になると思います。

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<span style="font-size:7pt;">(クリックすると拡大します)</span> FacebookアプリとTwitterアプリで、投稿に写真を添付するときのアクションボタンの配置。写真が添付されると、ボタンにも色がつき、「すでに写真は設定されていますよ」というのが一目でわかるようになっている
(クリックすると拡大します)

FacebookアプリとTwitterアプリで、投稿に写真を添付するときのアクションボタンの配置。写真が添付されると、ボタンにも色がつき、「すでに写真は設定されていますよ」というのが一目でわかるようになっている



■最後に

この連載では、Androidアプリデザインの入門編ということで、Androidの知識や基本的な考え方について解説をしてきました。Androidアプリ開発に携わることになったら、中古のSIMなし端末でもいいので、ぜひ購入して普段から使ってみてください。そして、AndroidもしくはAndroidアプリに関してわからないことがあれば、近くの開発者の方に聞いてみてください。

もし携わる機会がなかったとしても、多くの人が持って使っているインターフェイスとして、触れておいて損はないと思います。そして、それが今後の仕事において何かの役に立てば幸いです。





[記事リンク]
>>> 「秋葉ちひろのAndroidアプリデザイン入門」目次へ戻る
>>> 第1回「iPhoneアプリとAndroidアプリのデザインの違い(前編)」はこちら(2/21公開)
>>> 第2回「iPhoneアプリとAndroidアプリのデザインの違い(後編)」はこちら(3/7公開)
>>> 第3回「ガイドラインからみた、Androidアプリデザインの特徴1」はこちら(3/21公開)
>>> 第4回「ガイドラインからみた、Androidアプリデザインの特徴2」(4/4公開)
>>> 第5回「ガイドラインからみた、Androidアプリデザインの特徴3」(4/18公開)
>>> 第6回「これからのアプリデザインに必要な知識とスキル そして、それをとりまく環境」(5/9公開)


秋葉ちひろ【著者プロフィール】
株式会社ツクロア
デザイナー/アートディレクター 秋葉ちひろ(あきばちひろ)

●Web制作に従事する傍らAndroidデザイン・XML実装までを担当。デザインや実装に関する講演、執筆、寄稿なども多数手がける。2012年後半はBaidu JapanにてAndroidアプリ⌈Simeji⌋の開発に携わる。2013年4月に株式会社ツクロアを設立。言われたデザインをただ指示通りに作るだけでなく、構造や仕様もデザイナー側から言及できるよう、ハードウェアやソフトウェアプログラミングなどの勉強にも余念がない。技術にとらわれずに体験からデザインを考えるコミュニティ⌈デザイナーズハック⌋を運営。もの作りが好きなことが原点。
●株式会社ツクロア:http://tuqulore.com
●Lady Beetle Design(個人ブログ):http://www.ladybeetle-design.com
●Twitter:@tommmmy



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