第8回 Webサイト制作の基本、プランニング | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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サイトプロデュース


Webプロデューサーはつねに結果を意識しなくてはならない。企業のサイト構築に「つくりっぱなし」はなく、運営・管理・コストを意識した提案こそがユーザーとクライアントを満足させる結果を導く。


文=村田アツシ
文=村田アツシ
(株)セットアップにて、企業サイト構築及び、業務系システム構築においてコンサルティングを手がける
url. www.setitup.jp/




Clip No.8
Webサイト制作の基本、プランニング


「プランニング」ですべてが決まる

Webサイトを構築、リニューアルする際に重要となるコンセプトを固めたモノが「プランニング」(=実行計画書)だ。ふだん、あまり意識しないであろうが、サイトを閲覧するユーザーはこのサイトは「○○のサイト」と目的解決のキーワードをもってアクセスしてくる。この「○○のサイト」というものがサイトのドメインであり、発信者側が設定したプランニングどおりであることが理想である。

大規模なサービス構築の場合は、「サイト企画書」「システム概要書」「ネットワーク概念図」「サービス詳細説明書」「プログラムソース」「ガイドライン」「マニュアル」など、膨大な名目の資料が作成される。その多くは運用や開発に関係した内容であり、そもそもの「サイトのコア」を明言化したドキュメントは意外と少ない。

サイトプロデューサーや管理者は、担当するサイトの目的、ターゲット、ベネフィット(企業側・利用者側)、スケジュール、コストを把握する必要がある。「どのような目的や背景でサイトが維持継続運営されるのか?」、そのコンセプトやビジネスモデルを共有し、実行できるように内容を落とし込んだモノが「プラン」であり、単なる「サイトの企画」ではなく、「実行計画書」としても利用できる点がポイントである。


「プランニング」は「企画」だけではない!

「本質である戻りどころ」を設ける

プランニングは、「サイト構築設計書」「リニューアル計画書」のようなたぐいのドキュメント名で用意されることが多い。

個人レベルに近い小規模なサイトを構築する場合には、「メニュー構成」「サービス内容」を考え、いきなりデザインし、HTML化して公開するケースが多々ある。特に、予算の少ないケースや、担当者が少人数の場合は、共通認識がなく「オレ流」であることに疑問を抱くこともなく、とりあえず……策で立ち上げられる。

この場合、ドキュメント化されるものはHTMLファイルや画像ファイル、ネットワーク関連の書類などがメインとなり、いちばん大切なサイトやサービスの「コンセプト」を明確に示した「本質である戻りどころ」が残されない。そのため、時として担当者が代わると、「ぼくのイメージはこうじゃない!」とか、「もっとかっこよくリニューアルしよう」など、スタート時の思想とずれた方向に走ってしまう。

プランニングをしっかり行い、ドキュメント化しておくことで、このような情報伝達のまちがいを軽減し、サイトの目的と到達点を再度見直せる。当然、プランニングは中期計画(2~3年)程度しかカバーできないが、つねに共通認識の戻りどころであり、実行計画書であるドキュメントがあれば、それをベースに、評価を行いながら改善するPDCAのサイクルがつくり出せるのだ。

経営者が振り返って読める内容に!

もうひとつ大切なことは、プランニングは経営者が読んで理解できる構成と内容にする必要がある、ということだ。

基本的に経営者は、詳細な要件確認書や、仕様書、工程管理表などには重きをおかないものだ。資産として償却するソフトウエアやハードウエアの数、継続的に負担となる通信費や環境の構築維持費、運用に携わる体制や人件費、外部スタッフの構成と契約関係、売り上げ予測など、経営に関するサマリーを確認する資料を必要とする。「なぜ、どのような目的で始めたのか?」ということを経営者はよく振り返るものだが、そのときにプランニングがわかりやすいということが重要になってくる。

「プランニング」ドキュメントは企・詳・展・決で

前述のように、プランニングの資料はのちの段階においても重要なものとなる。そのため、サイトの定義やサービスのコンセプトやロードマップなど「サイトの羅針盤」的な役割を果たす内容が盛り込まれていなければならない。

実行計画書としての「計画書」の基本的な構成項目を以下に示した。名称に特に決まりはないが、起承転結ではなく、企詳展決で構成すると論理的になる。

●「企」は企画を説明(企画意図や概要)
●「詳」は企画の詳細を説明(サービス概要)
●「展」は企画の展開を説明(サービス内容)
●「決」は決行する段取りと内容を説明(運用と体制、予算、スケジュール)


と当てはめて考えていただくとわかりやすい。

「プランナー」を生かすも殺すもプロデューサーの腕次第

予算があり、スタッフに「プランナー」を入れることが可能な場合の進行管理について説明しよう。実は、プランナーを生かすも殺すも、プロデューサーの腕次第だ。

本質がずれないようにしっかりとしたミーティングを行うことが重要である。発想が豊かすぎて方向が飛びすぎるケースも多く、おもしろがっていると本質からずれてしまうケースもあるため、人によっては何度も回数を重ねて話し合う必要がある。本質がずれるのを防ぐには、できるだけ、依頼したいプランニングのコンセプトや企画のアウトライン、ワークフローなどを用意することだ。必要であればプランナーと現場の担当者を会わせることをお勧めする。実務を体験してもらうことで、よりプランに具体性が出てくる。

また、プランナーにはさまざまなタイプがいる。たとえば、ビジネス設計に強い人、Web全般に詳しい視点の人、技術寄りな発想の人……などなど。できるだけ仕事をする前に得意分野の確認をしておきたい。また、成果物がどのようなクオリティで納品されるかも、過去の納品物などをチェックする必要がある。


プランニング内容を構成する目次のサンプル

プランニングをドキュメント化しておくことで、いつでも、だれでもサービスの「本質」に戻ることができる。プランニング内容を構成する目次のサンプルを紹介する【1】。この戻りどころがあればこそ、サービス拡張やサイトリニューアルなどの改善が生きてくるのだ。

すでにサイトを運営している方で、プランニングがない場合は、この内容で現在の状況をもとにプランニングを再度立ててみるとよい。サイトの分析もできるため、意外なことが発見されるかもしれない。

プランニング内容を構成する目次のサンプル
【1】プランニング内容を構成する目次のサンプル

●「企画意図」について
サイトを構築・運営するための「コンセプト」を示した内容を書く。サイトのキャッチコピーでもよく、1行もしくは「ひと言」で理解できるまで検討・整理されているのが望ましい。
例)世界一速い「検索」サービス

● 「企画概要」について
企画意図を基に、ターゲットやビジネスモデル、機能、サービスなどを大まかに説明し、規模感を伝える。
例)余暇時間増大という日本の社会的背景に向け、団塊の世代のインターネットユーザーをターゲットに、広告モデルをメインに年商1億円の売り上げを目標としたSNSサービス。

● 「サービス内容」について
サービスについてひとつひとつポイントを説明していく。目的、ターゲット、効果、コスト、スケジュールなどは必ず押さえておきたい。特に重要なのは、「どのサービスや機能から提供していくのか?」「まず最初の到達点はいつなのか?」を示しておくことだ。サイトのデザインの方向性やゾーニングなども必要となる。

● 「システム構成」について
システムの開発設計書とは別物で、あくまでも基本となる構成を図式化したもの。「どのような役割のマシンが何台必要で、ネットワークでどうつながっているのか?」がひと目でわかるものがよい。

●「運用と体制」について
実際に運用をする場合に「どのようなリソースが必要なのか?」を洗い出し、「内部で処理するのか?」「外部委託するのか?」など、作業のボリュームを明確化した内容。

● 「予算とスケジュール」について
全体的な開発の予算と実施する全体のスケジュールがわかる内容。また、サービス自体をバージョンアップしていく場合のフェーズや、稼働人員が想定できるとよりよい。



本記事は『Web STRATEGY』2007年 3-4月号 vol.8からの転載です
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