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第8回 音にまつわる権利

特集記事

デザイナーのための著作権と法律講座


第8回 音にまつわる権利


アート・エンタテインメントの業務を多く扱う「骨董通り法律事務所For the Arts」の弁護士による、著作権とそれにまつわる法律関連の連載です。クリエイターが気になる法律問題についてわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

文:弁護士 諏訪公一(骨董通り法律事務所 for the Arts)



■ 音楽の著作権を管理する団体


皆さんが毎日耳にする音楽。その歌詞やメロディーに著作権があるのはご存知かと思います。では、ホームページのBGMや動画などにお気に入りの音楽を使いたいときには、どのような権利に注意すればいいのでしょうか。今回は、そんなときに問題になる「音にまつわる権利」についてお話ししたいと思います。

「音楽と著作権」といえば、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)が有名でしょう。JASRACは、作詞者・作曲者の著作権を管理する団体です。音楽著作権を管理する団体(著作権等管理事業者)は、他にも株式会社イーライセンスJRC(株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス)などがありますが、JASRACの管理楽曲は、市場の95%以上を占めるといわれています。

なぜこんなに多くの楽曲を管理しているのかというと、かつては、音楽の著作権の仲介業務をJASRACが独占していたからです。Bookただ、2001年に法改正がなされたことでJASRAC独占がなくなり、イーライセンスやJRCなどが参入しました。JASRACなどの著作権等管理事業者の集中管理は、権利処理という観点からは非常によくできた仕組みです。ある音楽を使いたいと思ったら、そこのドアをたたいて、決まった使用料を支払えばほとんどの楽曲を使用することができるからです(もちろん、管理されていない楽曲もあります)。


音楽以外の著作物だと、通常は著作権者を探して個別に許諾をもらわなければなりませんし、使用料も交渉次第です。相続などがあった場合にはさらに大変です。一方、音楽著作権では、個別に交渉する手間が(例外はありますが)基本的にいりません。また、JASRACは外国の多くの著作権等管理事業者と相互協定を締結しており、そのような外国の著作権等管理事業者の楽曲もJASRACを通じて使用することができます。


■ 原盤に関する権利


JASRACは、音楽著作権のうちでも、作詞者や作曲者などの著作権を取り扱っています。ただ、音にまつわる権利は作詞者や作曲者の権利だけではありません。歌手や楽器を演奏している人には「実演家の権利」という権利がありますし、また、音を最初に録音したレコード会社などに与えられる「原盤権(レコード製作者の権利)」があります。

stick レコード会社になぜこのような権利が与えられるのかと疑問を持つ方もいるかもしれませんが、マスター音源を作ることは、実は非常にお金がかかることなのです。スタジオ使用料、演奏料のほか、楽器使用料、ミキサー料、編曲料など、現在でも一曲あたりの制作費は50~100万円くらいかかるといわれており、レコード会社は、その投資を回収しなければなりません。なお、実演家の権利は、原盤権者が買い取っている場合が多いため、原盤権者の許諾を得ることができれば、あわせて実演家の権利処理も可能なケースが多いでしょう。

このように、もしあるCDの曲をホームページや動画に使おうと思ったら、作詞者や作曲者などの「音楽著作権」だけではなく、実演家の権利やレコード製作者の原盤権の「著作隣接権」の権利処理をしなければなりません。

前者はJASRACなどの管理事業者から許諾をもらい、後者はレコード会社などに許諾をもらいに行くことになります。原盤権などは皆さんなじみが薄い権利かと思いますが、他人が制作した音源を使用するときには注意が必要です。

もちろん、他人が制作した音源を使わず自分で制作したものを利用する場合には原盤権者の許諾は不要ですので、作詞・作曲の音楽著作権と実演家の権利処理を行えばいいことになります。


■ 特別な交渉が必要なとき


「音楽著作権」と「原盤権」の処理のうち、作詞・作曲などの「音楽著作権」についてはJASRACなどの管理事業者に確認すればいいとお話ししました。しかし、JASRACなどの管理楽曲であっても、すでに出来上がっている曲をCMに利用する場合や外国楽曲を映像に利用(シンクロといいます)させる場合などは、特別な注意が必要です。

たとえば、お酒が大嫌いな作詞者や作曲者の楽曲をお酒のBGMに使った場合、その楽曲がCMで使われた商品やサービスなどの特定のイメージと結びつくため、作詞者や作曲者の名誉や声望を害すことにもなりかねません。そのため、CMに楽曲を使用するような場合には、音楽出版社などを通じて直接の許可を得る扱いになっています。

また、一般的に、外国楽曲のシンクロ利用は外国の著作権等管理事業者が管理していないことから、音楽と楽曲をシンクロさせる場合にもその権利者に直接許諾をもらいにいかなければなりません。このときの許諾料は、JASRACの使用料規程ではなく、「差し値」交渉、すなわち権利者と使用する人との直接交渉で決まります(なお、日本の楽曲の場合は、一般的にJASRACで映像利用の権利処理ができます)。

ところで、外国楽曲の管理はたいてい、外国楽曲の著作権を管理する原出版社(オリジナルパブリッシャー、略称OP)と、その下に各国のエージェントであるサブパブリッシャー(略称SP)がいるという構造になっています。hatそのため、外国楽曲を映像にシンクロさせたい場合には、通常は楽曲を使用する国のSPにコンタクトを取り、どのような条件なら許諾をしてもらえるかを確認することになります(なお、CD音源を使用する場合には、別途レコード会社の許諾も必要です)。



■ 「音」に関する新しい商標権


音にまつわる権利は、なにも著作権だけではありません。今、「音にも商標権を与えよう」という動きがあります。商標といえば、今までは文字やマーク、立体的な形が中心でした。しかし、言語を超えたブランドメッセージ発信の必要性や、外国からの保護の要請もあることなどから、「音」などの新しいタイプの商標を保護の対象に加えようとする動きがあります。たとえば、欧州では、CMでよく耳にするインテル株式会社の音の商標や、久光製薬株式会社の「♪ヒサミツ」といった音の商標の登録が認められています。

そして2014年4月、「音」に商標登録を認める改正法が成立しました。現時点(2014年5月)では、この改正商標法が施行される日は正確には決まっておりませんが、近々「音」の商標が誕生します。hat商標として登録された「音」について、聞いた人が「この音が使われたということは、○○の会社の商品やサービスだな」と勘違いするような形で使用する場合には、商標権侵害になる可能性があります。登録をしなくても権利が発生する著作権と異なり、商標権は特許庁に登録されなければ発生しないため、登録された「音」を調べることができます。今回の法律改正によって、どのような音の商標が登録されるか注目されます。


  アートと権利、今月の話題 

  動向(2013年12月分)

 「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス ver.4.0がリリース」

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)は、原作者のクレジットを表記することなど、ある特定の条件を守れば誰でも作品を使用してよいと明示することで、作品の利用・流通を促進させるマークをいう。2013年11月25日にその新しいバージョンがリリースされ、データベース権への使用など、特にEU諸国の政府や公共機関に使いやすくなるように変更された。また、意図せずCCライセンスに違反した場合であっても、適切な手続きにより30日以内に違反状態を解消すれば、再度CCライセンスを使えるようにするなどの条項も設けられた。


  判決

 「『LADY GAGA』の商標登録を認めず」

レコードや録画済みビデオディスク・ビデオテープなどを指定商品として、「LADY GAGA」の商標登録が認められるかについての判決が平成25年12月17日知財高裁で出された。判決では、上記商標がレコードなどに使用された場合には歌唱者(商品の品質・内容)を示したに過ぎないと考えられ、また、仮にLADY GAGAが歌っていない商品に記載した場合には商品の品質について誤解を与えるなどとして、商標登録を認めなかった(特許庁審決を支持)。しかし、過去には指定商品「録画済みビデオディスク及びビデオテープ」でMARAIAH CAREYの商標登録が認められている事例もあり(4375731号)、今後の動向が注目される。

●参考文献:安藤和宏『よくわかる音楽著作権ビジネス(基礎編)(実践編)』(リットーミュージック、
第4版、2011)

※本コラムは、弊社の連載「デザイナーのための著作権と法律講座」(月刊MdN 2014年3月号)の記事に、一部加筆修正したものです。



●骨董通り法律事務所の最新の活動(セミナー・講演、メディア出演、執筆活動など)はこちらをご確認ください。


さて、次回の第9講は「コンテンツの利用に関する刑事罰のルール」です。誰でもネットで簡単に大量のデータのやりとりが可能となった今、コンテンツの違法利用が刑事裁判につながるケースも、もはや珍しいものではなくなりました。違法ダウンロードの刑事罰化や著作権侵害の非親告罪化が大きな話題になったり、コンテンツの保護と利用のルールである「著作権法」と「刑事罰」との結びつきは、ますます身近なものとなっています。そこで、次回は著作権法と刑事罰の問題について解説していきます。


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2014/5/28





【骨董通り法律事務所 Kotto Dori Law Office】

骨董通り法律事務所

“For the Arts”を旗印に2003年に設立され、法律家としての活動を通じてさまざまな芸術活動を支援する法律事務所。出版、映像、演劇、音楽、ゲームなどのアート・エンタテインメント業界のクライアントに対する「契約交渉の代理」「訴訟などの紛争処理」「著作権など知的財産権に関するアドバイスの提供」を中心的な取扱業務としている。また、幅広い業種のクライアントのための企業法務,紛争処理にも力を入れる。


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