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世の中が少し斜めだから、素直に見て切り取っているだけ

2024.4.24 WED

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タイトル画像:「こだわり」を持たないからできる映画づくり

去る3月27日、東京ビッグサイトで開催されたアニメの祭典、東京国際アニメフェア(TAF)で、テレビアニメシリーズ『秘密結社 鷹の爪』の劇場版第2作『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE Ⅱ ~私を愛した黒烏龍茶~』の記者発表会が行われた。『秘密結社 鷹の爪』は、全編をFlashで制作したアニメとして話題を呼んだ作品。劇場版第2作ではサブタイトルをネーミングライツ(※1)にするという映画史上初の試みも行われている。TAFの会場で同シリーズの監督であり、脚本、キャラクターデザイン、声の出演までも務める映像クリエイター FROGMAN氏(蛙男商会代表)に、Flashでアニメーションを作るに至った経緯や最新作についてうかがった。

『秘密結社 鷹の爪』とは?
2006年にテレビ朝日系列で深夜放送され人気を博したアニメシリーズで、世界征服をたくらむベンチャー秘密結社「鷹の爪」と、彼らの野望を阻む正義のヒーロー(?)デラックスファイターとの戦いを描いたコメディ。2007年3月に劇場版第1作である『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE ~総統は二度死ぬ~』が公開。同作はN.Y.国際インディペンデント映画祭に出品され、アニメーション最優秀作品賞、国際アニメーション最優秀監督賞の2部門を受賞した。今年5月には劇場版第2作の公開が開始する。


世の中が少し斜めだから、素直に見て切り取っているだけ


――5月に『秘密結社 鷹の爪』の新作映画が公開されますが、見どころをお聞かせください。
FROGMAN●『秘密結社 鷹の爪』は落語みたいな映画だと思うんです。一見すると単純なおバカ映画なんですが。でも、落語って実は笑えるだけではなくて、日々の生活の中での、いろいろな人間たちのおもしろい掛け合いによって成り立っている。人間の生きる知恵や人情の機微がいろいろ含まれているんですよね。同じように、『鷹の爪』もキャラクターが出てきて笑わせるおバカなだけのアニメじゃなくて、そこに必ずメッセージを込めているつもりです。

もともと映画監督になりたくて、十数年間実写の世界でやってきました。メッセージというとエラそうなんですが……。先輩方に映画について叩き込まれてきたので、ものをつくるとなるとどうしてもメッセージを込めたくなるんですよね。


『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE Ⅱ ~私を愛した黒烏龍茶~』記者発表会
5月に公開が決まった新作映画『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE Ⅱ ~私を愛した黒烏龍茶~』の記者発表会の模様。同作では、作品のサブタイトルにネーミングライツを取り入れる新しい試みが行われている


――次回作にはどのようなメッセージを込められたのでしょうか?
FROGMAN●公開前なのでまだ言えませんが、いろいろなメッセージを込めています。環境問題などでもそうですが、メッセージって真顔で言われると鬱陶しくなりがちなので、ギャグにして言ってくれればもっと聞くのに、って人は多いと思うんです。だから、自分としてはあくまでもコメディをベースにしながら、だけどストーリーはしっかりしていて、何かメッセージを込められればいいなぁなんて思っています。

この間N.Y.で賞をいただきましたが、まったく作品の予備知識のないN.Y.の人たちが作品を観て、ゲラゲラ笑ってくれたんですよ。そのあとで、映画評論家の方に「すごくいい作品だ。エコロジーのメッセージも含まれていて、感動した」とおっしゃっていただけたんです。だから、ちゃんと見てくれる人がいて、メッセージを受け取ってもらえるものなんだなぁと感動したんです。

――FROGMANさんのなんとなく物事を少し斜めから見る独自の作風や感性は、以前からずっと持っておられたものなのでしょうか?
FROGMAN●そうですね。育ちの悪さから、ひねくれ者になってしまったんですけど(笑)。ただ、以前ある人から、今の世の中がちょっと斜めになっているから、真っ直ぐ素直に見ると、かえって作品が斜めになってしまうんじゃないかと言われたことがあって。「なるほどな」と思いました。

TBSの「NEWS23」の中で放送している『蛙男劇場』でやっている内容も、物事を斜めに見るというよりは、世の中のおかしな、変なことを、真っ直ぐに向き合ってみたらこんな滑稽なことはない、そういうことをどんどん切り取っていこうと取り組んでいます。政治家が苦し紛れに変なことをよく言いますよね。長崎の原爆を「しようがない」と言ってみたり、それについて子供でもしないような言い訳をしたり。素直に見たら、どうしてもおかしい、変だということをテーマにしていく。スタンスとしてはそんなつもりでいます。


東京国際アニメフェアに出展した株式会社ディーエルイーと蛙男商会のブース

『秘密結社 鷹の爪』をはじめとする作品のキャラクターグッズが多数展示されていた
東京国際アニメフェアに出展した株式会社ディーエルイーと蛙男商会のブース。『秘密結社 鷹の爪』をはじめとする作品のキャラクターグッズが多数展示されていた


――Flashでアニメーションを作り始めたきっかけは?
FROGMAN●Flashは2003年の終わりごろから使い始めました。Webで実写作品の動画を配信したいと思ったのがきっかけです。ただ、当時はYouTubeもないし、動画を流すにはストリーミングサーバを自分で用意する必要がありました。当時は月の管理費だけで数十万かかるという時代でしたので、個人では到底まかない切れない。もっと負担のかからない方法で動画を配信することができないかと探していて、たどり着いたのがFlashだったんです。

ずっと映画監督を目指していたので、シナリオが書けるということから、まずFlashアニメーションを始めました。今でこそアニメーションの仕事をしていますが、それまではアニメーションの“アの字”も知らなかった人間なんです。こうして(東京国際アニメフェアの)会場を見ていても、ほとんど知らない会社や作品ばかりで(笑)。ですから、その意味ではこういうイベントに、アニメーションを作ってるんだといった顔で出るのにすごく気後れして、申し訳ないんですが。



※1:公共施設やキャラクターなどに対して、企業名や商品名をつけることのできる権利。日本では命名権とも呼ばれ、スポーツ・文化施設などの名称に企業名をつけることがビジネスとして確立した。劇場版第2作では、作品のサブタイトルをネーミングライツにするという企画にサントリーが賛同。同社の商品「黒烏龍茶」にフィーチャーしたサブタイトルが付けられ、ストーリー中でも黒烏龍茶が重要な役割で登場する。
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