携帯電話をかけ、その声に反応して表参道のイルミネーションが変化する「akarium Call Project」、ネットユーザーが遠隔操作し、銀座のソニービルを自分の好きな色に変えることができるソニー BRAVIA(ブラビア)「Color Tokyo!〜Live Color Wall Project」など、新しいスタイルのインタラクティブ広告として国内外で数々の賞を受賞し、高い評価を受ける作品を作り続けているのが777interactive(トリプルセブン インタラクティブ)である。今回は「アジア太平洋国際広告祭2008」から戻ったばかりの777interactiveプランナー 益田準也氏に、777interactiveの活動についてや、インタラクティブ広告の現状、国際的な広告祭を通じて感じた日本と海外の違いなどについて聞かせていただいた
第2話 イルミネーションにテクノロジーを加えた新しい表現
みんなでつくるイルミネーション
——「akarium」についてお聞かせください。
益田●「akarium」をインタラクティブなイルミネーションにしたのにはいくつか理由があります。まず、あのプロジェクトがマス広告を打つような予算がなかった。仮にマス広告を打ったとしても、GRP(Gross Rating Point)がそんなに出てこないのではないかということ。あと、クライアントがインターネットをうまく使いたいという希望があったんですね。そして、僕らの大きな課題としてはパブリシティにどれだけ乗せることができるかということでした。
当時は横浜や六本木などでもイルミネーションが開催されていて、そこではタレントやオーケストラを呼んで、ニュースになるようなイベントを展開していたんですが、そのイルミネーション合戦のなかで、テレビや報道が「akarium」を取材したくなるようにするためにはどうしたらいいだろうか? 駅張り広告を展開したり、パンフレットをつくらなくても、ほかのイルミネーションよりもテレビ局や報道の人たちが取り上げたいなと思えるようなものがつくれればいいはずだ。そうすればテレビに出やすいし、パブリシティ効果も高くなるに違いない。といったことで考えました。
最初はイルミネーションをライブ中継するとか、携帯でメールを送ったり、プッシュボタンを押すと色が変わるといったようなアイデアがあったのですが、でもそれでは、単なる操作やコントロールのデバイスにしかならないし、もっとみんなでつくるイルミネーションができたらいいなということで、声でイルミネーションが操作できるというのはどうだろうとなったのです。
表参道という場所はデートスポットだったり、若者が集まる場所なので、そこで声に反応して、あのイルミネーションが輝き出すというのがおもしろいと思ったんですね。インターネットにアクセスする必要もなくて、フリーダイヤルに電話をして「メリークリスマス!」とか「好きだ!!」と言うと、その声に1キロのイルミネーションすべてが反応するんです。そういったイルミネーションは今までなくて、おもしろいということで決定しました。
——大変なことはあったのでしょうか?
益田●あれはイルミネーション自体を僕らが開発したものではなくて、もともとでき上がっているものなんです。既存の、常設で光るコントローラーのデバイスがあって、そのプログラムをハッキングするというシステムを使ったもので、システム的にかなり苦労しましたね。あと、キャンペーン期間だけ、あそこに電話線を引いたのですが、NTTは住所がないところに電話をひくことができなくて、無理矢理商店街の方に協力してもらいました。最終的に電話はパンク状態で、パブリシティもテレビのニュースやいろいろな番組で紹介していただき大成功でしたね。インタラクティブ広告としてカンヌ国際広告祭2007銅賞、アジア太平洋国際広告祭2007金賞(サイバーロータス/モバイル部門)、東京インタラクティブ・アド・アワード2007で3部門受賞など国内外でたくさんの賞をいただくこともできましたし。
これまで受賞した数々の賞のトロフィーや賞状
誰もがスクロールしたくなるHTMLメール
——海外での評価はどうでしたか?
益田●アドフェスト(アジア太平洋国際広告祭)の審査委員長は「こんなインタラクティブの使い方は見たことがない、携帯電話を利用するという発想が日本らしい。」と高く評価していただきましたし、カンヌ国際広告祭でも、イルミネーションにテクノロジーを加えた新しい表現ということ、また、それをメディアとしてパブリシティを稼ぐという発想が日本らしいとかなり高い評価でした。
——益田さんは、ほかにどのようなプロジェクトをやっていらっしゃいますか?
益田●僕はレイクの仕事をずっとやっていて、レイクのHTMLメールは評判がいいですね。レイクではそれまでキャンペーン情報などを会員に向けてHTMLメールを送っていたのですが、実際にサービスに関係ない人にとってはあまり有効ではなかったようで、すぐにゴミ箱に入れられたりもしていたんですね。だったらキャンペーン情報の羅列は止めて、もっとみんなが気になる、最後まで見たくなるクリエイティブをHTMLメールで展開しましょう。ということで、誰もが気になる、誰もがスクロールしたくなるようなアニメーションするHTMLメールを提案したのです。
パラパラ漫画のようにスクロールすることによってイラストの男性がランニングマシンを走るアニメーションで、坂の角度が少しずつ急になって、最後にはこけて、そこに「ご利用は計画的に」とキャンペーン情報が出てくるのですが、クスッと笑える感じの作品で。結果として開封率も上がりましたし、また、これを友人に転送したりする人もいて、バイラル的に広がったりもして、おもしろがってもらえました。
(インタビュー/蜂賀亨 撮影/谷本夏)