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第5回 Webライティングの「基礎力」と「応用力」を養う - WEBライティングと文章編集の実践テクニック

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WEBライティングと文章編集の実践テクニック


文=益子貴寛 (株)サイバーガーデン 代表取締役
Webプロデューサー/コンサルタント。(社)日本能率連盟登録資格「Web検定」プロジェクトメンバー。Webデザインに関する記事執筆、講義など多 数。『月刊web creators』(MdN)、ITpro(日経BP社)、Web担当者Forum(インプレスR&D)に連載をもつ。著書に『Web標準の教科 書 ─XHTMLとCSSでつくる“正しい”Webサイト』『伝わるWeb文章デザイン100の鉄則』(ともに秀和システム)。共著に『スタイルシート・デザ イン』(MdN)、『変革期のウェブ』(マイコミ新書)など。
url. www.cybergarden.net/


第5回
Webライティングの「基礎力」と「応用力」を養う


Webライティングスキルの向上には、基礎力を固めるだけでなく、応用力を高めることが大切だ。これら両方の「力」を効率よく身につける方法と、日常生活にすぐに取り入れられるお勧めのスキルアップ術を紹介しよう。


基礎力を固めよう

Webライティングの基本的なメソドロジー(方法論)は紙媒体と大きく変わるわけではない。Webの媒体特性、たとえば双方向性の高さ、一覧性の低さ、ユーザーの思考パターンは断片的・直感的など、紙媒体とは異なる前提条件を踏まえたライティングが求められるが、それもこれも基礎力があって初めて「では、どうすればよいのか」という具体的な方針を考えることができる。

ここであらためて、Webライティングの基本的な4つの職能を考えてみよう。

1. 文章ライティング
読み手に伝わる文章を書くこと。テーマや文字数などの条件を踏まえ、構成や展開を工夫しながら着地すべきところに着地させたり、意図を明確に伝えることが求められる。漢字や送り仮名、表記法、句読点、括弧、記号のルールといった基本的な知識から、文章の論理性やエンターテインメント性など表現に関するテクニックをひと通り身につけている必要がある。

2. コピーライティング
読み手を引きつけるキャッチコピーを書くこと。コピーライティングは本来、高度な作業であり、専門家に発注する場合もあるが、日常的な作業ではキーフレーズを「順列・組み合わせ」的に使うことが、労力が少なく、かつ、効果的なコピーを量産するコツである。

3. リライティング(校正・赤入れ)
文章の赤入れや手直しなど、校正を行うこと。すでにひと通り書き上がった文章があり、そのテイストを崩さないように手直ししたり、前後文脈に齟齬がないか確認すること、規定文字数に合わせるといった作業が求められる。特定の専門分野に関する文章をリライトする場合は、本人が下調べしたり、別途専門家に確認を依頼するといった追加的な作業が発生することもあるだろう。また、企業内のWeb担当者(Webマスター)であれば、制作会社から上がってきたコンテンツのリライトなどもある。

4. 取材・インタビュー
ある物事に対しての情報を収集し、それを記事にまとめること。やや高度な職能に属する。たとえば人物インタビューの場合、通常、ICレコーダーなどで録音した内容をざっくりと文章に起こし(いわゆるテープ起こし)、構成や展開を考えて記事に仕上げる。プロット(あらすじ)は前もって決めておくのが一般的だ。文章としてまとめる力だけでなく、聞き手としてのコミュニケーション力や、対談の司会やモデレーター(進行調整役)を併せて担当する場合は段取りや仕切りのスキルが求められる。


基礎力の向上には書籍ベースでの学習が有効だ。「とにかく、たくさん文章を書くこと」をスキル向上の解としている人が少なくないが、基礎力をきちんと身につけないままやみくもに文章を書いても、成長はおのずと限界に達する。【1】にまとめた筆者がお勧めする書籍を参考に、成長の実感を味わいながら基礎力を向上させるとよいだろう。

【1】ライティングの基礎力アップにお勧めの書籍
【1】ライティングの基礎力アップにお勧めの書籍

ただ、基礎力を本当の意味で「固める」ためには、実践が必要なのは言うまでもない。日々の業務を通しての工夫と試行錯誤が、本当の意味で血肉となるスキルをその人にもたらすのである。


応用力を高めよう

次に、Webライティングの応用力、いわば労働市場で自分をより高く売るために必要なスキルとは何かを考えてみよう。Web制作現場でも分業が進んでいるとはいえ、やはり「自分の職域を広げること」がその人の価値を高めるセオリーといってよい。

特に勧めたいのは提案力の強化だ。具体的には、レイアウト提案、SEO/SEM提案、アクセシビリティ提案の3つである【2】【3】【4】。どのような職種であっても高いレベルの仕事をするには提案力が不可欠であるが、Webライティングでは特に、文章をストレスなく読んでもらえるようなレイアウトの提案、検索エンジンの評価を考えたライティングや効果的・効率的なリスティング広告の提案、単に仕組みとしてではなくユーザーリテラシーや可読性を考えたアクセシビリティ提案などができれば、非常に高いレベルの付加価値が提供できる。

【2】レイアウト提案の例
【2】レイアウト提案の例

【3】SEO/SEM提案の例
【3】SEO/SEM提案の例

【4】アクセシビリティ提案の例
【4】アクセシビリティ提案の例


これらの提案はすべて、(X)HTMLやCSSといった制作言語の一定の理解、それぞれの分野の知識だけでなくトレンドや最新情報へのキャッチアップが求められるだろう。いろいろとやることが多くてたいへんに感じるかもしれないが、スキルというのは乗数効果があり、あるスキルが別のスキルを向上させるため、ぜひ楽しみながら身につけてほしい。

その他のスキルとしては、今後ますます重要になるであろうコンプライアンス(法令順守)提案をまず挙げておきたい。特定商取引法に基づく表記、個人情報の保護指針、著作権情報、免責事項といったコンテンツ制作の際に必要な法律に基づくライティングから、販売商品によっては薬事法や酒税法などに注意したライティングが求められる【5】。

【5】コンプライアンス提案の際に知っておくべき法律
【5】コンプライアンス提案の際に知っておくべき法律


大企業であれば法務部の、中小企業であっても顧問弁護士の助力を得てこれらのコンプライアンスコンテンツを制作するのがふつうであるが、概しておよび腰で「言い訳」中心の内容になってしまったり、ユーザー訴求の視点が抜け落ちがちである。Webライティングには、コンプライアンスコンテンツに生気を吹き込むという重要な役割があるのだ。

制作チーム内のドキュメンテーション管理や支援という職務もある。企画書や提案書、見積書から、マニュアルやガイドライン、制作仕様書まで、Web制作ではさまざまな書類を作成する必要がある。ライティングスキルを磨くことで、これらの書類の実質的な監修者としてそのチームに欠かせない存在になることができるだろう。


お勧めのスキルアップ術

最後に、特にお勧めのスキルアップ術を紹介したい。うまく生活に取り入れ、Webライティングの基礎力と応用力の両方を向上させよう。

電車の中吊りを見て、どう書き換えるか考える
通勤中、電車の中吊りの見出しそれぞれを見て、自分ならどのように表現するか考えてみよう。もちろん中吊りではなく、ふだん読んでいる雑誌でも、本やテレビのテロップでも何でもよい。とにかく日常的に思考訓練することが大切だ。初めは疲れるかもしれないが、一度習慣にしてしまえば自然と頭がそのように働くようになる。1日たった10分でも、出社するのが月20日として200分、12カ月で2,400分(40時間)もケーススタディできることになる。

2,000字の文章を1,000字に、1,000字の文章を500字にしてみる
文章力のアップ、特にリライティングスキルの向上には、長い文章を短くする訓練が有効だ。2,000字の文章を1,000字に、1,000字の文章を500字にするのは、相当の工夫が求められる。特にプロが書いた文章には無駄があまりないため、不要な部分を削除するというよりは、必要な部分を残す作業が求められるが、これがよい訓練になる。本でも雑誌でも何でもよいので、適当な長さの文章を半分にする練習を繰り返すとよいだろう。

文章ルール表をつくる
漢字と仮名のルール一覧、まちがいやすい表現一覧、差別用語・禁止用語一覧など、自分なりの文章ルール表をつくるということ。この作業は少し本腰を入れ、それなりに時間をかける必要があるだろう。本や雑誌を見ながら含めておくべき項目を抽出するだけでなく、Webで情報を収集するとよい。なお、たとえば仮名遣いにはトレンド性があり、大まかに言うと、なるべく平仮名を使うようになってきているため、あまり古い本は参考にしないほうがよい。

コンテンツフォーマット集をつくる
特定商取引法に基づく表記、個人情報の保護指針、著作権情報、免責事項といったコンプライアンスコンテンツや、会社案内、お問い合わせフォーム、アクセスマップなどの補助コンテンツについて、自分なりに完璧だと思うフォーマットをつくるということ。これらはサイトによって弾力的な内容変更が必要であるが、ベースとなる部分はそう大きくは違わない。きちんとしたコンテンツフォーマット集をつくっておき、経験をつねに反映させるようにするとベストだ。


本記事は『Web STRATEGY』2006年9-10 vol.5からの転載です



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