第1話 意味のある“ものづくり”「IID 世田谷ものづくり学校」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第1話 意味のある“ものづくり”「IID 世田谷ものづくり学校」

2024.4.25 THU

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旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考プロセスを伺うとともに、創作のスタンスに迫るこのコーナー。第23回目はDonny Grafiksの山本和久氏。第1話では、IID 世田谷ものづくり学校関連の各種制作物を紹介する。



意味のある“ものづくり”
「IID 世田谷ものづくり学校」





仕事・学び・遊びが交差するリノベーション空間



統廃合された世田谷区立池尻中学校の施設を活用し、廃校跡地再生プロジェクトとして2004年にスタートした「IID 世田谷ものづくり学校」。山本氏は、このリノベーション空間に企画段階から携わり、サイン計画や各種の紙媒体、Webページなど、多くの制作物を手がけてきた。

「IIDには、プロのクリエイターが使用するオフィスと、ワークショップを催す学びの場(レクリエーション)、そこを訪問する一般の人々(パブリック)とが繋がりを持つスペースがあるのですが、そのコンセプトは、仕事と学び、遊びを深く交差させるということ。本来働くことで何かを学習したり、学ぶことと遊ぶことが同じ意義を持つケースがあったりと、3つを完全に切り離すことはできませんからね。フロアガイドなどでは、それらを機能別に色分けしました。プロフェッショナルはブルー、レクリエーションをグリーン、パブリックはイエロー。名刺でもこの3色を使用しています」

知的好奇心をくすぐる雰囲気や、じっくり本質を捉えて学ぶ意識などのイメージを、IIDのコンセプトに感じたと語る山本氏。そこで全体的にモノトーンをベースにすることで想像する余地を与えつつ、少しくすんだ色味を組み合わせることで、スローに考え行動するようなイメージに仕上げた。



積み木のイメージで構成されたロゴ



「常に、色や形の持つ意味を吟味しながらデザインするように心がけています」と語る山本氏。ロゴをデザインする際も、そのスタンスに変わりはない。

「ものを作るところから積み木のようなイメージがひらめきました。同時に建物にも見えるロゴマークにしようと思いました。このアイデアは、IIDの個性に合致したと考えています」

まさに“ものづくり”を象徴する積み木。積み木というだけあって、その組み合わせ次第で、他のマークにも様変わりする。
「ロゴと組み合わせて用いられる判子に描いた顔のマークも、ロゴを分解して積み木の要領で再構築して生み出したものです。さらに、これらを用いて、犬や象などを表現したFLASHムービーも作りました」


ニュートラルさと時代性の共存



定期的に配布されている「IID-PAPER」も、山本氏が継続的にデザインしてきた印刷物である。
「ある程度、文字を大きくしながら、あらゆる世代に手にしてもらえるようにデザインしています。デザインありきで格好をつけず、かといって、格好良さを犠牲にしたわけでもありません。普通であっても、美しいものは存在するはずですからね」

受け手を限定しないデザイン。それは、IIDが目指す方向性を、正しく体現している。

「全体的にこのプロジェクトの制作物では、瞬発力のある派手な意匠ではなく、ニュートラルだけれど“今”が感じられる方向性を目指してきました。ただ、4年間続いてきたプロジェクトですし、そろそろ遊びを増やしていける時期に差しかかっているように感じています。だからこそ、4月初旬に発行された号外“IID GREENDAY”のビジュアルでは、生態系を表現した王冠のグラフィックを用いて、やや趣が異なるものにもトライしました」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)



次週、第2話は「ピクトグラムの可能性」について伺います。こうご期待。






●山本和久(やまもと・かずひさ)
多摩美術大学卒。フラミンゴ・スタジオを経て独立。CIからエディトリアルデザイン、Webデザインまで幅広い分野を舞台にして活動。代表的な仕事には、IID(世田谷ものづくり学校)のアートディレクション、IDEEのカタログデザイン、「ビンタ本」(幻冬舎)の装丁などがある。メッセージの本質を見すえ、最小限の要素で訴求するピクトグラムなどには定評がある。
http://www.donnygrafiks.com/

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