旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考プロセスを伺うとともに、創作のスタンスに迫るこのコーナー。第24回目はドラフトの植原亮輔氏。第1話では、ファッションブランド「THEATRE PRODUCTS」にまつわる印刷物を紹介する。
バリエーションの意味
「THEATRE PRODUCTS」インビテーションほか
「劇場的」がキーワードのファッションブランド
服を着たときに生まれる「時間」と「空間」。その空気感を「劇場的」と捉えファッションに取り組んでいるブランド「THEATRE PRODUCTS」。植原さんは、このブランドのインビテーションやポスターをはじめとしたさまざまな印刷物に携わっている。
「THEATRE PRODUCTSのコミュニケーションに関わる印刷物を全般的に手がけています。2002年の春にインビテーションの制作を依頼されたのが最初で、そのときは予算的には潤沢ではなかったものの、普通のハガキに仕上げるのは避け、B3のボール紙に1色で落書きのような絵を描き、それを分割すると1枚ずつのハガキになるような工夫をしました」
ブランドのロゴは、あらかじめ先方が用意したものを使用。植原さんは、このロゴを積極的に前面に登場させている。
「ひと目見て、これは格好良いと感じたのです。だから、手は加えるまでもなく好んで使用しています。このロゴには強さと華やかさがあるんです。ただし小さく配置すると見栄えが良くないので、極力大きく扱うようにしています」
「ひと目見て、これは格好良いと感じたのです。だから、手は加えるまでもなく好んで使用しています。このロゴには強さと華やかさがあるんです。ただし小さく配置すると見栄えが良くないので、極力大きく扱うようにしています」
七変化を見せるバリエーション
その後も、2色のみの配色で規則的なモチーフのグラフィックを配したり、ときには実写の画像を盛り込んだりと、多種多様なビジュアルを提案してきた。たとえば、シンディ・ローパーをテーマに開催された2008-2009A/Wコレクション「CYNDI(シンディ)」のインビテーション。ここでは黒とピンクを基調にしながらポイントとして金を取り合わせた。
「THEATRE PRODUCTSでは、女性をターゲットにした商品が主流なので、華やかでありながら甘すぎず、媚びないことを心がけています。とはいえ、必ずしも全体的な方向性が明確なわけではありません。ベースとなるコレクションのテーマによって、必要とされるトーンは大きく変化するため、必然的に多くのバリエーションが生まれてきたのです」
“何を伝えたいか”が大切
ほかにもニスの違いによる質感の使い分けや、オペーク黒インキの活用など、さまざまな場面で印刷テクニックを駆使。その豊富なアイデアには驚かされるが核心的なポイントはほかにある。
「表現って何でもありだから、重要なのは“何を伝えたいか”だと思うのです。すると制作前のプレゼンテーションの段階で、クライアントの気持ちを掴むことが何よりも大切になるのです」
「表現って何でもありだから、重要なのは“何を伝えたいか”だと思うのです。すると制作前のプレゼンテーションの段階で、クライアントの気持ちを掴むことが何よりも大切になるのです」
THEATRE PRODUCTSの仕事をスタートした当初は「まるで問診するかのように、先方の意図を読み取ろうとしていた」と語る植原さん。同時に、強い共感を覚える彼らの作品を前に、「どこか自分にも通じるものがあるはずだ」と直感したそうだ。
「僕はクリエイターと組んで仕事することが多いのですが、そこでは言葉ではなく、作品を介したコミュニケーションが成立することも多いのです。ファッション関連の仕事では、特にそういった傾向が強いように感じます。アーティスト気質の方がほとんどですからね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「僕はクリエイターと組んで仕事することが多いのですが、そこでは言葉ではなく、作品を介したコミュニケーションが成立することも多いのです。ファッション関連の仕事では、特にそういった傾向が強いように感じます。アーティスト気質の方がほとんどですからね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第2話は「2次元と3次元の狭間」について伺います。こうご期待。