土曜。友達の誕生会へ。

朝からすごい勢いで掃除、洗濯。時間を忘れて、がむしゃらになってやる。何も考えないですることは、何だか気持ちがいい。

渋谷にひとりでヘンリー・ダーガーの映画『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』を見に出かける。その孤独さに打ち震える。去年、品川・原美術館の「ヘンリー・ダーガー展」で作品を実際に観る機会があった。この映画を観る前に、作品を観ておいて本当に良かったと思う。友達も、家族もいない、誰にも評価を求めないで描き続けた作家、ヘンリー・ダーガー。想像しようにも、想像ができない。一歩間違えれば、ゴミとして捨てられていたかもしれない作品たち。そのように捨てられた作品がどのくらいあるだろう……。

約束の時間に合わせて、駅へと向かう。今日は、お友達のお誕生日のお祝いをすることになっているのです。ケーキを買って、バスに乗って向かう。

バスを降りて、お店へ。もう既にみんなが集まっているというので、急ぎ足です。お店は、最近、話題になっているしゃぶしゃぶ屋さん。待ってくれてたみんなの顔が見える。「もぉ遅いよー！　肉、肉！」なんて顔をしている。

このしゃぶしゃぶ屋さんは、ブタのお肉をしゃぶしゃぶしながら、水菜やお豆腐と一緒に、天つゆのようなウマいタレにつけて食べるスタイル。変わった鍋を使っていたりして、面白い。さらに素敵なのは、このお店の名物ともいえる奥さん。コッテコテの大阪弁で、私たちの拙い手つきを見るに見かねて、どんどんリードしてくれる。

私が「灰汁かな？」と思って泡の固まりを取ろうとすると、友達が「それはコラーゲンかもしれないから、取っちゃダメ！」と咎める。「嘘!?　コラーゲンって泡なの……？」と、やってきた奥さんがそのコラーゲンかもしれない泡の固まりをどんどん取っていく。「やっぱりね！ これは灰汁ですよね！」と得意気になって言うと、「知らん！　灰汁かもしれんし、コラーゲンかもしれん」「えーーー！ 知らんて」「灰汁かも知らんけど、“アク”って名前が嫌やよな。悪みたいやない？　もっとエエ名前なかったんかな」「じゃあ、“良し”とかは？」「おーいいね！ 　ほな、これからは“ヨシ”と呼ぶことにするわ！」。満腹になって、お店を出る。

「テキーラが飲みたい」とひとりが言うので、スペイン料理屋さんに移動しようと、みんなでテクテク歩く。が、お店が満席だというので、ひとまず、違うお店で時間を潰しながらちびちび飲む。古い日本家屋を改築したようなお店の２階に通してもらう。家に帰ってきたみたいで、みんなホッコリしてしまう。

用意してきたプレゼントを今日の主役、お誕生日の男の子に渡します。私からはツインのハート型のアイスクリームスプーンを。なぜこんな可愛いプレゼントを男の子に用意したかというと……実は、彼には今月、人生をかけたビックイベントが控えているからだ。30歳を迎える彼。４年間片想いを続けてきた女の子に、ついに告白するという。その前祝いとして用意したプレゼント。「こんなのプレッシャーじゃん。ダメだったとき、どうするの！」と敬遠される。けれど、私は何故かうまくいくと確信している。

スペイン料理屋さんに移動。個室に通していただく。マンゴージュースにテキーラを混ぜて、シャーベット状にしたものをピッチャーで頼む。私たちの大好物。決まってこれを頼む。そしてその飲みやすさに、調子に乗ってたくさん飲んで、いつもヘロヘロになる。1年を通して、順番に行われるこのお誕生日会は、私がヘロヘロになれる数少ない場所のひとつです。何にも気にしない場所というのは、年々少なくなっているように思う。

歌って、踊ったあとの帰り道、途中まで一緒のお友達とテクテク歩く。月明かりの中、フワフワして歩く。こうして歩くのも、あと何回くらいあるのかなーなどと話しながら歩きます。みんな結婚したり、子供ができたりしたら、こうはしてられないよね……としみじみする。

食べ過ぎ、飲みすぎの日は、歩いて帰ることにしているので、自宅まで1時間かけて帰ってきました。