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第1回 Webサイトはクライシス対応のための有力メディア

2024.4.20 SAT

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榛沢明浩のWEBトレンドナビゲーション


AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第1回
Webサイトはクライシス対応のための有力メディア



ライブドアの信用低下が止まらない。堀江容疑者をはじめとする主要な旧経営陣は起訴され、株式は上場廃止となった。USENの宇野社長が支援を表明しており、その内容次第ではブランドイメージの低下に歯止めがかかるかもしれないが、今後の展開次第では逆にUSEN自身の企業イメージが危機に陥る可能性も否定できない。

ライブドアの場合は悪質な例といえるかもしれない。しかし、ことさらに故意や悪意がなくても、企業が社会と接点を持つうえで、さまざまなトラブルに直面することは避けられないのではないだろうか。重要なことは、事件・事故に遭遇したときに、企業のブランドイメージに致命的なダメージを受けないためのクライシスマネジメントである。


迅速な対応と情報開示が重要

2000年6月14日午前9時、参天製薬に製品に異物混入するという脅迫状が届けられた。同社はその日の午前中に警察に届け、検討チームを発足させて対応策を検討した。森田社長は全品回収することを決断、その日の夕方には記者会見を開いて事実関係を公表した。ほかの目薬メーカー、ロート製薬と武田薬品工業も同時期に同様の脅迫を受けたが、各社ともすばやい対応で対策を検討し、事実関係を公表した。各社は製品回収などで一時的な損害は被ったが、何よりも大切な会社の信用を守ることに成功した。

対照的に、同年6月から7月にかけて発生した雪印乳業の食中毒事件、同年8月強制捜索に至った三菱自動車のリコール隠し事件では対応が後手後手に回り、情報開示面でもなかなか事実を認めようとしなかったことがイメージ低下に拍車をかけた。


徹底した対応によりブランドを守った松下電器

昨年1月から4月にかけて、ナショナルのFF式石油温風機で事故が発生し、11月29日には経済産業省から消費生活用製品安全法第82条に基づく緊急命令を受けた。年末商戦を控えた重要な時期であったにもかかわらず、テレビや新聞のCMをすべて回収・点検に関する告知に切り替え、配達地域指定冊子郵便を利用して全世帯に告知を送付、Webサイトで一連の活動の実施報告を行うなど、徹底した活動を行った。

私どもの会社で独自に実施した企業イメージ調査によれば、同社を含む各社の企業イメージを事故の告知が大々的に行われる前の昨年10月と告知が行われたあとの1月の間で企業イメージの目立った低下は認められなかった。特に「個人として製品を購入したいと思うか」という人は今年1月時点でも半数を超え、消費者からの強い支持が認められた。


Webサイトの情報が共感を呼ぶ雪印

一連の事件によってブランドイメージが失墜した雪印であるが、そのあとは信用回復のために経営改革、品質保証体制の充実、企業行動基準の策定、お客様センターの見直し、「雪印体質を変革する会」、「お客様モニター制度」、「酪農家・生産者の方々との対話会」を通じた企業風土改革への取り組みなど、地道な活動を続けてきた。これら一連の活動は同社のWebサイトにアップされている【1】。

【1】雪印乳業の取り組みを示したページ(www.snowbrand.co.jp/torikumi/)
【1】雪印乳業の取り組みを示したページ(www.snowbrand.co.jp/torikumi/


グラフ【2】は雪印乳業のWebサイトを閲覧する前後でどのように企業好感度が変化したかを示したものである。Webサイトを通じて消費者が同社の活動を知ることによって、好感度が大幅に改善されている状況が示されている。マスメディアは事故直後には盛んにその企業のことを取り上げるが、その後時間をかけて企業が信頼回復のために取り組む活動を逐次報道することはあまりないように思う。このようなときに、「その後どうなったのだろう」という消費者の素朴な疑問に答えてくれるものとして、企業が自主的に情報開示を行うことができるメディアであるWebサイトはもっとも適したものであるといえるだろう。

【2】雪印乳業の企業好感度が変化のグラフ。好感度の数値は好感を持つ人の割合から持たない人の割合を引いたも(データ:日本ブランド戦略研究所「企業情報サイト調査2005」より)









【2】雪印乳業の企業好感度が変化のグラフ。好感度の数値は好感を持つ人の割合から持たない人の割合を引いたも(データ:日本ブランド戦略研究所「企業情報サイト調査2005」より)


本記事は『Web STRATEGY』2006年5-6 vol.3からの転載です



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