第1回 成功につながるプロモーションの発想法 - WEBクロスプロモーション講座 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第1回 成功につながるプロモーションの発想法 - WEBクロスプロモーション講座

2024.4.19 FRI

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ビジネスゴールを達成するクロスプロモーションについて考える
WEBクロスプロモーション講座

株式会社MI
経営企画室部長 兼エグゼクティブプロデューサー
前島俊樹


第1回
成功につながるプロモーションの発想法


Webが企業活動におけるプロモーション媒体としての役割を果たすようになって数年がたった。この記事では、Webプロモーションの現状を整理しながら、ほかの媒体と有効的に連携し、より効果的なプロモーションを行うための方法論を紹介していきたいと思う。

メディア・ツールとしてのWEBの変化

Webという言葉を耳にするようになってから約10年になる。ただし、それは特定の業界の人たちにとってであり、一般ユーザーを対象に考えると実質的に5年ぐらいのことであろうか。日本で新聞が創刊さたのが約130年前、テレビ放送が開始したのが約50年前であることと比べると、10年のメディアなんておじいちゃんと孫ぐらいの経験・実績の差である。

ただ、この10年という短い期間に、Webの位置づけも様変わりし、Webプロモーションのあり方もまた大きく変化してきた。この大きな変化の要因は、Webのインフラ環境が未成熟であったことにもよるが、それ以上にWebというメディアの特徴が影響しているのではないかと考えられる。つまり、Webがフレキシブルなメディアであり、ツールであるために、その時々でクライアント、エンドユーザー双方のニーズに対応できてしまったと考えられるからだ。

おそらく、Webを活用したプロモーションは、今後もダイナミックに変化していくだろうし、より効果的に実施するためには、ほかのメディアとの連携も避けて通れないだろう。ニーズの変化が大きければ大きいほど、連携するメディアが増えれば増えるほど、Webの特徴が生かされていくはずだし、近い将来Webが、必ずプロモーションの中心になっていく。それは本誌の読者のほとんどの方が感じていることだろう。

最近では、『テレビ+Web』『雑誌+Web』など単体での組み合わせ事例を目にすることが多くなってきた。ただし、クライアントの最終ゴールとなる収益アップを実現するためには、単体の組み合わせのみでは多くの課題があるといえる。複数のメディアを連携したクロスプロモーションがカギとなってくるのである。

ではいったい、クライアントの期待にこたえるWebプロモーションとは何なのか? それをこれから考えていきたいと思う。

まず今号では、次の3点についてまとめてみようと思う。

・Webプロモーションの変遷
・Webにはふたつの顔がある(Webの特徴)
・クロスプロモーションの組み立て方


次号以降では、事例も含めながら、各メディアとの具体的な連携方法について考えてみる予定だ。


WEBプロモーションの意識の変遷

持っていることが価値の時代からアクセス数競争の時代を経る
Web黎明期、ほとんどの企業にとってWebサイトは、持っていること自体が価値とされていて、実際の機能や効果についての期待値は皆無であった。「ホームページっていうものを持ってると、先端の技術に関心があるように見えるだろう。ないよりはあったほうが株主に受けもいいだろう」といった程度の認識だった。当然社内の位置づけも低く、担当部門も「コンピュータ関係だからとりあえず情報システム部で」とか、「パソコンが趣味だから○○君にやらせておけ」と、頼むほうも任されたほうもすっかり片手間状態である。当然、Webプロモーションなんて意識もなく、完全なコストセンターだった。

各社がWebサイトを持ち始めると、今度は競合社よりも少しでも多くの人に見てもらうことが目的となってきた。そのころ、今では懐かしいが、トップページにアクセスカウンターを貼るのがはやっていたのを思い出す。担当部署も広報部が中心となり、より多くの人にメッセージを伝えていくことに注力し始める。メディアとしての力は小さいながらも、相互リンクやバナー広告など、少しずつWebプロモーションという概念が生まれてきた。効果検証の軸はPV(*1)やUU(*2)が中心だったが、既存メディアと違い効果が数値化されやすいという特性を理解し始めてくる。

これからは“Webの効果”から“ビジネスでの効果”に要求が移る
ブロードバンド化の追い風もあってインターネットユーザーが拡大してくると、企業もメディアとしてWebの活用方法を考え、目的ごと(商品販売、IR活動、キャンペーンなど)にWebサイトを開設し始める。目的が違うので当然、担当部署、メディア、効果検証軸も異なっている。企業のリテラシーも高くなり、担当部署はマーケティング、営業、宣伝などあらゆる部門に広がり、出稿するメディアもポータルサイトへのバナー広告中心からターゲットやゴールを意識した出稿(SNS、オプトインメール、ブログなど)が増え、効果検証軸もCTR(*3)やCVR(*4)などより対効果を意識したものに移行してきた。おそらく、現状大半の企業がこのステージにいると考えてまちがいないだろう。

Webがメディアとして十分認知され、今後、企業の要求はアクセス数などWebでの効果から、利益を意識したビジネスでの効果に移っていくはずだ。すでに、先端を走っている企業では、経営企画部門や専門のWeb戦略部門などを中心に、Webを活用したビジネスゴール達成を模索している。また効果検証軸もROI(*5)やCPO(*6)などに置いて、より精度の高いプロモーションを求めている。クライアントのビジネスゴール達成のために、われわれが提供できる施策として、クロスプロモーションが現時点でのもっとも有効な手段であると考える【1】。

【1】Webプロモーションの大まかな変遷
【1】Webプロモーションの大まかな変遷


*1 PV(ページビュー):Webサイトのページが閲覧された数
*2 UU(ユニークユーザー):サイトを訪問した人数
*3 CTR(クリックスルーレート):広告の表示数に対するクリック数の割合
*4 CVR(コンバージョンレート):訪問者数に対する目的達成数(購入や資料請求など)の割合
*5 ROI(リターンオンインベストメント):投資対効果
*6 CPO(コストパーオーダー):目的達成1件当たりの単価


WEBにはふたつの顔がある

Webの特徴を4つに分けて考える
まずは、Web(メール、モバイルを含む)の特徴を整理してみる。

(1)場所や時間に影響されにくい
(2)ユーザーが能動的に情報に向かっている
(3)双方向でのコミュニケーションが可能である
(4)ユーザーの行動やプロモーションの効果がデータとして蓄積できる


上記の項目を大きく分けると、(1)から(3)は「メディア」としての特徴である。

(1)については、テレビ、ラジオ、イベントなどは特定の時間や場所に影響されるが、Webはその影響を受けづらい。(2)については、ユーザーの能動的な意思でサイトにアクセスする(検索する、バナーを選択するなど)ため、ひとつひとつの行動の濃度が高い。(3)については、フォーム、メール、チャット、SNSなどを活用することによりユーザーから配信者へのリアクションが可能である。これらの特徴は、プロモーションのターゲットや目的に合わせてメディアを選定する際に検討すべき要素となってくる。

(4)は『プラットフォーム』としての特徴である。Webはユーザーの行動や属性、プロモーションなどをデータとして蓄積が可能なため、データベースを通して各メディアとの連携をより有効にしたり、ログ分析ツールを活用して効果検証が可能となる。この機能は、ほかのメディアにはないWeb独自の機能であり、大きな武器となってくる。

Webのふたつの機能メディアとプラットフォーム
Web業界に携わっているみなさんからすれば、「何を今さら」と言われてしまうような当たり前のことだと思う。Web業界では当たり前かもしれないが、これから接していくであろうほかの業界や、Webの特性を理解していないクライアントにとっては新鮮なことかもしれないので、ここであらためて確認してみた【2】。

【2】メディアとプラットフォーム
【2】メディアとプラットフォーム


メディアとしてユーザーとの情報窓口となる機能と、プラットフォームとして各メディアのデータを蓄積する機能をもっていること。今後、Webがクロスプロモーションの中心となっていく理由がここにあるのだ。“Webにはふたつの顔がある”。この先もっとも重要なキーワードとなってくるので、忘れないでほしい。


クロスプロモーションの組み立て方

Webがいちばんではないポジションを冷静に確認しよう
前項までに整理したWebの特徴を見て、今後、クロスプロモーションの中でWebが中心となっていく理由は、ある程度理解できたかと思う。

ここで勘違いしてほしくないのは、あらゆるメディアの中でWebがいちばんであると言っているわけではないことだ。テレビやラジオなどのマスメディアがなくなるとも思わないし、交通広告やDMよりWebが上だと考えているわけでももちろんない。あくまでも機能上の中心になるという意味であり、媒体は目的やターゲット、シチュエーションに合わせて選定すべきであることは、言をまたないであろう。なぜこういう言い方をするのかといえば、Web業界を長く見てきて感じるのは、Webに携わる人たちが、熱狂的なWeb信者であるケースが多いからである。

もちろん、自分が携わっている仕事だから好きであることはすばらしいことだし、誇りを持つことも必要であると思う。それでも、客観的に、Webのポジションをとらえる冷静さも持ち合わせてほしい。クロスプロモーションを進めていくうえではなおさらである。Webの特徴、ほかのメディアの特徴を客観的に把握したうえで、プランニングしなければ、ビジネスゴールへの到達にはつながっていかない。各メディアの特性については、次号以降で詳細に解説していこうと思う。

今回はクロスプロモーションの組み立て方に関してまとめてみたい。

ゴールを明確にする
まずはじめにしなければならないのは、ゴールを明確にすることだ。これはWeb制作にも共通することだと思うが、プロジェクトのゴールが明確でないと、成功・不成功の判断もつかないし、Webの特徴である効果検証の軸ができないからだ。最低でも以下の内容を明確にし、クライアントや他メディア担当者と共有しよう。

・ビジネスゴール(売上、資料請求数、会員獲得数など)
・ターゲットユーザー
・予算


メディアを選定する
前項で決まったビジネスゴールやターゲット、予算を加味して、メディア選定に入っていく。効果的な選定のポイントは、各メディアの特徴を理解することである。下記に大まかな特徴を挙げてみる。

・マスメディア:テレビ、ラジオ、新聞、雑誌
・紙メディア:DM、POP、チラシ、パンフレット
・その他:イベント、コールセンター、看板、交通広告、パブリシティ


マスメディアは広く多くの層にリーチでき、影響力も大きいが、特定のターゲットに向けたプロモーションは難しく、予算規模もかなり大きくなってしまうため、中小規模の企業にとっては負担が大きい。

紙メディアは、ターゲットの手元に広告物が残ることから、内容をじっくり理解してもらうには有効であるが、印刷や配送などの時間がかかるため、即時性に乏しいのが難点となる。

そのほかのメディアでいうと、イベントやコールセンターはONE-TO-ONEのコミュニケーションができることから、興味を抱いているターゲットへのクロージングには有効だが、興味の薄いターゲットには敬遠される可能性も大きい。

どのメディアを利用するかは、プロモーションの過程でユーザーに求めるアクションに応じて選定することが重要である。『見てもらう・興味をもってもらう』『理解してもらう』『決定してもらう』『感想を聞かせてもらう』それぞれのアクションにおいて、最良と思われるメディアを組み合わせていくべきだ。各メディアでの結果をデータ化する手段も事前に検討しておこう。

効果を測定をする
メディアが決まり、プロモーションの開始に合わせて効果測定もスタートしていく。Webメディアを使っている場合やデータ連携性の高いコールセンターを利用している場合などは、プロモーション期間内であっても、効果次第でバナーのデザインやコピーを変更したり、オペレーターのトークスクリプトを変更するなどの施策を打っていくことができる。プロモーション終了後、すべてのメディアの結果を集計し、事前に明確にしているゴールに対しての効果検証を行う。ここまでで、プロジェクトにおけるプロモーションの役割が一段落ついたことになる。ここで、一例としてクロスプロモーションのメディア選定例のフローずを示すので見てもらいたい【3】。

【3】クロスプロモーションのメディア選定例。ビジネスゴールは「化粧品のサンプル送付5000件と、知名度アップ」。ターゲットは「30~50代女性」。予算は「8000万円」
【3】クロスプロモーションのメディア選定例。ビジネスゴールは「化粧品のサンプル送付5000件と、知名度アップ」。ターゲットは「30~50代女性」。予算は「8000万円」


以上、こういった流れをしっかりと踏んでいくことで、リスクは確実に下がる。そして、効果測定ができることで先々の施策のためのノウハウもたまっていく。Webの活用によってプロモーションの精度は確実に上がるのだ。あとはプロジェクトに真摯に向き合う姿勢と、経験を重ねることでクライアントから信頼されるパートナーへの道が約束されるだろう。

本記事は『Web STRATEGY』2005年 創刊号 vol.1からの転載です
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