第1回 2時間でつくり上げられる!“空メール+クーポンシステム”を実践 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第1回 2時間でつくり上げられる!“空メール+クーポンシステム”を実践

2024.4.20 SAT

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中小事業者もケータイ環境を利用して事業効率アップを!
ケータイビジネス研究室

企画・文=針野信司
コンテンツプロバイド会社、ハリヤ出版企画代表。雑誌記事の編集、執筆、中小事業者のサイト運営支援コンサルティング、プログラム構築などを行っている。最近のプロデュース企画は、『ケータイでラクラクおこづかい』(メディアボーイ刊)がある。
url. www.hariya.co.jp/


第1回
2時間でつくり上げられる!
“空メール+クーポンシステム”を実践


ランチの定食をクーポンで100円引きにしてリピーターを増やす。雨の日にクリーニング料金割引メールを配信して受注の谷間をつくらない。スーパーマーケットがライバル店のチラシを朝見て、同様の商品を他店の割引価格以下にして顧客にメールで知らせる。そんなことがケータイサイトを構築すれば簡単にできてしまうのだ。


▼▲今こそケータイサイトによるビジネス拡大のチャンス▲▼

ケータイをビジネスに活用というと、「結構金がかかるんでしょ? ウチみたいな中小には無理」とか「ランニングコストに見合う収益効果あるの?」という声がよく聞かれる。この連載では、そんな声に応えるべく、中小事業者でも無理なく実行できるケータイ活用法を紹介していきたい。

ケータイサイト利用者が増えているのに
参入できないのはなぜか

あらためて書くまでもないだろうが、パケット料金定額制導入後、ケータイを利用してインターネット接続する人が急増していることは読者も十分に認識していらっしゃるはず。しかし、IT関連以外の事業者が、ケータイサイトを利用してビジネス効率を向上させている事例はいまだ非常に少ないことは、弊誌14号の第1特集「ケータイマーケティング最前線」でも触れていたとおりだ。

商品やサービスの宣伝に適した訴求の場があるのに、多くの事業者はそこに乗り出そうとしていない。ITに詳しいスタッフをそろえる大企業でさえもそうなのだから、中小の事業者はもっと乗り遅れているといっていいだろう。前号の特集でも指摘されていたが、予算権限を握っている人間がケータイサイトの運営に理解を示さない傾向が強く、それゆえに若手が熱弁をふるいケータイサイト運営の重要性を説いても、なかなか運営強化にGOサインが出ないのだ。

ケータイサイト運営に予算がついたとしても、その額はわずかであり、ケータイ独自の機能を生かした「即時性」、「移動時にもアクセスができる特性」、そして、一度でもメールアドレスやケータイの端末IDを取得してしまえば「顧客の嗜好性の定点観測ができる特性」などを生かすために、PHPやCGIにより空メール機能などを組み込んだ“動的サイト”をつくることは許されない傾向にある。その結果として、自社商品やサービスをカタログ的に並べる、PCサイトの自社紹介ページのようなものしかできあがってこないのである。

ただ、中小事業者の場合は、ケータイマーケティングの重要性に気づいていても、なかなか本格的に乗り出せない理由があるのだろう。「ケータイサイト構築に多額の費用がかかる」、「自分でつくろうとしてもPHPやCGIなどプログラミング言語がわからないから、現実的にサイト構築できない」と思い込んでいる傾向があるからではないか? 実は「QRコード+空メール」による集客ができる「ハリボテ」次元のケータイサイトなら、専門知識がない人でも、たった2時間ほどの作業で費用もほとんどかけずにつくり上げることが可能なのだ。

飲食店、クリーニング店……
中小事業者もケータイサイト活用を

そして、それを実現させてしまえば、次のようなことが現実的にできるようになる。

ランチのリピーターを増やしたい飲食店であれば、ランチ100円引きクーポンを配布し、それを利用した人のメールアドレスを取得可能。メールで逐次、ランチ情報やクーポンなどを配信すれば、リピーター率が高くなる期待が持てる。クリーニング店であれば、雨が降って来店者が少ないときなどに「雨の日割引メール」を出せばいい。理髪店の場合は組合の縛りもあって難しいかもしれないが、美容院の場合は来店者の少ない曜日に、オプション割引メールなどで顧客の来店動機を高めることもできるはず。

小型スーパーならば、朝一で新聞の折り込みチラシをチェック。ライバル店が割引している商品をそのチラシ以下の価格にしてしまい、開店前にメール送信する。在庫の関係もあるかもしれないが、先着○○名まで、などとすれば十分他店(チェーンの大型店も含めて)の顧客を奪うことが可能になるかもしれない。

大企業の場合は、ケータイマーケティングの重要性に気づいた人が、予算権限を持っている人間に事例を示し、根気よく説得を続けるしかないだろう。だが、中小事業者の場合は別。予算や時間をかけずにできるのならば、すぐにでもケータイサイトを構築すべきだと筆者は考える。

ここに書くことはWebサイトの専門家が読むとバカバカしくて笑ってしまうような内容かもしれない。だが、中小事業者にとってみれば、目からウロコ。「え、うちもクーポンで集客ができるの?」と、ビックリするようなことであるはずなのだ。

サイト構築のプロと中小事業者
双方にビジネスチャンスを

Webサイト構築のプロと中小事業者には「常識の乖離」がある。中小事業者は空メール+SQLの機能を導入するだけでも、大きなハードルを越えなければならない。Webサイト構築のプロならば、試しに空メール機能のCGIパッケージがいくらで販売されているのかを検索してみるといい。高額なのである。ここでは広告付きや、自社のサーバ内では使えないレンタル型の空メール機能を取り上げるが、この分野だけでも大きなビジネスチャンスがあるはずだ。それに気づけばWebサイト構築のプロが、中小事業者向け廉価版のケータイサイト構築パックなどを大量に販売することも可能だろう。

一方で、中小事業者は予算が許されないならここに記すような「ハリボテ型」であっても、自社の売り上げが増すような仕組みを取り入れていけばいい。そこで売り上げを上げていけば、状況に気づいたWebサイト構築のプロが、次々と格安のパッケージプログラムやソリューションサービスを提供してきたときに、それらを利用すればいいのである。

この連載はWebサイト構築のプロと中小事業者の乖離を埋め、双方にビジネスチャンスをもたらす状況をつくり上げていくことを目指していくものである。

さて、では中小事業者でもすぐに導入できる「ハリボテ型の動的ケータイサイト」構築の実践編である。


▼▲クーポン配信できるケータイサイトをすぐに構築▲▼

サイトアドレスは何でもいい
HTMLはほかからコピーする

サイト制作の本には必ず記載されていることであるが、サイトレンタルスペースとHTML、FTPについてもここで簡単に触れておきたい。

サイトレンタルスペースは、プロバイダが用意しているものでかまわない。多くのインターネットユーザーは、プロバイダが用意しているレンタルスペースを活用しないままになっているのではないだろうか。それを活用しない手はないのだ。万が一、プロバイダにそのようなサービスがない場合は「FC2」の無料レンタルサーバを使えばいい【1】。申し込みと同時に使えるし、広告も挿入されることはない。

【1】FC2のサイト(web.fc2.com/)。登録はこの画面から可能で、サイト作成も即可能。無料でしかもサーバ容量は1GB。広告も入らない。そのほかにも格安レンタルサーバはあるが、無料ならばそれに越したことはない
【1】FC2のサイト(web.fc2.com/)。登録はこの画面から可能で、サイト作成も即可能。無料でしかもサーバ容量は1GB。広告も入らない。そのほかにも格安レンタルサーバはあるが、無料ならばそれに越したことはない


ここで「サイトをつくるなら、わかりやすいドメインを取得しなければならないんじゃないの?」と、PCサイト構築のノウハウが気になる人がいるかもしれないが、それは無用。ケータイでアドレスを決め打ちする人はほとんどいないし、のちに触れるQRコードがサイトアクセスを容易にしてくれるからだ。

さて、ケータイサイトの内容を表示するHTMLであるが、これはほかのケータイサイトのHTMLをコピーしてカスタマイズすればいい。ちなみに【2】は私の会社のサイトに掲載している。ブラウザで閲覧→ツールバーの「表示」から「ソース」をクリックし、必要なところを書き換え、自由に使っていただいて結構である【3】【4】【5】。

【2】レストラン用のケータイサイトのひな型(www.hariya.co.jp/mobilecampain/)。ブラウザで閲覧し、ソースを表示させれば、HTMLがコピーできる






【2】レストラン用のケータイサイトのひな型(www.hariya.co.jp/mobilecampain/)。ブラウザで閲覧し、ソースを表示させれば、HTMLがコピーできる

【3】QRコードから最初にアクセスできるページ(www.hariya.co.jp/mobilecampain/welcome.html)。このページに【4】のページへのリンクを張る。ほかのページからのリンクは切っておき、顧客のアクセスは最初の1回だけにするm





【3】QRコードから最初にアクセスできるページ(www.hariya.co.jp/mobilecampain/welcome.html)。このページに【4】のページへのリンクを張る。ほかのページからのリンクは切っておき、顧客のアクセスは最初の1回だけにする

【4】QRコードからの最初の入り口である【3】のリンクからアクセスできるクーポンのページ。TOPページへのリンクを張り、そこをブックマークしてもらうように促す





【4】QRコードからの最初の入り口である【3】のリンクからアクセスできるクーポンのページ。TOPページへのリンクを張り、そこをブックマークしてもらうように促す

【5】週1回変更する日替わりランチのページ。ここでもクーポン機能が使えるようにする





【5】週1回変更する日替わりランチのページ。ここでもクーポン機能が使えるようにする


HTMLが作成できたら、FTPクライアントを使ってサーバにアップ。FTPクライアントは「FFFTP」などの定番フリーソフトをベクター(www.vector.co.jp/)などからダウンロードし、プロバイダやレンタルサーバ業者から送られた仕様どおりに設定し、アップロードすればいい。それで、中小事業者の“静的”ケータイサイト構築までは完了だ。

空メールは無料、格安業者を
クーポンはこまめに入れ替える

さて、ここまでだとケータイ独自の特性を生かしたサイト機能は使えない。クーポンや割引情報をメールで送信し、顧客のリピート率を上げるためには、どうしても空メールを利用したサイトアクセス、メールアドレス収集が必要となる。空メール機能を独自に搭載するとなると、perlなどの言語でプログラムを構築するか、パッケージソフトを購入するなどしなければならないが、ここでも空メール機能を無料あるいは格安でレンタルしてくれる業者が利用できる。「レン空」や、「モバリ」(my.mobari.jp/)などの業者が提供するサービスだ【6】【7】。

【6】「レン空」のサイト(mail.r23.jp/)。ここから利用登録すれば、空メール機能が即座に使えるようになり、空メールを利用した人のメールアドレスもCVS形式でダウンロードできる
【6】「レン空」のサイト(mail.r23.jp/)。ここから利用登録すれば、空メール機能が即座に使えるようになり、空メールを利用した人のメールアドレスもCVS形式でダウンロードできる

【7】「レン空」の管理画面。何月何日何時何分に、どのメールアドレスの人が利用したのかがデータベース化されている。このメールアドレスをメーラーに記録していけば、お店のクーポン付きなどのメールマガジンを顧客に送ることができる
【7】「レン空」の管理画面。何月何日何時何分に、どのメールアドレスの人が利用したのかがデータベース化されている。このメールアドレスをメーラーに記録していけば、お店のクーポン付きなどのメールマガジンを顧客に送ることができる


レン空を例にすれば、リクエスト返信メールにレン空側が広告を挿入する代わりに、利用料金は無料(広告なしの有料コースもある)。顧客にはレン空側が提供するメールアドレスにメールを送信してもらい、返信文にクーポンが掲載されているリンクアドレスバーを張っておく。顧客はアドレスバーをクリックすれば、クーポンが得られる仕組みになっている【8】。


【8】「レン空」から顧客に送られてくる返信メール。アドレスをクリックすると【3】の画面が現れる
















【8】「レン空」から顧客に送られてくる返信メール。アドレスをクリックすると【3】の画面が現れる


たとえば、レストランや定食店を営む場合、テーブルの上に空メール送信画面にリンクするQRコードをポップなどの形で置いておけばいい(QRコードの作成も、ベクターなどで配布されているフリーソフトで簡単にできる)【9】。「今の会計もレジでこの画面を見せるだけで100円引きです!」などという宣伝文句を添えておけば、利用頻度はきわめて高くなるだろう。また、クリーニング店なども同様。カウンターの上にQRコードのポップを設置。来店者に「ここからクーポンが引き出せますので、やってみてはいかがですか?」と促せば、節約意識が高い主婦などはかなりの確率で利用してくれるはずだ。

【9】ベクターなどからQRコードを作成するフリーソフトが入手可能。画面は『QRWindow』。フリー入力を選択、次の画面では、たとえば【3】のアドレスを打ち込み、QRコードのサイズ、色を指定する(通常はそのままでいい)、QRコードリーダーで読み込むと【3】の画面に接続できるQRコードが作成できる。このQRコードをテーブルの上やレジ横のカウンター上などのポップに貼り付けておけばいい。実際にこのQRコードを読み込むと【3】のページにアクセスできる
【9】ベクターなどからQRコードを作成するフリーソフトが入手可能。画面は『QRWindow』。フリー入力を選択、次の画面では、たとえば【3】のアドレスを打ち込み、QRコードのサイズ、色を指定する(通常はそのままでいい)、QRコードリーダーで読み込むと【3】の画面に接続できるQRコードが作成できる。このQRコードをテーブルの上やレジ横のカウンター上などのポップに貼り付けておけばいい。実際にこのQRコードを読み込むと【3】のページにアクセスできる

空メール、自分のメアドを
指定受信リストに入れてもらう

ただし、ここで気をつける点がふたつある。ひとつは、顧客が携帯メールの指定受信リストを設定している場合、空メールのアドレスとあとに店舗から送るメールのアドレスを指定受信リストに入れてもらうこと。もうひとつは「このクーポンを利用すると、お店から定期的にメールを差し上げます」という注意書きをしておくことだ。

クーポンで割引サービスなどを提供するのは、リピート率を高めるためであり、それには後々の店舗からのメール送信が必須。それを割引のメリットを受ける顧客側にも了承してもらう必要がある。空メール機能のレンタルサービスを利用すると、空メールを送った顧客のメールアドレスを取得できる。このメールアドレスをPCなどのメーラーに顧客リストとしてアドレス帳登録しておけばいい。それを使って、先に触れたように定食店だったら月曜の午前中に「今週の日替わり定食メニュー+クーポン付き」というメールを出せばいいのだ。

メール送信に関しては、ひとつだけ注意が必要だ。顧客のメールアドレスリストが大量になった場合、10通単位くらいで何分か間隔を空けて送信する必要がある。大量の同時送信をした場合、携帯キャリアにスパムメール業者扱いされ、携帯キャリアのメールサーバから受信拒否をされる恐れがあるためだ。もし、大量のメールを同時送信したい場合は、メール配信ASPのサービスを使う必要があるが、それは次回以降に触れることにする。

クーポンの入れ替えで割引感を演出
ちょっとした工夫でリピート率アップ

ここまでできてしまえば、あとはこまめにクーポンなどを入れ替え、割引感を演出することだ。クーポンを最初のまま放ったらかしにしておくと、顧客が飽きるばかりでなく、どのようなサービスをすれば来店頻度が増えるのかといったマーケティングもできないからだ。

場合によっては、クーポンにリンクするページのアドレスは毎日変えてもいい。実際にクーポンが引き出せるページが、来店したときに読み取れるQRコードだけならば、その割引目当てに来店する顧客も増えることが期待できる。

また、常連客のリピート率をさらに高めたいといった居酒屋などは、しゃれのきいたメールで顧客誘導を図ることもできる。たとえば、焼酎の銘柄を出して「これは芋焼酎か麦焼酎か」とクイズ画面をつくる。正解の場合、正解画面を見せればその焼酎は1杯100円引きとする。が、答えは芋焼酎であっても、顧客は何度でもトライ可能。結局、常連客は正解画面を持って来店することになってしまう。顧客とのコミュニケーションにもつながるエンターテインメント性まで持たせることができる。

売り上げ増のあとにも
夢と希望がついてくる!

そこまでできたら、売り上げ増だけに四苦八苦するのではない。ケータイマーケティングによる、ビジネス効率アップの知的な楽しみも商売に加わってくるのだと認識できてくるのではないだろうか。中小事業者であっても、さまざまな工夫をすれば、ケータイから情報が得られビジネスチャンスを広げ、ルーチンではない日々のワーキングビジネスをすることができるようになるだろう。

一方でWebサイト構築のプロは、中小事業者が無理なく導入できるパッケージプログラム、ソリューションの提供に努めるべきではないだろうか。

モバイル文化がここまで進んだ国は日本と韓国(地域では香港があるが)しかない。中小事業者がこぞって導入するようなソリューションサービスを確立すれば、それはグローバルスタンダードのビジネスになる可能性もあるのだから。

本記事は『Web STRATEGY』2008年5-6 vol.15からの転載です


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