(1)CS4の新しい機能と開発の方向性 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

ユーザーと共に歩むツールを-進化したCS4の全容と開発の背景



2008年11月11日、アドビシステムズからプロフェッショナルのクリエイターに向けた制作ツールであり、エディトリアル、Web、映像など幅広いメディアの制作をカバーする統合パッケージソフトウエアの新バージョン「Adobe Creative Suite 4」(以下、CS4)が発表された。CS4ではAdobe Dreamweaver(以下、Dreamweaver)、Adobe Fireworks(以下、Fireworks)らの旧マクロメディア社製品もUI(ユーザーインターフェイス)が完全に統一され、スイート製品としての統合的な部分が強化されたほか、さまざまな機能の追加・改善がなされている。

今回は、主にDreamweaver、Fireworks、Adobe Flash(以下、Flash)を含んで構成される“Web Suite”(※1)について、開発の背景や新バージョンの詳細を、アドビ システムズ インコーポレーテッドの森房卓史氏とアドビ システムズの西村真里子氏にお話いただいた。


(1)CS4の新しい機能と開発の方向性



Webの世界に参入する架け橋となるツール


――新しく発表されたCS4、そのなかでもWeb Suiteはどんな製品ですか?

森房●CS4は長く紙のメディアを手掛けてきた方が新しくWebに進出する場合でも、より簡単に楽しく使えるツールになっています。紙をデザインしてきた方がWebに進出するとき、新しくWebの技術を身につけなければならない点が一番の壁です。WebアクセシビリティやWeb標準など、新たに勉強しなければならない。それをサポートするツールを目指しました。


写真左/アドビ システムズ株式会社
マーケティング本部 Webソリューション部 フィールドマーケティングマネージャー
西村 真里子氏
写真右/アドビ システムズ インコーポレーテッド
デザイン、Web、Creative Suite プロダクトマネジメント プロダクトマネージャ
森房卓史氏

――背景には、ユーザーのどんなニーズが?

森房●開発の背景に、現在も進行しているクロスメディアパブリッシングの拡大があります。雑誌や本のデザインとWebや映像が融合して、ひとつのアセット(データ資産)を紙とWebの両方でパブリッシングするニーズが増えています。同時に、紙をデザインしてきた方がWebに進出する機会も増えている構図です。


CS4ファミリーは最上位パッケージ「CS4 Master Collection」、各アプリケーション単体パッケージのほかに、制作するメディアの種類や用途に合わせ複数のアプリケーションを組み合わせた5種類 のスイート製品が用意されている。Web制作を統合的にサポートするスイート製品として、「CS4 Web Premium」(写真左)、「CS4 Web Standard」(写真右)の2つのバージョンがある。

・Adobe Creative Suite 4ファミリー各製品のアプリケーション構成
http://www.mdn.co.jp/content/view/7254/78/

――その方向性は、具体的に個々のアプリケーションのどんな機能に反映されていますか?

森房●Flashでは、オブジェクトベースでのより直感的なアニメーション作成ができるようになりました。CS3ではActionScript 3.0を採用したことで、AcsionScript 2.0をやっと修得なさったデザイナーの方は、混乱した部分もあったかと思います。たとえばパフォーマンスは上がったが、シンタックス(プログラミング言語の構文)が変わったために難しくなったというような。今回は原点に戻り、デザイナーの方がより簡単に使えるよう機能を見直しました。

Dreamweaverでは「ライブビュー」の新機能です。テーブルベースのページであれば問題はありませんが、CSS、JavaScript、Flashなどで構成されたページはこれまで「デザインビュー」では見られなかったため、デザインするのが困難でした。今回からライブビューで見ることができるようになったので、JavaScriptがどういうコードで生成されているかをライブコードで確認できます。いちいちブラウザの表示画面をリロードせずとも、Dreamweaver単体のツール内で完結するワークフローも可能になりました。

そして、「コードナビゲーター」機能。HTMLやCSSをこれから身に付けようという方が、より簡単に習得できるようにする機能です。「コードナビゲーター」でほかの人が書いたコードを見て、作り方を調べながら勉強していくのに非常に便利なツールになっています。


CS4の発表にあたってアメリカから来日した森房氏。DreamweaverとFireworksは、最初のバージョンの発売から今年で10年を迎えた。「節目の年に、ユーザーに自信を持って薦められる新バージョンをリリースでき、非常にうれしい」と、森房氏

――そのほかに、ここが大きく進化したという点はありますか?

西村●Webの世界に新しい方が入りやすくなるのと同時に、既存の技術や外部のコミュニティが作った技術を取り込みやすくなっている点も、進化したもうひとつのポイントです。たとえば、Adobe Flash Player 10ではコミュニティベースのライブラリやフレームワークが読みやすくなっています。Dreamweaverでは、外部のものをさらにカスタマイズしやすい環境を実現しました。例えばYahoo!など、外部のウィジェットが読み込みやすい操作性になっています。


「Webの世界はコンピュータのなかだけの閉じたものだけではなく、外側に広がり始めている。そうした点を踏まえ、外部のコミュニティがつくった既存の技術などを、外側から取り込みやすいようになっているのも、新バージョンの大きなポイント」と、西村氏は言う

ユーザーの声を汲み上げた開発


――新機能のなかで、ユーザーの意見が取り入れられたものはありますか?

森房●もちろん。CS3のときには時間的な問題で実現できませんでしたが、今回のCS4で旧マクロメディア製品すべてのUIの統一を行いました。CS3を出荷したあとすぐに、日本のユーザーからも「FlashだけはPhotoshop(Adobe Photoshop、以下同)やIllustrator(Adobe Illustrator、以下同)と同じUIになったけど、ほかは古いままで変わってない」との声をたくさんいただきました。今回すべての製品のユーザーインターフェイス(UI)を揃えたことで、スイートとしてのインテグレーション(統合的な)機能を強化できました。日本は規模的にもアメリカに継ぐ2番目のマーケットですし、日本のユーザーは製品の質に対して非常に厳しい目をお持ちです。日本のお客様のニーズをお聞きして、そのなかで一番重要なものを検討したうえで、CS4の機能に取り入れています。

たとえば、Dreamweaverのコードビューとデザインビューを縦に分割して表示する機能。アメリカの開発チームが日本に来てユーザーの声を聞かなかったら、実現できなかった機能です。それから、エンコーディング表示機能。アメリカではほぼ1種類のエンコーディングのみで、それ以外のエンコーディングを使うことはほとんどないため、プライオリティがそれほど高くはない。でも、日本ではJIS、Shift-JIS、Unicodeなど、複数のエンコーディングを使います。プロジェクトやクライアントによって違うため、そのとき開いているファイルのエンコードがひと目で確認できるのは安心ですよね。


写真左/「Adobe Flash CS4 Professional」のパッケージ。インタラクティブなWebコンテンツやアニメーションなどの制作ツールとして、なくてはならない存在
写真右/「Adobe Dreamweaver CS4」のパッケージ。CSSをはじめとするWebコーディングの作業を強力にバックアップする

西村●Flashにも日本のユーザーが声をあげることで、改善できた部分がいくつかあります。なかでも大きいのは、CS4でオブジェクトベースのアニメーション作成ができる新機能と従来からの作成機能の両方を使える点です。当初アメリカでは、これまでのスクリプトベースの機能はなくして、新しい方だけにしようと考えていました。そのとき、日本のコアなユーザーから「いきなり新しいバージョンだけになってアニメーションの書き方が変わると、仕事ができなくなる」と大きな声をあがりました。その結果、両方を搭載することになったんです。新しいユーザーは新しい簡単な方法で、既存の方は今まで通りの使い方、プラス場合に応じて新しい機能を利用できます。


※1:CS4ファミリーのなかで、Web制作に最適なツールとして提案されている「CS4 Web Premium」、「CS4 Web Standard」の2つのスイート製品を指す。

twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在