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WiFi Directがつくる新しいモバイル接続の可能性 - WEBデザイン×ITフォーカスノート 第11回

2024.4.24 WED

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WEBデザイン×ITフォーカスノート

第11回 WiFi Directがつくる新しいモバイル接続の可能性

今や無線LANの代名詞といえる「WiFi」。無線LAN製品の相互接続性を推進するため 1999年に前身団体といえる「WECA」が設立された。2003年に現在の「Wi-Fi Alliance」に団体名を変更して以来、国内外300社以上の企業が加盟している。数多くの接続方式をサポートし、事実上無線LANの世界スタンダードといえるだろう。このWiFiも今また新たな進化を遂げようとしている。
(文=長谷川恭久)

当たり前になりつつあるWiFi環境とその欠点

初期の無線LAN機器は、異なるメーカーの製品との接続性を保証しておらず、利用できないという問題が発生していた。こうした相互性の問題を解決し、標準化と品質保証を維持するために発足したのが「Wi-Fi Alliance」だ。Wi-Fi Allianceの認証試験にパスした製品なら、メーカーに関係なく安全かつ確実に無線LANを利用できる。PCからのネットワーク接続が主流だったWiFiだが、現在は家電、携帯電話、ゲーム機器からも利用可能になった。

WiFiが利用できるデバイスが多様化しているだけでなく、WiFiが利用できる場も年々増えている。2003年に米ピッツバーグ国際空港が無料のWiFiスポットを提供して以来、空港ではインターネット接続できるのが当たり前になってきた。また、米カリフォルニア州サニーベールのように街全体でWiFiをサポートしている場所もある。日本でも有料・無料で各地にWiFi接続ができる場が増えてきている。

WiFiの利用にはアクセスポイントが不可欠だ。アクセスポイントがハブのような役割を果たし、WiFiサポートをしているデバイスは、アクセスポイントが発する電波を利用してインターネット接続が可能になる。複数のアクセスポイントをつなげれば最大数キロの接続領域を構築できるが、アクセスポイントなしではインターネットアクセスができないのが難点だ。アクセスポイントの設置にはコストがかかるだけでなく、設置の仕方によってはつながりにくい場所も出てくる。高速回線を無線で実現しているWiFiはメリットが高いといえるが、コスト高と可動性の低さが欠点だ。こうした課題を解決する新しい規格として注目を浴びているのが「WiFi Direct」である。

すぐそこまで来ているWiFi Directの世界

WiFi Directはアクセスポイントを利用することなく、デバイス間で通信可能にする新しい規格で、2010年中ごろから利用可能になる。広範囲でWiFiを利用する場合、複数のアクセスポイントが必要となるだけでなく、デバイスは必ずアクセスポイントに接続する必要があったが、WiFi Directなら1台でもアクセスポイントに接続していれば、他のデバイスが接続しているデバイスを介して利用が可能になる。2010年以降に発売されるデバイスにはWiFiDirectが実装されたものが増えてくるが、現行機種もソフトウエアアップデートで利用できるのもある。無線インターネット接続を考慮した「Centrino」を開発している米intel社では、今後 WiFi Directの実装を考慮した新ラインアップの提供を発表している。

インターネット接続だけでなく、WiFi Directにはさまざまな利用シーンが考えられる。たとえば、視聴者がTVから直接コンテンツを携帯電話に取り込めるだけでなく、TVのほうからコンテンツを送信するという双方向の関係が生まれる。また、デジタルカメラの写真やビデオをワイヤレスで直接パソコンや携帯電話に読み込める。携帯電話同士でもアドレス帳の交換や高速通信のマルチプレーゲームが考えられる。こうしたデバイス間のやりとりにはアクセスポイントを必要としないので、今後さまざまなやりとりを、仲介するデバイスを購入することなく実現できる。

WiFi Direct同様、ワイヤレスハブを利用せずにデバイス間で通信できる規格で「Bluetooth」がある。Bluetoothの規格自体は1998年からあり、賛同している企業も数多く存在する。日本でもここ数年でスマートフォンや携帯電話にも実装されるようになり、Bluetoothの利用ケースは増えている。しかし、WiFiのようなインターネット接続に使われるより、ヘッドセットのようなデバイス間の通信として使われるケースが多い。その理由として通信速度の低さが原因といえるだろう。WiFi Directの通信速度は通常の無線LANと変わらないので快適なインターネット利用が可能だ。最大100メール先にあるデバイスとの通信が可能なBluetoothだが、WiFi Directも最大90メートルと、ほぼ同等の接続距離な点を見ても、従来Bluetoothを利用していたデバイスもWiFi Directに乗り換える可能性がある。

Bluetoothとの比較から見る今後との課題

モバイル環境で音楽やビデオ等のマルチメディアコンテンツを閲覧するのにWiFi Directは最適のように見えるが、Bluetoothに比べバッテリーの消費量が高いのが難点だ。WiFiでの電力消費はデバイス本体の消費とは別なので、長時間コンテンツを楽しむことは難しい可能性がある。こうした技術的な課題は今後解消されていくが、しばらくはBluetoothとWiFi Directは共存すると考えられる。

また、通信環境が他の国に比べて恵まれている日本でWiFi Directの利用シーンがどこまで増えるかも注目する点だ。WiFiが利用できるフリースポットは都市圏が大部分を占めているが、地方でもWiFiが気軽に利用できたり、携帯電話用の電波が届きにくい場所で代わりにWiFi Directを利用して通信するといった可能性もある。デバイスに関係なくできる高速なモバイルコミュニケーションはすぐそこまで来ているといってもよいだろう。

IT11-1
「WiFI Alliance」のWebサイト(www.wi-fi.org/)。
WiFiの規格に関する詳細や加盟している企業の紹介がされている

IT11-2
JiWire が提供している「WiFi Finder」を使うと
140カ国30万カ所のWiFiスポットを探せる
tinyurl.com/cqsek5

IT11-3
日本ではdocomoの「ホームU」のような
FOMAと無線LANの両対応した通信サービスもある
www.homeu.jp/

Profile 長谷川恭久

デザインやコンサルティングを通じてWeb関連の仕事に携わる活動家。ブログやポッドキャスト、雑誌などを通じて情報配信中。
URL: www.yasuhisa.com/

本記事は『web creators』2010年1月号(vol.97)からの転載です。

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