ネットとの親和性が高い小型ノートPC「ネットブック」 - WEBデザイン×ITフォーカスノート 第6回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

ネットとの親和性が高い小型ノートPC「ネットブック」 - WEBデザイン×ITフォーカスノート 第6回

2024.4.16 TUE

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WEBデザイン×ITフォーカスノート

第6回 インターネットとの親和性が高い小型ノートPC「ネットブック」

近年ノートPCは軽量で持ち運びも簡単になってきているが、かばんのスペースをとり、値段も安くない。こうした問題を解決してくれるデバイスとしてネットブックが注目を集めている。以前から小型のPCは国内外問わず数々のモデルが販売されていたが、今人気が出てきている理由として、最近のインターネットの利用の仕方が深くかかわっている。
(文=長谷川恭久)

ネットブックに「ネット」がつく理由

「ネットブック」とはワイヤレスでインターネットへアクセスできる小型のノートPCをいう。スペックは高くなく、モニタサイズも小さいものでは5インチと十分なスペースはないが、どこでもインターネットに接続できるPCを低価格で購入できるのがネットブックの魅力だ。WiFiだけでなく3Gネットワークにも対応したモデルもあり、いつでもどこでもインターネットへ接続を可能にしている。ASUS TeK Computer社が2007年にリリースしたネットブック「Eee PC」は、カスタム版のLinuxをOSとして実装しており、特定の利用者向けとして販売されていたが、Dell社、Hewlett-Packard Development Company社といった大手メーカーがWindows XP版を販売し始めたころから徐々にネットブックへの注目が集まり始めた。販売台数も、2008年の1,140万台から2009年は3,500万台まで伸びるとの分析もある。

マルチタスクや重たいグラフィック処理ができないにもかかわらず、ネットブックの利用者が増えてきている理由として、PCの使い方の変化が挙げられる。従来、Micosoft OfficeをはじめとしたさまざまなアプリケーションをPCにインストールして利用する形が主流だったため、ハードウエアに高いパフォーマンスを要求する必要があった。しかし、ここ数年にわたり、デスクトップアプリケーションと変わらぬ使い心地を実現したWebアプリケーションが次々と登場。これにより、わざわざPCにインストールしなくても、インターネットが接続できる環境であればいつでも使いたいアプリケーションを利用可能になった。それと同時に写真、文書、コンタクト情報、メールといったさまざまな情報をインターネットへ保管する利用者も増えており、デバイスが違ってもインターネット環境さえあれば自分のデータを扱えるようになってきている。つまり、ネットブックのようにブラウザが十分に動作する程度のスペックであれば、Web上にあるさまざまなデータやアプリケーションを扱うのに問題はない。今のインターネットの利用のされ方に最適化された低価格PCがネットブックといえる。

混戦が予測されるOS・ブラウザ市場

ネットブックが登場した当初はLinux OSを実装したものが大半を占めていたが、現在ネットブック市場の90%はWindows XPを採用している。ネットブックOSの市場で2位を保持しているのがLinuxだが、シェアを保持するためにMicrosoft社はWindows XP搭載PCの販売を 2010年10月まで延長している。2009年発売予定のWindows 7には「Starter Edition」という機能を絞った低価格版をネットブック向けとして準備しているが、ここ数年はWindows XPと7の混在が予測される。

現在はWindowsとUbuntuをはじめとしたLinuxの両者によるシェア争いだが、Google社のAndroidも今後シェアを獲得すると予測されている。現在はスマートフォンのみに実装されているAndroidだが、2009年2月にFreescale社が、Androidを実装した100ドルネットブックを発売すると発表している。また、Dell社もAndroidを実装したネットブックの製造を発表しており、Flash Liteの移植も予定している。Androidはクラウドコンピューティングを念頭において開発されたOSであることから、ネットブックのOSとしての親和性が高い。

それぞれのOSでデフォルトで利用できるブラウザはInternet Explorer(以下、IE)、Firefox、Google Chromeだが、長年にわたりモバイル向けブラウザを開発しているOperaも、スペックが低くスクリーンサイズも小さいネットブックでの利用には最適だ。また、Mozilla社では現在 スマートフォン向けのブラウザ「Fennec」(www.mozilla.com/en-US/mobile/)を開発しているが、ネットブック向けに使う可能性も考えられる。IEが大半を占めるという意味ではデスクトップ/ノートPCと変わらない状況だが、ここ1、2年に購入した人がほとんどなのでブラウザのバージョンは7、または8になる。デスクトップ/ノートPCに比べると後方互換に敏感になることなくサイト開発ができる。

見通しが見えにくいネットブックの今後

しかし、ネットブックの需要がこのまま続くかどうかの懸念もある。DisplaySearch社のマーケット調査によれば、2009年の第1四半期の出荷台数は2008年第4四半期に比べると26%落としている。世界的に不景気が続いているので購買力が落ちている可能性があるが、2008年末からの勢いはなくなりつつある。また、iPhoneやAndroidといった高性能のスマートフォンが続々登場しており、ネットへアクセスしてタスクをこなすという点ではネットブックと変わらない。キーボードがあるネットブックのほうが入力はしやすく、出先で仕事するのには向いているが、今後スマートフォンの入力方法が洗練されてくれば、メーカーはネットブックのメリットを改めて考えることを迫られるだろう。

Webサイト制作者もノートPCよりさらに小さな環境でサイトを観覧している利用者がいることを考慮しなければならない。スマートフォンも同様だが、ネットブックは動画などの複雑な処理を得意としない。Flashを多用したり多くの画像を利用したサイトにすると、ネットブックをはじめとしたモバイルユーザーの観覧チャンスを逃してしまう可能性がある。ブロードバンド環境が出先でもある可能性もあるが、よりスピードと軽さがWebサイトに必要とされる要素といえる。

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日本語でも製品レビューや動向など数多くの情報を仕入れられる
www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2008/netbook-umpc/

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「Skytone」では、「Alpha 680」というAndroidを実装したネットブックを掲載している
www.skytone.net.cn/en/products.php?bigclass=4

Profile 長谷川恭久

デザインやコンサルティングを通じてWeb関連の仕事に携わる活動家。ブログやポッドキャスト、雑誌などを通じて情報配信中。
URL: www.yasuhisa.com/

本記事は『web creators』2009年8月号(vol.92)からの転載です。

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