第4話 ポップであり続けること | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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これがデザイナーへの道

第34回 スージー甘金
デザインがポップアートを生む


さまざまなジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はコミック・アートの巨匠・スージー甘金さんを取材しました。その輝かしいキャリアの礎 になったグラフィックデザイナーとしての足跡をたどり、現在さまざまな分野を横断するようになった「原点」を振り返っていただきましょう。



第4話 ポップであり続けること


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代々木上原のスタジオにて、スージー甘金さん



──これまで、何か転機ってありました?

スージー●やっぱり湯村さんとの出会いは大きかった。湯村さんと出会って、小松くんみたいなキャラクターがメインになってきた頃からかな。固まってきたのは。自分が尊敬している人に「いい」と言われれば、すごく嬉しいでしょ。評価的にも信用おけるし。それまでは自分がやっていることで「ほんとに食べていけるの?」って思ってたし。何か描きたいと思うだけで、判断の基準もなかったから。

──デザインでもイラストでも、食べていけると思ったのはいつ頃ですか?

スージー●30歳過ぎてからですね。まったくなかったわけじゃないけど、それまでは仕事の数が少なすぎた。エロ本のデザインとかもしてましたね。表紙を毎月レギュラーでやってたんです。で、電話でキャッチコピーのやりとりをするんだけど「ベチョぬれ」とか、それを書き取って確認のため復唱するんです。自分でも「オレって、いま何やっているんだ」って思ったけれど、誰かの役には立っているわけだからね(笑)。

──現在、いろいろ肩書きがありますが、自分では何と思ってます?

スージー●なんだろうね。基本的にはイラストレーターなんですよ。一番あたってるのは漫画イラストレーター。ベースは漫画なので。でも、ただ漫画家じゃない。漫画家になりたい気持ちもあるけれど、なれなくて。やっぱりストーリーが作れないから、一般的な漫画の人みたいにはできない。

──長いもの、描いてみたいと思います?

スージー●思わない。大変ですもん(笑)。

──デザインって何だと思います?

スージー●なんだろう……イラストもデザインの部分、ありますからね。発注から考えると「こういうものを作ってくれ」ってところから始まるでしょ。その目的が一番伝わるように作るのがデザインかな。遊びの部分があっても、目的がちゃんと表現されるもの。でも、学生が文字が読みにくいものを作ったりするでしょ。個人的にはそういうの好きじゃない。はっきりしたものが好きだな。ちゃんと明確に伝わるもの。

──かたやイラストのほうは?

スージー●基本はポップでありたいですよ。ポップが好きだし、イラストレーターだけやっているわけじゃないんで。ちょっと他の人とは違うよって言いたいんで(笑)。実際、違うんです。世の中のこと漫画にしか見えないし。デザインするときも、軸として考えていることは同じですよ。基本的に絵を描いているわけだから。でも、デザインは絵じゃない。目的があってやることだから。自分なりにできればいいけど、やっぱり他人の意見は多少入ってきますよね。最初はそういうのも嫌だったんです。発注物って、当然発注した人の考えが入るでしょ。その意見が自分の中で昇華できないとき、すごく嫌なんです。昇華できればいいんだけど……でも、仕事なら従わないとならない。どうやって折り合いをつけるかって話で、じゃないと喧嘩じゃないですか。そういうことも若い頃はわからなかったから。

──ざっと振り返りましたが。

スージー●25年、早いようで短いようで。花火的に、パッと上がって散るみたいな。

──散るのは困りますよ(笑)

スージー●でも人間、誰でも最後は散るでしょ。誰かが見つけて、残ってくれるといいけどね。死んじゃうから、どうでもいいんだけど。杉浦茂さんとか、そういう感じがあるんですよ。最近『塗りCOMIX』という作品集を出したけど、美大の学生が後から「こんな時代にこんなバカなことやっていたんだ」って思ってくれるといいよね。

──いま、母校の多摩美で講師も勤めてますね。

スージー●Webの授業です。学生に自分のHPを作らせている……といっても、HTMLはあまり知らない。Dreamweaverで作れちゃうから。Flashで動いたほうが学生もやる気がでるみたいですね。

──いまの学生、どうですか?

スージー●僕らのときと一緒ですよ。実際、課題をやらなければならないし、自分の世界に入らないとできないじゃないですか。だから、みんな黙々とやってますよ。パソコンルームで一人で集中して。だから、こういう時代もいいんじゃないかと。

──今後、どうありたいですか?

スージー●海外とか行けるといいと思っているんだけど。ちょっとずつはやっているんです。あとアニメ作りたい。でも時間がかかるからね。

──最後にアドバイスを。

スージー●学生にもよく言うんだけど、どこかのデザイン事務所に入ったら3年はいてもらいたいです。じゃないと身に付かないので。3年我慢すると学べるし、そのあとは辞めてもいいんだけど、1年とかで辞められると失礼。社長も困っちゃうし……俺はダメだったけどね(笑)。

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スージーさんの仕事より

上左=宝島増刊号『マンガ宝島』JICC出版局/1990年
上右=レピッシュ『DOGS can't see THE VIDEO』ユニバ-サル ビクタ-/1998年/CG:コガネ虫スタジオ
下左=花くまゆうさく『メカ★アフロくん 爆裂会社編』マガジンハウス/2007年 人形製作:花くまゆうさく
下右=大槻ケンヂ『のほほん人間革命』宝島社/1995



今回でスージー甘金さんのインタビューは終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)



スージー甘金さん

[プロフィール]
すーじー・あまかね●1956年東京都生まれ。多摩美術大学デザイン科卒業後、デザイン事務所勤務を経て創作活動を開始。元祖マンガイラストレーター、コミック画家。著書に『POPPO ART』(荒地出版)、『キャラクターハンドブック』(誠文堂新光社)、『塗COMIX』(音楽出版社)など。
http://www.coganet.co.jp/



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