第3話 “コミュニケーションをプロデュースする”ということ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第3話 “コミュニケーションをプロデュースする”ということ

2024.4.25 THU

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第3話 “コミュニケーションをプロデュースする”ということ




??“コミュニケーションをプロデュースする”ということについて、もう少し詳しく教えて下さい。

茂出木●たとえば、今まさに鼻息が荒いネットビジネスの企業のほとんどは、「どういうシステムでそれを作ったのか」「どういうサービスを提供しているのか」という切り口で話をしていると思うんですが、うちの場合はそれが「どういうコミュニケーションを提供しているのか」という話になってきます。たとえばSNSやCMSを例にあげるとすると、ほとんどの企業が、「SNSを立ち上げましょう。つきましてはうちのSNS構築サービスをシステムを導入して下さい」という売り込みをする。でも、僕はそれは間違いだと思っています。順番としては、「おたくのお客さんはこういう人たちですから、それに見合ったコミュニケーションが必要で、そのためにSNSを導入したらいかがですか。SNSにはいろいろなサービスを行っている企業があり、それぞれ特性や金額が違うので、ますそこから検討しましょう」という言い方になるべきだと思うんですね。



??それはつまり、現状を分析して、今あるインフラの“使いこなし方”を提案していく、ということになるのでしょうか。

茂出木●ようするに、「こういうコミュニケーションを取る場合に、最もふさわしいのはこのかたちです」という提案の仕方になる、ということですね。より噛み砕いて言うと、プロデュースにあたって、「技術で提案が固定されない方がいい」ということなんです。自分もよくクライアントから、「SNSを導入したい」という相談を受けたりしますが、「なぜですか」という質問をすると、「流行っているから」という理由だったりする。そこでうちができることとしては、「ではまだ必要ないでしょう。何故ならこの部分とこの部分がまだできあがっていないからです」というように、技術の“使い方”だけでなく、“使わない方法”をも提示できるんですね。

それがプレゼンの現場でどう活きてくるかと言うと、たとえば競合プレゼンの場合、他社の提案は大抵、自社のSNSのシステムの特長の説明で企画書を構成してきたりする。ところがSNSのシステムについては、導入を決めた後で知ってもらえれば問題ないわけですから、まず現状のコミュニケーションの可能性を指摘したうえで、SNS以外にもコミュニケーションの仕方があるということを踏まえて提案をしていく。それがうちのやり方の最大の特徴ですね。









??単なる“売り込み”に終始しがちなプレゼンに対して、よりカウンセリングやコンサルティングに近いスタンスを取っている、ということでしょうか。

茂出木●自分はあくまでコンサルタントではないので、コンサルタントとは名乗っていませんが、「コンサルティングに近いことをやっているよね」と言われることもよくあります。でもそういう場合の企画料が目に見えてお金になることは、まだまだ少ない。やはり「成果物をもって支払います」というケースがほとんどですから。競合プレゼンの場合を考えても、クライアントが「Webサイトに何を望んでいるのか」。特に重視するのは「ユーザーとどうコミュニケーションを取っていくのか」ということです、そこが固まっていないまま、制作のステップに進んでも根本的な問題は解決しないし、そもそもクライアントの要望に応えていないと思います。中小の制作会社はクライアントの要望に答えていない提案だけに留まっているのが現状ですね。

??そういった現状を踏まえて、具体的にはどのようなかたちでWebサイト構築に取り組んでいるのでしょうか。

茂出木●たとえば僕が運営を手がけているサイト「macoron!」の場合は、「パパとママのためのコミュニティサイト」と銘打って、子供を持つ親のための子育てコミュニティサイトとして展開をしているのですが、スポンサードという形でユニチャームやアシックス、ミキハウスといったさまざま企業や産婦人科などの医療機関が参加しています。そこにお母さんたちがブログを書いていくのですが、毎日500くらいの書き込みがあって、すでに約5万本を越える書き込みが蓄積されている。


茂出木さんがプロデュースしている主なサイト、左上からママとパパのためのSNS「マコロン」http://macoron.jp/ (上右)「ディズニーの英語システム」http://abc.world-family.co.jp/(下)mycom ジャーナルhttp://journal.mycom.co.jp/



このサイトの立ち上げにあたって僕が手がけたことを説明すると、まず予算を取るためのサイトの骨子となる企画提案書を僕が、それとは別にビジネス的側面から見た予算の資料を別の人が作成し、ひとつにまとめて企画書として提出しました。実際の運営に関しては、カレンという、メールマーケティングで有名な会社が事務局を担当して、広告代理店のメディックスはバナーなどの広告展開を担当するなど、数社が関わっていますが、毎週、運営に関しての会議を各社の担当者を集めて行っています。つまり通常の場合は、面倒だという理由で一社にまとめて投げてしまうケースが多いところ、このケースでは企画の立ち上げの段階で、それぞれの分野に長けた企業を組み合わせて参加をお願いしたことで、こういう体制が実現したわけです。






(取材・文:深沢慶太  写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)







[プロフィール]

茂出木謙太郎

株式会社キッズプレート 代表取締役/プロデューサーWebサイト構築に携わり10年。JPPプロモーションアワード2003銀賞受賞。OCNデザインアワード2004審査員。リクルートクリエイティブグランプリ審査員。著書『Webデザイン-コミュニケーションデザインの実践-(共著)』(CG-ARTS協会発行)、監修に『Webサイトユーザビリティハンドブック』『XHTML時代のWebデザインバイブル』(以上オーム社刊)ほか Web creators誌には創刊当時からの執筆協力を行う。 CG-ARTS協会会員。

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