「顧客を導く新・マーケティングファネル──前編」
「顧客を導く新・マーケティングファネル──前編」
2010年2月8日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
知ることのできないじょうごの中の化学反応
消費者を顧客へと導くプロセスを「マーケティングファネル」と呼ぶ。「ファネル」(じょうご、漏斗)とは、ウィキペディアによれば「液体または粉体を口径の大きい容器から、口径の小さい穴または管を通して投入したり、液体を壁面を流下させたりする際に利用する円錐状の器具」だ。つまりたくさんの消費者を見込み顧客として集めても、実際に受注にいたって顧客になってくれるまでの歩留まりが悪いことを示している。
消費者が顧客に変わるプロセス、マインドシェアが自社に優位、あるいは他社に優位になっていくプロセスをリアルタイムで知ることは非常に難しい。だからこそ、従来のマーケティング手法では消費者をファネルの入口まで連れてくることができても、実際にファネルの中でどのような化学反応が起きているかを実際に知ることができない。だから消費者行動を示すとして有名な「AIDMA」(アイドマと発音*注)や、インターネット、それも検索エンジンの重要性が認識され始めて電通が提唱した「AISAS」(アイサスと発音*注)などの仮説が生まれたわけだ。
(*)
「AIDMA」(アイドマ)とは、1920年代にアメリカ合衆国の販売・広告の実務書の著作者であったサミュエル・ローランド・ホールが、著作中で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語である。日本語圏において「AIDMAの法則」として、広告代理店の電通などにより提唱されたAISASとの比較により知られる。
A | Attention(注意・注目) |
I | Interest(興味・関心) |
D | Desire(欲求・購買欲) |
M | Memory(記憶・保留) |
A | Action(行動・購入) |
「AISAS」(アイサス)理論とは、マーケティングにおける消費行動のプロセスに関する仮説のひとつで、消費者の購買にまつわるプロセスを「注意」「興味」「検索」「購買」「情報共有」のプロセスから成り立つとする理論のことである。特にeコマースのマーケティングモデルとして参照される。
A | Attention(注意・注目) |
I | Interest(興味・関心) |
S | Search(検索) |
A | Action(行動・購入) |
S | Share(共有) |
消費者行動は指を加えてただ見守るしかないのか?
しかし、人間の心が脳の動き、つまり頭の中にある以上、消費者行動を定性的かつ論理的に整理して予測することは困難きわまりない。従ってマーケティングファネルを比較的単純なプロセスに置き換えた仮説を盲信することは、かなり危険なことだと筆者は考えている。
では、このマーケティングファネルの入口に消費者を誘ったあとは、偶発する消費者心理の化学反応に対して、自社に好意的な方向に進むことを祈るしか他にないのだろうか? 次回は、その解をご紹介する。
新マーケティングファネルについては、次回で紹介しよう
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。