iPhone/iPad最大の弱点を打ち消すiCloud
iPhone/iPad最大の弱点を打ち消すiCloud
2011年10月17日TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
林信行さんとの共著「アップルとグーグル」(インプレス)および「アップルVS.グーグル」(ソフトバンク新書)で、iTunesがクラウド化すると予言していたが、予想よりは若干遅い印象こそあるものの、ついにiOS5の登場とともに予言が現実のものとなった。
そのサービスこそがiCloudだ。iCloudはその名のとおり、Apple製品を使うユーザーに向けてのパーソナルクラウドコンピューティングサービスであり、AppleのモバイルOSであるiOSとMac OS Xをオンラインでシームレスにつないでしまう。これまでのMacシリーズとiPhone/iPadなどのモバイルデバイスは、基本的にワイヤード――すなわちケーブルでつないだうえで、MacおよびPCにインストールされたiTunesを介してアプリケーションやデータの連携を行っていた。つまりiPhoneやiPadは、iTunesをインストールしたMacもしくはPCなくしては存在を維持できない“補助的なデバイス”だったのだ。
それが今回のiCloudの登場によって、ついにiPhone/iPadもMacやPCと並列の、自立したガジェットに進化したのである(とはいえiOS自体のアップデートは、まだケーブル接続によるiTunes経由のインストールによるようだ)。
iOS搭載デバイスで作成したデータは、自動的にiCloudが提供するクラウド上のストレージ領域にバックアップされ、Apple IDによって接続されたすべてのデバイスに対して共有される。ストレージ容量は5GBまで無償だが、10GB/20GB/50GBと三段階の有償アップグレードが用意されている。ただし、写真の共有システムであるフォトストリームという機能では、1000枚/30日以内の撮影という制限があるものの、iCloudストレージの容量とは別に保存されるようだ。
繰り返すが、iPhone/iPadの最大の弱点は、MacやPCという母艦なくしては長期間存続できない、自立できないデバイスであったことだ。Googleが擁するAndroidは、連携を義務づけられた別のハードウエアが存在しない。だから最初からWebを介して自立するデバイスでいられたが、Macを軸としたデジタルハブ戦略の流れで発展してきたiPhone/iPadには、Macとの連携という呪縛から逃れられずにいた。その呪縛をiCloudが断ち切ったのである。
これによって、やがてAppleがマウス/トラックパッドとGUIというパッケージングによるPC自体の製造をやめて、タッチパネルとNUI(指先や音声による、人間的な操作によるインターフェイス)というパッケージングのスマートフォンおよびタブレットデバイスのみの製造に踏み切る可能性もでてきた。このタッチパネルとNUIは、家電や自動車などのコンピューティングにおいても標準的なパッケージングになるだろう。
iCouldは、Mac OS X Lion 10.7.2以降を搭載したMacおよびWindows 7/Vistaを搭載したPCと、iOS5を搭載したiPhone(3GS以降)/iPod touch(第3世代以降)およびiPad/iPad2のApple社製モバイルデバイスに対応する。iCloudによって、iPhone/iPadはAndroidやWindows搭載デバイスに対して大きなアドバンテージを得るだろう。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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