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プライドを捨ててHTML5へのコミットメントを下げたFacebook

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プライドを捨ててHTML5へのコミットメントを下げたFacebook

プライドを捨ててHTML5へのコミットメントを下げたFacebook

2012年08月27日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)


FacebookがiOSアプリをHTML5からObject-Cベースに切り替え、最新バージョンとしてリリースした。従来のアプリに比べて相当に高速化しており、UIもシンプルになった。世界中のユーザーの反応は上々である。

これまでのFacebookの考え方は、モバイルアプリケーションといえどもすべてWebアプリとして開発し、マルチプラットフォームに対してひとつのプログラムで対応していくというものだった。Webはインターネット上で誰もに開かれたオープンなプラットフォームであったが、FacebookとAppleが勢力を伸長するに伴い、クローズドな世界へと変貌しつつあった。FacebookはWebをソーシャル化していく過程で、Facebookのアカウントをもつユーザーが急増し、Webへの窓口を検索エンジンから奪いはじめた。さらにWebアプリとは違う、Facebookの独自仕様に合わせたアプリが台頭し、Webは独占的かつ閉鎖的な空間に浸食されていた。Appleは、iOSデバイス上でのインターネット利用が、WebからAppStore経由のモバイルアプリへとシフトしていくことを必ずしも良しとはしていなかったが、結果として自身のビジネスを優先して“未必の故意”のごとくWebの地盤沈下を招いた。

おもしろいことに、Facebookは前述のようにモバイルアプリをHTML5ベースでつくり、AppleもまたHTML5普及に対して多くの投資をしてきた。さらにいえばGoogleはWebがオープンな状態でなければ検索できないし、結果として広告ネットワークによる収益を得ることもできないから、iPhoneとAppStoreによるネイティブアプリによるWebの地盤沈下をなんとか食い止めようと努力してきた。

つまり、インターネット業界におけるトップリーダーたちは、Webを愛し、Webを守ろうとしつつも、目先の事業を優先するがゆえに(特に急拡大するモバイルインターネット上において)Webを無力化することになった。

逆にFacebookは自身がソーシャル化を進めた結果、Webからオープン性を奪ってしまったものの、Webがあるからこそ自分たちの存在意義があるという自己矛盾をよく理解しており、だからこそ、これまでHTML5によるWebアプリへのこだわりをみせてきた。

しかし、どうしても現時点のモバイルの(CPUやネットワークなどの)環境はまだまだ貧弱であり、その状況においてはiOSに最適化されたObject-Cベースのネイティブアプリの反応速度を、HTML5ベースでは追いつくことができない。FacebookのiOSアプリのできばえについては、これまで一貫して批判が多く、このままではモバイルインターネットにおけるFacebookの勢力伸張を、皆が疑いかねない状況にあった。だからこそ、Facebookは今回やむを得ず、プライドを捨てて実を取りにいったと言えるのだ。

その結果、Facebookはモバイルインターネット上での開発力や存在感の劣化に対する疑念を払うことができた。しかし、モバイル上での収益力についてはいまだ説得力ある答えを出していないし、WebとHTML5へのコミットメントを下げたことが吉と出るか凶とでるかは、まだ誰にもわからない状況である。

iOS版Facebook
iOS版Facebook




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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