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神戸市HPリニューアルが示した「イライラしない自治体サイト」の重要性

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神戸市HPリニューアルが示した「イライラしない自治体サイト」の重要性

神戸市HPリニューアルが示した「イライラしない自治体サイト」の重要性

神戸市の公式Webサイト
神戸市の公式Webサイト

2016年2月9日
TEXT:佐藤 勝


この2月から、神戸市公式Webサイトのトップページを中心にリニューアルが行われ、検索窓と背景写真のみのシンプルなトップページが話題になっている。自治体のWebサイトとしてはおそらく初めての試みに注目が集まっているが、実はこれ、自治体サイトのあり方を問いなおすきっかけとしても重要なことのように思えるのだ。


■Webデザインで利用者に貢献する、新しい試み


今回のリニューアルでトップページのデザインはキーワード検索窓がメインとなり、よく検索されている「市バス」「地下鉄」「区役所」などのキーワード候補をあわせて表示している。これまでの解析の結果、ユーザーの多くがキーワード検索を使ってサイトを利用していることを踏まえているという。

キーワード「子育て支援」で表示された検索結果
キーワード「子育て支援」で表示された検索結果

「子育て支援新制度総合メニュー」にすぐたどり着くことができた。ここから、支援制度のインデックスを参照できる
「子育て支援新制度総合メニュー」にすぐたどり着くことができた。ここから、支援制度のインデックスを参照できる

試しに「子育て支援」というキーワードで検索してみると、検索結果の第1候補に「子育て支援新制度総合メニュー」が表示された。トップページからメニューをたどってここまでたどり着くには、4回クリックが必要だったので、サイト内検索のメリットを実感できた。

検索窓は、一般的な検索エンジンと同様に、キーワードを一つ入れると、あわせて検索されている候補キーワードを表示してくれる
検索窓は、一般的な検索エンジンと同様に、キーワードを一つ入れると、あわせて検索されている候補キーワードを表示してくれる

トップページから1クリックで、総合メニューが開く。従来の自治体サイトのトップページらしいデザインだが、ここもアイコンや色調を一新して、見やすくリニューアルした
トップページから1クリックで、総合メニューが開く。従来の自治体サイトのトップページらしいデザインだが、ここもアイコンや色調を一新して、見やすくリニューアルした

トップページにひときわ目立つ検索窓があれば、より積極的に検索機能を使うユーザーも増えるだろう。ユーザーの利便性を高めるために、思い切ったデザイン変更を行った、新しい試みといえる。


■検索スキルを持たないユーザーにどう対処するか?


しかし、探したい情報によっては、どの検索結果を選べばいいのか迷う場面もあったのも事実だ。
例えば、年金保険料の相談窓口について調べるために「年金保険料 相談」というキーワードで検索してみたが、検索結果の上位には、求める情報だとすぐに分かる候補が見つからなかった。検索結果全体は462万件と膨大で、候補のなかにはPDF文書も混じっている。それらを一つ一つ開いて確認していくのはさすがに億劫に感じる。

キーワードによっては、どの検索結果を選べばいいか迷う場面も
キーワードによっては、どの検索結果を選べばいいか迷う場面も

インターネット検索に慣れたユーザーなら、ここでキーワードを変えたり追加したりして、必要な情報にたどり着くことができるはずだが、そうしたスキルを持たないユーザーの場合は、おそらく諦めてメインメニューからいくつものリンクをたどっていくのではないだろうか?

総合メニューから5クリックで、ようやく目的のページにたどり着くケースも
総合メニューから5クリックで、ようやく目的のページにたどり着くケースも

その場合、総合メニューページから、「くらし・手続き」→「年金・保険・税」→「国民年金」→「手続き窓口」…というようにクリックしていくのだが、次にどこをクリックすればいいのか、毎回ページ内を探して回ることになる。

そもそも、自治体のWebサイトは、生活、税金、各種支援制度、公共交通機関、災害、イベントなど、多岐にわたる情報を提供し、なおかつ全てのユーザー層にとって使いやすいサイトであることが求められている。企業のWebサイトのように、「商品やサービスを知ってもらう」「購入・問い合わせに結びつける」といった明確な目標に向かって導線を作れば良いというわけではないのが、難しいところだ。

「検索に特化したトップページ」は、生活のなかでPCを使いこなしている多くのユーザーには歓迎されるだろうが、今後は検索スキルを持たないユーザーへのデザイン的な配慮にも期待が持たれそうだ。


■都市間競争の時代、自治体サイトのあり方は?


現在、人口減少を背景に、盛んに「地方創生」がうたわれ、多くの地方自治体が他地域からの転入者を呼び込もうと、「移住・定住」を促進するためのキャンペーンや支援を行い、地域の魅力発信を競い合っている。だが、他の地域から引越しや移住を検討している人にとって、必ずといっていいほど最初に見るのは、自治体サイトのトップページだ。

もし、自治体サイトのトップページやメインメニューのデザインが洗練されていなかったり、必要な情報が探しにくく、ユーザーをイライラさせてしまったら、その自治体への印象も悪くなってしまわないだろうか?



筆者も、最近引越しをしたので、転入・転出の手続きや社会保険、ごみ収集、公共施設などさまざまな情報を求めて自治体サイトを閲覧したが、雑多に並んだ項目をクリックしていく行為にイライラして、「自治体のサイトって、やっぱりこうだよな…」と思わずにいられなかった。

自治体のWebサイトは、市民に対する自治体の姿勢が表れる、いわゆる「顔」といってもいいだろう。人々に「この街に住んで良かった」「この街に住んでみたい」と思ってもらいたいのであれば、Webサイトのデザインや機能にもっと力を入れるべきだろう。



神戸市Webサイトによると、同市は2008年から、地域の魅力を活かしつつ都市の価値をさらに高めるものとして、「デザイン都市」という新たな理念を掲げている。Webサイトのデザインにこだわる発想も、そうした新しいアイデンティティの体現なのかも知れない。

前述したように、「多岐にわたる情報を届け、全ての人にとって使いやすい自治体サイト」というのは、そもそも無理難題である。それでも理想に一歩近づこうとする意味で、神戸市のWebサイトリニューアルは画期的だし、「デザイン都市」を体現する「顔」にふさわしいと思える。同市の取り組みは今後、他の自治体にも大きな刺激を与えていくだろう。


●神戸市Webサイト
URL:http://www.city.kobe.lg.jp/

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