ソフトウェアに投資するApple、サービスに疎いティム・クックは何をすべきなのか
ソフトウェアに投資するApple、サービスに疎いティム・クックは何をすべきなのか
2016年6月20日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
WWDC 2016は予想通り、ソフトウェアに関する発表に止まり、少しは期待されていたMacBook Proの新モデルなどハードウェアの発表はなかった。だが、それはいい。新しいMacBookシリーズには(そろそろ追加でMacを買いたいという理由で)興味があるが、ここではそれは置いておくとして、Appleは実にやるべきことをちゃんとやっていない。
それは何か?「サービスに対する投資を怠っている」という点だ。これは開発費を出していないということではなく、「戦略的に十分な関心を払っていない」もしくは「動きが遅すぎる」ということである。
おそらく本コラムを読むユーザーであれば、MAGFAという言葉はご存じだろう。Microsoft、Apple、Google、Facebook、Amazonの5社の頭文字をとったものであり、IT・インターネットの分野で全世界を席巻する巨大企業たちの影響力の大きさを端的に示したものだ。
現在、多くの市場と領域でMAGFAが猛威を振るっており、多くのアイテムのスマート化を進めているわけだが、この5社の中でハードウェア企業はAppleだけだ。そしてAppleはサービスというものを軽視しているように思われる。
今のAppleは、iPhoneへの依存度が高過ぎるきらいがある。Apple TVやApple Watchなどの商品は、まだまだ事業の軸になるだけの力がない。iPhoneの性能を向上させたり、iOSのアップデートを進めていくことはもちろん重要なのだが、その行為はiPhone(というよりスマートフォン)がコモディティ化していく流れの中では、どんどん陳腐化していく恐れのある戦略である。
例えばFacebookの場合、Facebookは世界最大のソーシャルネットワークサービスであるが、そのアプリもしくはサービスとしてのFacebookの機能向上を図るという努力以上に、本来のFacebookとは別のサービスの開発や開拓へと戦略を切り替えている。具体的に言うと、Instant Articleのようなオリジナルコンテンツの囲い込みによるメディア戦略がそうだし、WhatsUpの買収やFacebookメッセンジャーのプラットフォーム化がそれである。
Microsoftは、85億ドルでスカイプを買い、エンタープライズSNSのYammerを12億ドルで買収し、今度はビジネスSNSのLinkedInを260億ドルで買おうとしている。Microsoftは、エンタープライズソーシャルという方向において、サービス事業の戦略は明確だ。彼らはもはやWindowsのアップデートやエクセル、ワードなどのドル箱アプリのアップデートではなく、全く異なる成長分野でのサービスを立ち上げることに必死になっているのである。
それに対してAppleは、iPhoneの普及によって生まれた大きなチャンスを無駄にしつつある。それはiMessengerを軸としたコミュニケーションプラットフォームへの投資だ。
それは何か?「サービスに対する投資を怠っている」という点だ。これは開発費を出していないということではなく、「戦略的に十分な関心を払っていない」もしくは「動きが遅すぎる」ということである。
おそらく本コラムを読むユーザーであれば、MAGFAという言葉はご存じだろう。Microsoft、Apple、Google、Facebook、Amazonの5社の頭文字をとったものであり、IT・インターネットの分野で全世界を席巻する巨大企業たちの影響力の大きさを端的に示したものだ。
現在、多くの市場と領域でMAGFAが猛威を振るっており、多くのアイテムのスマート化を進めているわけだが、この5社の中でハードウェア企業はAppleだけだ。そしてAppleはサービスというものを軽視しているように思われる。
今のAppleは、iPhoneへの依存度が高過ぎるきらいがある。Apple TVやApple Watchなどの商品は、まだまだ事業の軸になるだけの力がない。iPhoneの性能を向上させたり、iOSのアップデートを進めていくことはもちろん重要なのだが、その行為はiPhone(というよりスマートフォン)がコモディティ化していく流れの中では、どんどん陳腐化していく恐れのある戦略である。
例えばFacebookの場合、Facebookは世界最大のソーシャルネットワークサービスであるが、そのアプリもしくはサービスとしてのFacebookの機能向上を図るという努力以上に、本来のFacebookとは別のサービスの開発や開拓へと戦略を切り替えている。具体的に言うと、Instant Articleのようなオリジナルコンテンツの囲い込みによるメディア戦略がそうだし、WhatsUpの買収やFacebookメッセンジャーのプラットフォーム化がそれである。
Microsoftは、85億ドルでスカイプを買い、エンタープライズSNSのYammerを12億ドルで買収し、今度はビジネスSNSのLinkedInを260億ドルで買おうとしている。Microsoftは、エンタープライズソーシャルという方向において、サービス事業の戦略は明確だ。彼らはもはやWindowsのアップデートやエクセル、ワードなどのドル箱アプリのアップデートではなく、全く異なる成長分野でのサービスを立ち上げることに必死になっているのである。
それに対してAppleは、iPhoneの普及によって生まれた大きなチャンスを無駄にしつつある。それはiMessengerを軸としたコミュニケーションプラットフォームへの投資だ。
MAGFA各社は、モバイルインターネットにおけるコミュニケーションプラットフォーム、家屋や自動車のスマート化など、比較的共通した市場に大きな投資をしているが、本来であればAppleは他のどのライバルよりも優位に立てる土壌を持っていた。
彼らはiTunes StoreとiCloudで勝ち得てきた多くのユーザーのアカウントをiMessengerを基盤としてつなぎ合わせていくべきであり、そうすれば他のMAGFAたちを圧倒するチャンスがあった。
なのに、今回のWWDCにおいてもAppleはOSへの自らの依存度を告白し、ユーザーをネットワーク化していく「サービス」についての鈍感さをみせた。Appleが行うべきは、新しいOSの発表でも、新しいハードウェアの発表でもなく、新しいサービスの発表である。
iPhoneが輝きを見せるのはiTunes StoreやAppStore との連携あってのことだが、その二つのサービスはやや時代遅れになってきている。モバイルで人々が行うのはコミュニケーションだから、コミュニケーションにコミットしたサービスをAppleは早く革新してみせることが求められている、僕はそう考える。
ちなみに、ある種の禁じ手としては、Twitterを買う、という手も残っていると思う。TwitterをiMessengerとうまく連携させて再活性化することができれば、モバイル×ソーシャルの分野で、ほかのMAGFAたちに冷や汗掻かせられるのではないだろうか。
■著者の最近の記事
アップル「WWDC 2016」の直前予想!噂の全部を分析
マイクロインフルエンサーに右往左往するソーシャルメディアマーケティングの実態
歌でつながるSNS nanaの台頭、市場が発するモスキート音を聞き分けろ!
Amazon Echoのライバルとなるか? 声で家電を操作するGoogle Homeの可能性
iPhone SEが象徴するAppleの弱体化の兆し
[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
facebook:http://www.facebook.com/ogawakazuhiro