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「hello again」のイベントビジュアルに込められた意味とは?

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「hello again」のイベントビジュアルに込められた意味とは?


2016年10月27日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)


▷いよいよ明日未明!”この秋2回目”のスペシャルイベント

  

いよいよ日本時間28日未明に迫ったこの秋2回目のアップルスペシャルイベント。今回のキャッチコピーである"hello again"の文字と、その上に配置されたグラフィカルなアップルロゴがイベントのワクワク感を演出している。

この“hello again”でピンとくる方はそれなりのベテランユーザーに違いない。1984年「初代Macintosh」のデビューイベントでは画面に“hello”の文字が映し出され、1998年「初代iMac」発表の際には”hallo”に加え”again”の文字が括弧付きで表示された。その流れからも、今回のイベントはMacメインであることが読み取れる。


▷”hello again”の文字とロゴグラフィックが暗示するもの



しかし何故今回も"again"なのかが疑問だ。初代iMacの際は「最初のMacintoshと同じくらい革新的である」という意味を込めての"again"であった。もし今回発表されるモデルが改めて次の10年を見据えたようなイノベーションをもたらす程のものならば、"hello again"ではなく"hello yet again"(さらにもう一度ハロー)とすべきだからである。

そして“煙に巻かれたような”ロゴイメージは何を意味するのだろうか?筆者が思い出したのはインド発祥の「ホーリー祭(下図)」だ。出会う人全てにカラーパウダーをかけ合うこの祭りは“春の到来”を讃えるものであるが、いくらアップルがインドの今後に期待しているとはいえ季節外れと言わざるを得ない。

インドで行われる“春の到来”を讃える祭「ホーリー祭」 Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 Generic license image “Holi / Festival of Colors 2013” by Steven Gerner

インドで行われる“春の到来”を讃える祭「ホーリー祭」
Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 Generic license image “Holi / Festival of Colors 2013” by Steven Gerner

では別の見方ではどうだろう。英語には「集中砲火を浴びせる」という意味を持つ"bring smoke"という言葉がある。「USB Type-C」ポートの搭載で衝撃を与えた「12inch MacBook」以来、鳴りを潜めていたMacintoshラインに再びスポットライトが当たるであろう今回のイベントには相応しいグラフィックとして見ることが出来る。特に、噂通りOLED(有機発光ダイオード)ベースのタッチバーである「Magic Toolbar」と「Touch ID」を搭載したMacBook Proライン(13/15inch)と、MacBook(13inch)がデビューするならば、文字通りライバルメーカーに対する集中砲火となるだろう

▷「Magic Toolbar」の登場と既存インターフェースの行方


「Magic Toolbar」と「Touch ID」に関しては、既にMacOS Sierraの最新バージョンに含まれる「Apple Pay利用時の解説イメージ」によって使い方やデザインが公然の秘密となっている。単なるファンクションキーの代替であればあまりインパクトはないが、Touch ID利用についても言及するなど“ユーザー体験を向上させる重要な役割”を果たすことが見て取れ、この部分がモデルチェンジの要となることは明らかである。

またI/Oポート類が「USB Type-C(MacBook Proではポート形状が同一のThunderbolt 3を含む)」に統一されることもほぼ間違いないが、問題はイヤフォンジャックが廃止されるか否かだ。もし廃止されればiPhoneの発表時以上に賛否を呼ぶことは必至。アップルとしても「iPhone 7/7 Plus」のパッケージにミニジャックからLightningポートへ変換するアダプタを同梱したように、今回もUSB Type-Cへのアダプタを付属せざるを得なくなる。仮に「iPhone 7」同梱のEarPods(Lightningポート直結型)を繋ぐとしたら、さらにLightningコネクタからUSB Type-Cへのアダプタまで必要となってしまう。

もっと言えば「iPhone 7/7 Plus」のボディサイズに対してイヤフォンジャックの占めるスペースは割合大きく、排除することで空間を有効活用できたが、MacBook程度の大きさになると実質的な恩恵は殆ど無い。そんな訳で「ワイヤレスな世界」を目指すアップルとしては心情的にイヤフォンジャックを割愛したいところだが、少なくとも今回の世代では残す公算が強いものと予想できる。

同様に、一向にRetinaディスプレイ化されない「MacBook Air」も、エントリークラスのノートMacとしてしばらく併売される可能性はありつつも、実質的にはMacBookラインに吸収されて役目を終えていくであろうと考えられる。

 


▷ジョブズのロードマップを超えた今だからこそ"hello again"


ここで改めて"hello again"と挨拶している意味を考察すると、今回に関してはファンクションキーが変身したカラフルな「Magic Toolbar」を指していると考えるのが妥当ではないだろうか。故スティーブ・ジョブズが嫌っていたファンクションキーこそある意味レガシーとして残っており、かつ長きに渡って変えようがないと思われてきたユーザーインターフェースだ。

 

奇しくも今回のスペシャルイベントは、2011年10月5日に亡くなったジョブズが立てていたとされる「5年分のロードマップ」を超えて行われる初めての製品発表会だ。そこで生まれ変わったファンクションキー「Magic Toolbar」が"hello again"と挨拶し、新たに表舞台へと躍り出る。プレゼン内で初めて「Magic Toolbar」が披露される際、そこに"hello again"の文字が表示されていても不思議ではないと感じるのである。



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大谷和利氏近影

[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。
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