「実名SNSとAPI公開」(後編)
「実名SNSとAPI公開」(後編)
2008年7月28日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
米国のSNSはFaceBookが爆発的な増殖を示し始めて以来、実名を基本とするサービスの展開が主流になり始めている。もうひとつ見逃せない潮流は、APIの公開と、巨大なユーザーベッドを背景とした自社サービスのプラットフォーム化だ。
つまり、WindowsやMacのようなOS、あるいはそれらの上にかぶさるように存在するブラウザ(Firefox、IE7など)で稼働することを前提として現在はアプリケーション開発が行われているように、世界各国のエンジニアが作成したさまざまなアプリケーションを、各SNSが自分たちのサービスのうえで動かせるようにするということだ。
もっと具体的に言うと、たとえばFaceBookでは、自社のSNSのページにウィジェットを張り付けることができる。ウィジェットは天気を表示したり、ミニゲームであったり、RSSフィードを使ってさまざまなニュースを表示したりすることもできるものがあるのだが、このウィジェットを作ることができるのは社員や関係者だけではない。FaceBookならFaceBook上で、ウィジェットを動かすための仕様すなわちAPIが公開されているのだ。その結果、SNSのユーザーは自分のページに好きなウィジェットを張り付けて装飾して楽しむことができる。
わが国でウィジェットをブログパーツと呼ぶことが多いのは、日本ではウィジェットを自由に自分のページに張ることが許されておらず、ブログにしか張り付けることができないためだ。逆に言えばこの規制があるがために、日本ではウィジェットプラットフォームの事業化が非常に難しい。ウィジェットメーカーとSNSは共生関係にあるのだが、日本では成立していないのである。APIを公開するSNSが少ないからこそ(というよりmixiが公開していないから)日本にはウィジェットプラットフォームのベンチャーが生まれていないといえる(米国ではRockYouやSlideのようなウィジェットプラットフォームベンチャーが多額の資金を集めることに成功している)。
日本の特殊な環境を象徴する事象のひとつが、この実名SNSとAPI公開の普及の遅れといえるだろう。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。