鷹野雅弘[ DTP Booster  CSS Nite]に聞く Photoshop Illustrator CS5は導入すべきバージョンか!? 1/2

Photoshop およびIllustrator の最新バージョン、CS5が登場して約1年。最初は様子見だったクリエイターたちも多くの人が実際に手に取り、本当の実力があらわになってきた時期と言えるだろう。そこで、Web / DTP に関するトレーニングや書籍などの執筆活動を行っている鷹野雅弘氏に、その真価について話をうかがってみた。

  • Adobe Photoshop CS5の特徴 画像から不要物を簡単に除去できる「コンテンツに応じた塗り」や、
ディテールをきれいに切り抜ける「境界線の調整」など、写真加工の新機能を数多く搭載したことが話題になった
  • Adobe Illustrator CS5の特徴 立体的なアートワークを手軽に描ける「遠近グリッド」や強化され
た「絵筆ブラシ」、オブジェクト同士を効率的に合成できる「シェイ
プ形成ツール」など、さまざまな角度から機能向上が図られた
鷹野雅弘[たかの・まさひろ]
スイッチ代表。Webサイトの構築やコンサルティング、WebやDTPに関するトレーニングを行う。10冊以上の著書をもつ。CSS Nite、DTP Boosterを主宰。

Photoshop CS5をはじめて触ったときの印象を教えてください。

「正直なところ、新機能なんて出尽くして、もうこれ以上ないだろうと思っていたんですよ。それが『こう来たか!』というような内容が多くて、Photoshop CS5に搭載された機能に関しては素直にすごいと思いましたね」

具体的には、どの機能が魅力的だと思いましたか?

「まず、『境界線の調整』機能が強化されている点。髪の毛などのディテールを簡単かつきれいに切り抜けるようになっています。従来なら、何万円もするプラグインを使わないとできなかったようなことが、サクッとできてしまう。あと、『コンテンツに応じた塗り』もすごい機能です注1。多くのユーザーが、Photoshop CS5の進化には驚いたと思います」

それでは、Illustrator CS5についてはどうですか?

「……こっちは、何が変わったのかよくわからなかった(笑)。というくらい地味な印象でしたね。ただ、使い込んでいくうちに、ベーシックな部分でいろいろ変わっていることに気づきました」

注1写真の中の不要物を消すのに便利な「コンテンツに応じた塗り」機能
Photoshop CS5に搭載された「コンテンツに応じた塗り」機能の適用例。写真の中の不要物を囲むようになげなわツールなどで選択範囲をつくり、編集メニュー→“塗りつぶし...”を[使用:コンテンツに応じる]で適用するだけで除去できる

使い勝手が大きく向上したCS5

Illustratorでは、どのような改善点が印象に残っていますか?

「まずわかりやすいのは、線パネルが強化されて、矢印や破線が簡単に調整できるようになった点。また、複数のアートボードを管理しやすくなったのも便利。ひとつのファイルの中に、A案、B案、C案といった感じで複数案を同時に作成し、比較検討できるんです」

Illustrator CS5では遠近グリッドが搭載されて、立体的なアートワークも描きやすくなっていますね。

「確かにそういった大きな新機能もありますが、個人的には心に響かないんですよね(笑)。Illustratorに関しては、それよりもベーシックな部分での改良点にもっと注目すべきだと思う。『ピクセルグリッドに整合』などWebにコミットした機能が増えているのも個人的にはうれしかった。また描画モードが強化されて、『内側描画』と『背面描画』の2モードが追加されたのも便利ですね注2

従来より使い勝手がよくなっている部分はありますか?

Illustrator CS5で、⌘キー+クリックによって背面にあるオブジェクトを選択できるようになったのは、デザイナーにとってはかなりうれしい改善点じゃないでしょうか。ほかにもこれまでのバージョンで『あれ?』と思っていたところがいろいろとよくなっています。たとえば、Illustratorで透明効果を適用してEPS形式で保存するとストリークという極細の分割線が出ることがありましたが、それがかなり減っています。また、複数ページの文書の印刷速度が速くなるなど、パフォーマンス面も着実に改善されていますね注3
ただUIに関しては、あまり頻繁に変えるのはよくないと思うんです。新たなバグが出やすくなりますから。できればマイナーチェンジを重ねていい方向に行く、というスタンスをとってほしいなと思います」

 
注2「内側描画」と「背面描画」機能で作業効率を大幅にアップ可能
Illustrator CS5では、任意のオブジェクトを選択してからツールパネルで[内側描画]を選び、そのオブジェクトの前面に別の図形を描いたり画像を配置すると、もとのオブジェクトの形でクリッピングマスクされる。そのほか、オブジェクトの背面に新たなオブジェクトをそのまま描ける「背面描画」機能も便利だ
注3バグやパフォーマンスの改善が図られたIllustrator CS5
アドビ システムズ、岩本 崇氏のブログ(url. blogs.adobe.com/iwamoto/)の2011年6月3日付け記事にてピックアップされている。メーカー側がオフィシャルでこういったバグ修正について語るのはリスクがあり、めずらしい。そのリスクを押しても、アドビサイドがその安定性についてアピールしたいという意図が見えてくる

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