最近のウェブを巡る議論のなかでは、「デザイン」という視点が抜け落ちている。サイトの情報は、わざわざサイトのページを開かなくてもRSSリーダーで読むことができる。情報を細かい単位で切り離して、新たな価値を生み出していく。それ自体は悪いことではない。しかし、人間による編集やデザインという行為は、ウェブにとって価値のないものなのだろうか。ブログは新しい情報をフォームに入力するだけで発信することができるが、どのページも同じフォーマットに流し込まれ、レイアウトは同じだ。レイアウトが統一化されているともいえるが、ウェブのレイアウトは見て楽しむようなものではないということを示しているともいえる。

ウェブデザイナーは一時期人気な職業の一つだった。今でもまだ不人気ではないだろう。しかし、ウェブの未来からデザインが失われていくとしたら、この10年、ウェブにとってデザインが果たしてきたことはなんだったのだろうか。例えば中世の聖書の写本は、豪華な装飾で彩られている。だんだん装飾が増えたというのではなく、はじめから装飾的だった。グラフィック・デザイン、あるいは「文字のある面を装飾すること」というのは、「装飾」という言葉のイメージのように「付け足されたもの」ではなく、もっと根源的なものだ。今、ウェブからデザインが失われていくのだとすれば、それはウェブが豊かなメディアではなくなっていくということだ。デザインに関わっている人間としては、異を表明する必要があるのではないかと思うのだ。 Next>>>