
Web制作者としてこれだけは理解したい
Vista時代のWebデザイン
web creators conferenceが始まってから、今年でなんと5周年。記念すべき5周年・第1回目のコンファレンスは「Vista時代のWebデザイン」をテーマに、最新のノウハウが次々と披露されていった。国内屈指のトッププロダクション、(株)セカンドファクトリーと(株)バスキュールが、「これからのWeb」を熱く語る!
WPFとXAMLによって、Webのこれからが変貌する!
WPFが提供する
ユーザーエクスペリエンス
2007年初の開催となる今回のコンファレンスのテーマは、「Vista時代のWebデザイン」。Windows Vistaの発売によってWebの世界がどう変貌していくのか、そして、どのような知識を身につけておけばいいのかを、(株)セカンドファクトリー、(株)バスキュールの皆さんに語っていただいた。
Web業界の第一線で活躍するトッププロダクションがゲストとあって、当日は大盛況。用意された席がすべて埋まるほど多くのクリエイターが来場し、コンファレンスの開始前から会場は期待と熱気に満ちあふれていた。
やがてコンファレンスが始まり、まずは(株)セカンドファクトリーの東 賢氏が登壇。簡単に会社概要を説明したあと、同社の開発ポリシーについて熱弁を振るった。
「弊社では、“モノとしての品質”、“エモーショナルの品質”、“時代的な品質”、この3つの要素をベストな状態で提供するように心がけています。その結果、顧客にユーザーエクスペリエンスを提供していきたい。それが私たちの仕事だと思っています」
ユーザーエクスペリエンスとは、“製品、サービス、消費、所有を通じてユーザーが経験する有意義な体験(=最良の体験)”のこと。これを提供することが同社のもっとも重要なポリシーであり、命題なのである。ではこのポリシーを貫くために、これからのVista時代、何を意識し、どんなものを生み出せばいいのか。そこで同社が注目したのが“WPF”だった。
「WPF(Windows Presentation Foundation)とは、アプリケーションのプレゼンテーションを担う新たな共通基盤のこと。ブラウザのプラグインではなく、OSのプラグインのようなもので、これを通すことによって、OSのさまざまな機能を直接利用できるようになるのです」
こうWPFの概要について説明すると、例を挙げながら具体的にWPFの内容を説明。続けて、WPFを支える共通ファイルフォーマット(言語)である“XAML”について詳しくそのメリットを解説していき、実際に使用してみた実感として「XAMLはXMLベースの言語なので、デザイナー・プログラマー・ディレクターが、それぞれの立場から制作物にアプローチすることができるのです。これによって、グッと効率的な開発フローを実現できるようになりました」と感想を述べた。
最後に、XAMLへの対応がもっとも適切になされているWebオーサリングツールとして『Microsoft Expression』スイートを紹介。よりスピーディに、より豊かな表現で最先端のコンテンツをつくれるとあって、参加者も大いに興味を引かれている様子だった。
次世代のツール
『Expression Web』
第1部の後半では『Microsoft Expression』の具体的な使用方法について、デモンストレーションが行われた。デモを行ったのは、(株)セカンドファクトリーの新谷剛史氏。最初に、『Microsoft Expression』ファミリーのひとつである『Expression Web』について、「『Adobe Dreamweaver』のようなWebデザインツールだと思っていただけるとわかりやすいと思います」と前置きをすると、簡単なWebページをその場で実際に制作していった。テキストにどうやってデザインを当てていくのか、どのような操作をすればいいのかが一目でわかり、参加者も引き込まれた様子。また、「すでにつくってあるソースが簡単に定義できる」、「FTPだけではなくHTMLでデータを取ってこられる」などのメリットを新谷氏のデモを通して実感できたようだった。
このほかにも数々のメリットが披露され、あっという間に第1部も終盤へ。デモの最後に齋藤栄二氏が「デザイナーとプログラマーが近い距離で作業できるオーサリングツールだということが、わかっていただけたのではないかと思います」と語ると、これを受けて同社の東 賢氏が「こうしたツールを活用することで、結果的に冒頭で述べた“ユーザーエクスペリエンス”の提供に近づくというわけなんですね」と締めくくった。
WPFやXAMLの概要やメリット、そしてこうしたメリットを存分に生かすためのツール『Expression Web』。“これからの時代”に必要な要素が一通り網羅され、充実した内容の第1部となった。
より豊かに、より楽しく。WPFが実現した新しいコンテンツ
バスキュールのWPF作品
「DOMINOKEN」とは?
続く第2部では、(株)バスキュールの田中謙一郎氏が登壇。第1部の内容を受けて、同社初のWPF作品「DOMINOKEN」(www.microsoft.com/japan/windowsvista/webshowcase/demo1.mspx)の制作プロセスを詳細にプレゼンしていった。
「クライアントであるマイクロソフト(株)から最初に出された要望はおもにふたつ。“WPFの魅力が伝わるもの”、“WPFがWebコンテンツを制作する際のひとつの選択肢だと思ってもらえるようなもの”をつくってほしいということでした。それなら“WPFだからこそ可能になる新しいビジュアルを表現しよう”、“デモムービーだけでも楽しめるものにしよう”ということで、企画が進んでいったのです」
こうして内容を詰めながら、同時にWPFについての調査を開始。「そもそもWPFとは何なのか」というところから調べ始め、WPFでしかできないことを模索していったという。
「調べていくうちに、XAMLをベースにしたアプリケーション間のデータ連携ができることや、3Dを簡単にコントロールできることなどがわかってきました。あとはいろいろと実験をしてみて、さまざまなプロトタイプを作成。複雑な構造の橋をつくったり、魚の群れを動かしたりして、“何をしたらどうなるか”を少しずつ検証していったのです」
こう話しながら、実際につくったプロトタイプを次々と紹介する馬場鑑平氏。試行錯誤の過程がわかる貴重なデータが会場前面のスクリーンに惜しげもなく映されていった。
その後は、馬場氏と同社クリエイターの吉川佳一氏が、「DOMINOKEN」の具体的な作業、プログラム、留意点などを徹底的にレクチャー。同社のWPFノウハウが隅々まで説明され、熱心にメモを取る参加者の姿がそこかしこで見受けられた。
人物、ドミノ、料理といったオブジェクトのつくり方や、動きの付け方、そして、カメラアニメーションの詳細まで……。「こんなところまでつくり込んでいたのか」、「そんな作業を挟んでいたのか」と驚いてしまうような秘密が盛りだくさん。最後は「WPFという新たな選択肢の登場によって、Webがよりエキサイティングな状況になっていくことはまちがいありません。今後はさらに楽しみながら、新しいことにチャレンジしていきたいと思っています」という力強いコメントで締めくくられ、興奮冷めやらぬ中、第2部の終演となった。
効率のよいフローで
エクスペリエンスを提供
15分の休憩を挟んで開始された第3部。ここでは再び(株)セカンドファクトリーをゲストに迎え、WPFによって変化するワークフローやアーキテクチャの重要性など、おもに「制作に対する考え方」について語られた。
登壇者は、第1部の冒頭でも登場した東氏。手始めとして同社が手がけたWPFによるSNSサイトが紹介され、そのユニークな構造や、WPFだからこそ実現できる世界観などが披露された。
「これを制作したあとに、もしWPFがなかったら、われわれは3Dに追いつけなかったのかなぁと思いました。そう考えると、なんだかおもしろいですよね」
東氏は開発の過程を振り返ってこう語ると、第1部でも述べた「エクスペリエンスの提供」について、再び力を込めて話し始めた。
「Webの世界では、“エクスペリエンスの提供”は、もはや当たり前のことになってきています。私たちはその先、“エクスペリエンスデザイン”をしていかなければなりません。ゴールは何なのか、何のためにそれをやるのかを明確にして、そこに至るまでの方法を考える。なかでもこの、“ゴールを考える”という段階が非常に重要なんですよね」
続けて、そもそもWebとは何なのか、Webを取り巻く環境がどのように変化してきているのか、そしてこれから、どのようなスキルセットが求められるのかをていねいに解説。「これまでより広範囲で、質が高く、大規模・長寿命なものが求められている」としたうえで、WPFによっていかにニーズに合った開発チーム・ワークフローが形成できるかを説明した。
最後にまとめとして、多くのビジネス書籍を出版しているコンサルタント、トム・ピーターズ氏の言葉を紹介。
「『DISTINCT or EXTING』(差別化するか、さもなくば絶滅か)。自分たちがやれることは何なのか、そしてそれは本当にベストなのだろうか……、こういったことをつねに意識することが、これからさらに重要になってくると思います」と語り、第3部を刺激的な言葉で締めくくった。
現場での開発を見据えた、活発な意見交換
デザイナー、プログラマー
の立場はどう変わる?
すべてのデモやプレゼンテーションが終了したあとは、毎回恒例の質疑応答が行われた。壇上には今回のゲストたちがずらりと勢揃い。編集部のスタッフが会場に向かって「質問がある方はどうぞ」と促すと、即座に手が挙がり、活発なやりとりがかわされた。
質問内容は、マシン環境から開発工数に関するものまで実にバラエティに富んでいたが、なかでも盛り上がったのが「デザイナーかプログラマー、どちらの立場の人間がインタラクションを実装する立場になればいいのか」というものだった。プレゼンで語られた「WPF、XAMLによってデザイナーやプログラマーが共通の基盤で制作にアプローチできるようになった。これからは、デザインを実装する人とプログラミングを行う人の間に“かぶった部分”のインタラクションを実装する人が必要になる」という話を受けた質問だが、これには登壇した5人のクリエイター全員が回答。「今後マイクロソフト(株)の『Expression Blend』が本格的に使えるようになれば、デザイナーがインタラクションを考えることもあり得る」、「案件によって違うので一概には言えない」などの答えが飛び出した。
最後に、(株)セカンドファクトリーの東氏が回答。
「プログラマーか、デザイナーかではなくて、どちらからアプローチしてもいいのではないかと思います。むしろ、どちらがインタラクションを担うかと考えている時点で止まってしまうのではないかと。せっかく『Microsoft Expression』のような便利なアプリケーションがあるのだから、いろいろな立場の人がアプローチすればいい。自分はここが得意だけど、さらにここまでやります、みたいな意識をもつことが大事なのではないでしょうか」と、登壇者の回答をまとめ上げた。
WPFの情報源は
いったいどこにあるのか
質疑応答の後半では、「WPFの情報源について教えてほしい」という基本的かつ興味深い質問も。これには(株)バスキュールのクリエイターが、キッパリと「僕らが『DOMINOKEN』をつくった時点で、日本語の情報源はほぼゼロでした」と回答した。
「WPF開発チームのブログを読んだ程度で、あとは自分たちで実験を繰り返していったという状態です。あるアニメーションをXAMLで制作して、同じものをC♯でつくったりということもしましたね。とにかくいろいろなやり方を試しました。今は『DOMINOKEN』の開発ブログが公開されているので、これを見ていただければ参考になるかと思います」
こう説明し、参考文献なども紹介。質問者だけでなく参加者たちも、メモを取りながら回答に耳を傾けていた。
そのほかにもさまざまな質問ややりとりが行われ、あっという間に約30分の質疑応答が終了。今回も熱気の冷めやらぬ中、充実したコンファレンスが幕を閉じた。
終演後はロビーラウンジに場所を移し、恒例の懇親会がスタート。飲み物を片手に和やかに談笑する参加者たちの姿があちらこちらで見られ、また名刺交換も活発に行われている様子だった。もちろんゲストの周りには黒山の人だかり。突っ込んだ質問を投げかけるクリエイターや挨拶をする参加者が列をなし、にぎやかな雰囲気が広がっていた。
WPF、XAMLについての最新ノウハウが余すところなく語られた今回のコンファレンス。懇親会も含めると約4時間半の長丁場ではあったが、多くの参加者が何かしらの発見や充実感を持ち帰ってくれたようだ。
なお、次回のコンファレンスは2007年5月11日(金)の開催を予定している。
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