MdNCORPORATION

MdNのリニューアルに寄せて モザイク状のクリエイションの世界

 

 

正直、月刊MdNをつくってきて窮屈に感じていたところがありました。「これまであまりやってなかった、新機軸の企画がやりたい」と思っても、その記事がほかの記事となじまずに浮いてしまうことが容易に想像できる。そんなに大胆なことをやろうとは思ってないのに、変化を許してもらえない。なにか、MdNの方に拒絶されてしまうような感覚です。

 

僕は職業柄、グラフィックデザイナーと話す機会がありますが、彼らとの会話の中で、よくこんなことを聞きます。「この文字を大きくしてほしいとクライアントから言われるけど、そんなに簡単じゃない。そのためには写真のバランスを変えなくてはいけないし、そうするとここの色も見直さなくちゃいけない。ちょっと変えてと言われても、結果的に大きく変えなくてはいけないことがある」。

 

まったく同じ理由で、今月からMdNの特集の在り方、連載内容をすべて変えました。今までのMdNからほんの一歩踏み出そうと思ったら、すべてを変える必要があった。

 

リニューアルをする上で、ヒントにしたものがいくつかあります。そのひとつが「ニコニコ超会議」。数時間しかいませんでしたが、こんなデタラメな場はないと思いました。「踊ってみた」で振りコピを披露する女の子たちのそばで政治家などの討論会が行われている。その奥では、文学フリマで自主制作の本が販売されている。それぞれ、バラバラな方向性のものがひしめき合っている。もう一度言いますが、それはデタラメな風景としか言いようがなかった。でもこの在りようが、クリエイションの「いま」なんだな、とも。

 

そんな「いま」をMdNに反映できたら……。そこで、特集はあえてボリュームを落としつつも、毎月基本的に2本入れることにし、逆に連載はそれぞれボリュームをある程度取りつつ、キャラ立ちの濃いものに生まれ変わらせました。色合いの異なる特集と連載たちがモザイク状になって月刊MdNを形づくっている。ひとつの大きな色ではなくモザイク状。ニコニコ超会議をはじめ、いまのクリエイティブシーン全般から感じられるそんなイメージ、世界観にMdNを接続させようという試みです。

 

結果的に、このリニューアルでずいぶんとMdNは自由になったな、というふうに感じています。組版の専門的な話もできそうですし、人気のイラストレーターに登場してもらう機会も増えそう。もちろんアートディレクターのこだわりの話もさらにボリュームアップでうかがえそうだし、AKB48のジャケットの特集だって組めそうです。

 

と同時に、このMdNの新フォーマットはモザイク状に記事が並んでいるイメージなので、形骸化することなく、時代の要請によって新陳代謝が行われていくのでは、とも思っています。そう、1年後、2年後には「グラフィックデザイナーに最新の情報を伝える」という本質はそのままに、形がすっかり変わっている可能性も。今後の展開にも、ぜひご期待いただければと思います。

 

※この文面はMdNリニューアル号の2013年8月号に掲載されたものです

 

MdN編集長
本信光理

 

 

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