第2話 クリエイティブ・ディレクターという仕事について | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第2話 クリエイティブ・ディレクターという仕事について

2024.4.25 THU

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SUBARUやコカ・コーラのキャンペーンサイトなど、インタラクティブなWebサイトを数多く手掛けているGT INC.のクリエイティブ・ディレクター、内山光司氏。今回はプロデューサーではなく、Webにおけるクリエイティブについて、クリエイティブ・ディレクターである内山氏に、クリエイティブ・ディレクターの仕事について、Webにおける映像やYouTubeなどの話を聞かせていただいた。


第2話 クリエイティブ・ディレクターという仕事について



——クリエイティブ・ディレクターはどんな仕事ですか?

内山●クリエイティブ・ディレクターというと、いまでは広告だけでなくファッションの世界などいろいろなところで使われていますが、広告業界においては最終的には企業の製品を売るとか、ブランディングを作るために機能するわけで、僕らは企業のマーケティング活動のために知恵を使わないといけないと思っています。そのためにはある種のマーケティングマインドがないと成立しないんです。ファッション業界だったら、自分のセンスや世界観をいかに広げていく、形にしていくことが大事だったりしますよね。僕らもそういったことは大切です。でも、僕らの仕事は自分を表現する仕事であること以上に、クライアントのニーズにどう答えるかということが加わってくるので、そのなかで自分のよさをどう生かすかということがクリエイティブ・ディレクターの仕事じゃないかと思います。

——クリエイティブ・ディレクターとプロデューサーとの違いは?

内山●仕事の役割が違っていると思っています。ものをつくるという目標では一緒ですが、僕の業態の仕事の中では、プロデューサーというのはスケジュールと予算管理が最大の仕事で、クリエイティブ・ディレクターはある種の世界観をつくりだすのが仕事だと思います。僕はそこを分けておかないといけないと思っています。Webの仕事だと、そこがわりとあいまいなことが多くて、クリエイティブ・ディレクターと名乗っていても実際にはプロデューサーの仕事をやっていたり、あるいは逆だったり。でも僕らのようにクライアントの予算でクリエイティブ的にこれはゆずれないというケースや、現実的にビジネスとしてはまらないといったことが発生するわけで、それをひとりの人間のなかでやろうとすると妥協点が見つけにくいんです。

だからしっかりと分担をわけて、プロデューサーとクリエイティブ・ディレクターとの摩擦とか調整のなかで、ベストを探しだしていくということが大切だと思うんです。映画のシステムなどはまさにそうですよね。僕はそういう形に近づけていったほうが、大きな予算を扱う時にはなおさらですが、結果的にいい仕事ができるし、いいクリエイティブができると思っています。

——そのバランスは難しいですよね。

内山●そうですね。けっしてどちらが優先するということではないですよね。状況にもよりますし。お客さんが望んでいない自己満足のためだけのクリエイティブだったらプロデューサーが押さえ込むべきだし、さまざまな事情よりも仕上がりとしてクリエイティブが大きな影響を与える仕事もあるでしょうし。そういった局面は常にありますよね。僕のなかでのプロデューサーとクリエイティブ・ディレクターとの違いというのはそこでどのような判断をするかの違いですね。

——TVやグラフィックなど他の広告メディアと比較してWebというメディアではクリエイティブに違いがありますか?

内山●大きな違いはないと思います。逆にWebはこれまであまり注目されていなかったし、予算もかけられていなかった。あまりよくわからないメディアだったから、野放図にされていたメディアだったんですよ。逆に僕達から見たらいろいろ自由にもできたし、クライアントも実際のところなにがいいのかよくわからない、という状況もあったかもしれない。でもそれは間違っていると思っています。僕はWebにこそクリエイティブが重要だと思っていますし。かといってWebクリエイターとかWebデザイナーとかのマスターベーションの場所になってしまってもしかたないので、そこに広告的なクリエイティブ・ディレクションをどう入れていくのかが、いまこそ大切だと思っている。


——Webデザインについてはどう思いますか?

内山●僕はクリエイティブ・ディレクターであって、デザイナーではないので、逆に守備範囲を広く持っていることが大切だと思っています。デザイナーだと自分の得意な分野とかがあったほうがいいかもしれないですけど。デザインに関しては特に意識的にしている自分のスタイルというのはないですね。でも、背景を白にしているサイトは多いですね。

——それはどうしてですか?

内山●シンプルに見やすいと思うから。モニタを通した時に、透過光だし、最近は大画面ディスプレイも増えてきましたが、そんなに広いところで見る機会も少ないですし、最低限の見やすさとか、文字を読む時の疲れなさとか、そういうことはサイトを作るときには意識していますね。もちろんすべて白バックばかりではないですが、これまでいろいろなデザイナーと仕事をしてきましたがCD-ROMの頃から一貫して白バックに黒文字で仕上げることが多いですね

——Webにおけるクリエイティブにおいて大切な要素とはなんだと思いますか?

内山●それは難しいですね。ずっと前からの僕の持論なんですが、テレビや雑誌広告などの他のメディアと比較して、最もWebにとって大事なことは、なにを伝えたいかという以前に、ユーザーがなにを知りたいかということをしっかりと見極めないといけないということだと思うんです。

つまり、ユーザーのモチベーションの有り様がWebと他のメディアとの違いではないかと。Webで見ているときは、モニタに向かってやや前のめりになっているじゃないですか。家でくつろいで映画やTVを見るときは、ソファで腰掛けて楽な状態で見るだろうし、雑誌とかもリラックスしながら読みますよね、どちらも基本的に受け身の状態で見るものなんです。でもWebは違いますよね。Webは自分で知りたいことがあって、そこにきている。広告は基本的にはユーザーが望まないものなんです。広告を見たいと思ってテレビをつける人は少なくて、ドラマが見たいから見ているわけで、そこで広告にたまたま接触する。新聞も記事を読みたくてページをめくっているときにたまたま広告と出会ったりするわけです。でもWebぺージは必ずそこにいるからには理由があるんですよね。検索ワードを入れて辿り着いたか、自分でURLを入れたか、ブックマークから入ったか、どこかでリンクを踏んだか。少なくともそれを見たいという意思があってそこにきている。そこが一番大きな違いですよね。だから、ユーザーの気持ちが前のめりになっているんです。

TVCMなど通常の広告では、そもそも興味がないわけだから、すごく面白いものにしたりとか、ある種の強烈なアテンションをつくりだしたりして、人の目を惹くということが必要になってきます。もちろんWebでも必要だけど、なにがTVCMと違うかというと、Webは最初からユーザーがこっちを向いているということです。そういう人に対してどうしたらもっともっとこちら側に引きずりこむことができるか。そこが重要だし、一番違うし、新しいし、面白いところかなって思います。




(取材/文:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)






内山光司
GT.INC
クリエイティブディレクター


1984年電通入社。2001年(株)ワンスカイ設立5年間活動後、2006年GT INC.設立。主に広告キャンペーンの分野でウェブサイトのディレクションを行う。受賞歴として、東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ、文化庁メディア芸術祭優秀賞、One show Interactive Gold Pencil、New York ADC、D&ADAwards、グッドデザイン賞他、多数。

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