資生堂unoの広告キャンペーンをはじめ、なにかとタッグを組んで仕事をする機会の多いアーティストのヒロ杉山氏と、クリエイティブ・ ディレクターの箭内道彦氏。現在、リアルタイムクリエイティブエージェンシー「風とバラッド」の経営陣としても名を連ねる二人だが、その出会いから制作背景、お互いのデザイン観や興味などについて語り合っていただいた。
第1話「安請け合い派と安頼み派」
面白そうだったら、結果がどうあれやってみる
──今回の対談は「デザインの裏側」がテーマです。
ヒロ●ぼくら、完全に裏側の人たちだからね……。
箭内●裏というか、かなり外側ですよね(笑)。
──そういう自覚があるんですか?
箭内●僕はかなりあります。
ヒロ●僕も普段デザイン的なことをやってるけど、自分がデザイナーとは一度も思ったことがないですね。
──そもそも、そんな二人の出会いとは?
箭内●たしか、Mean Machine(*1)のロゴを頼みにいったのが初めてでしたよね?
ヒロ●そう。その頃、箭内さんはまだ博報堂の会社員時代で。でも、結局その仕事は成立しなかったんですよ。
箭内●そうだ。なんでダメになったか、もう忘れちゃったけど。
ヒロ●で、その次になにか一緒に……ということで、ジャミロクワイのアルバム用15秒スポットを作ってくれないか、と。僕は当時、VJや谷田(一郎氏)と組んで映像を作る機会はあったんだけど、単独でCMを手がけたことはなくて。だから「できるかな?」と思いながら、とりあえず受けてみたんです。
箭内●僕、やったことがない人に頼んで、不安になるのが大好きなんですよね(笑)。逆にいうと、ビギナーズラックが期待できるわけじゃないですか。それ以前にヒロさんは、すでにキムタクのTBCとかで広告の仕事をやってたし。ま、半分鼻につきつつ、半分うらやましいと思いつつ(笑)。
──それ以降は、気も合って?
ヒロ●そうですね。そこからちょこちょこ、PVとかを一緒に作り始めて。二人でスタジオや編集室にいる時間が長いから、ソファーに座りながら「次、こういうのがあるんだけど、やってみる?」って話になるんです。
箭内●そこから切れ間なく。
ヒロ●うん。僕は“安請け合い派”だからね(笑)。
箭内●安請け合いを大事にする二人なんですよ。安請け合いって、ある程度自信とか、自分を追い詰めないとできないことだから。ヒロさんは見事に“安請け合い派”で、僕は“安頼み派”で(笑)。
ヒロ●そこは噛み合ってましたね。
箭内●ヒロさんのスタンスが、面白そうだったら結果がどうあれやってみたり、仕事やお金になるかわからなくてもやってみたり。そこが素晴らしい。……こんなことを言ってしまうと、ヒロさんに依頼が集中しそうで心配だけど(笑)。
ヒロ●ぼくら、完全に裏側の人たちだからね……。
箭内●裏というか、かなり外側ですよね(笑)。
──そういう自覚があるんですか?
箭内●僕はかなりあります。
ヒロ●僕も普段デザイン的なことをやってるけど、自分がデザイナーとは一度も思ったことがないですね。
──そもそも、そんな二人の出会いとは?
箭内●たしか、Mean Machine(*1)のロゴを頼みにいったのが初めてでしたよね?
ヒロ●そう。その頃、箭内さんはまだ博報堂の会社員時代で。でも、結局その仕事は成立しなかったんですよ。
箭内●そうだ。なんでダメになったか、もう忘れちゃったけど。
ヒロ●で、その次になにか一緒に……ということで、ジャミロクワイのアルバム用15秒スポットを作ってくれないか、と。僕は当時、VJや谷田(一郎氏)と組んで映像を作る機会はあったんだけど、単独でCMを手がけたことはなくて。だから「できるかな?」と思いながら、とりあえず受けてみたんです。
箭内●僕、やったことがない人に頼んで、不安になるのが大好きなんですよね(笑)。逆にいうと、ビギナーズラックが期待できるわけじゃないですか。それ以前にヒロさんは、すでにキムタクのTBCとかで広告の仕事をやってたし。ま、半分鼻につきつつ、半分うらやましいと思いつつ(笑)。
──それ以降は、気も合って?
ヒロ●そうですね。そこからちょこちょこ、PVとかを一緒に作り始めて。二人でスタジオや編集室にいる時間が長いから、ソファーに座りながら「次、こういうのがあるんだけど、やってみる?」って話になるんです。
箭内●そこから切れ間なく。
ヒロ●うん。僕は“安請け合い派”だからね(笑)。
箭内●安請け合いを大事にする二人なんですよ。安請け合いって、ある程度自信とか、自分を追い詰めないとできないことだから。ヒロさんは見事に“安請け合い派”で、僕は“安頼み派”で(笑)。
ヒロ●そこは噛み合ってましたね。
箭内●ヒロさんのスタンスが、面白そうだったら結果がどうあれやってみたり、仕事やお金になるかわからなくてもやってみたり。そこが素晴らしい。……こんなことを言ってしまうと、ヒロさんに依頼が集中しそうで心配だけど(笑)。
バーバーくん、そして悪魔の囁き
──箭内さんが博報堂時代、ヒロさんとの仕事で思い出深いものは?
箭内●その頃、一緒に仕事して面白かったのは「バーバーくん」でしたね。ヒロさんからある日、携帯にメールが来て「カルビくんとナムルちゃんってどう?」って。なんじゃこりゃって思ったら、いわく「ちょうどBSE騒動で焼肉屋さんが苦しいときだから、キャラクター作って役に立ちつつ、一山当てようよ」って(笑)。
ヒロ●ハハハ。
箭内●で、焼肉のたれメーカーとかに企画を持っていこうとしたんだけど、担当がわからなかったりでほったらかしにしてたんです。そうこうしてたら、別のところから本当にカルビくんが出ちゃった。
ヒロ●シンクロニシティだったね(笑)。
箭内●やべぇ、ヒロさんに怒られるって思ったら、すかさず今度は「理容店にみんなが行くように、バーバーくんはどう?」というメールが入って。
ヒロ●次の使命ね(笑)。
箭内●これは動かないとマズイと思って、すぐ104で理容店の全国組合を調べて、プレゼンに行ったんです。結果的に歌を作ったり、キャラ作ったり、PV作ったり。
──クライアントを自前で作り出す方式ですね。
ヒロ●僕は昔からそういうのをチョコチョコ思いつくんだけど、自分では動けないタイプなんですよ。で、箭内さんはまだ博報堂にいたから、なんとかしてくれるんじゃないかなと思って。
箭内●というか、営業ですよね。エンライトメントの(笑)。
ヒロ●結局ダメだったけど、最初はフィギュアも20個くらい作る構想だったんですよ。それを理容組合の加盟店、全国に10万軒ほどあるので、全部買ってもらうと推定8億円は儲かる予定だった(笑)。
箭内●計算したら「すごい額になるぞ」って、二人でドキドキしちゃって。勝手に皮算用して「いまからマンションでも探しに行くか」って(笑)。
ヒロ●そういうことを全部、別の仕事の編集室でしゃべってましたね。
箭内●そもそも僕が独立したのも、そういう現場でヒロさんが「会社辞めちゃいなよ、辞めちゃいなよ……」って、耳もとで囁き出したからなんです。あれで洗脳された。全然辞める気がなかったのに。
──会社にいて、自由気ままにやるほうが性格的に合ってました?
箭内●ええ。もともと合ってました。
ヒロ●でも、辞めたほうがよさそうな人っているじゃないですか。そういう人たちは、肩を押されるのを待ってるのかなって。
箭内●一番ひどかったのは、フルーツポンチ(*2)というアイドル・ユニットのCDジャケットを一緒に作ったとき。僕がおおまかなところを作って、あとはお願いしますってヒロさんに託したんですね。で、もし会社辞めるんだったら、冗談でこんな会社名がいいなと言ってた名前があって、ヒロさんがそれを勝手にロゴ化して載せちゃった。
ヒロ●フフフ。
箭内●印刷されてから気がついたんですね。どんどん既成事実にしていく感じ。リリー・フランキーさんがヒロさんのこと「七三分けの悪い奴」って呼んでるんですけど……その通りなんですよ(笑)。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
次週、第2話は「お菓子屋の息子と歯医者の息子の結託」についてうかがいます。
箭内●その頃、一緒に仕事して面白かったのは「バーバーくん」でしたね。ヒロさんからある日、携帯にメールが来て「カルビくんとナムルちゃんってどう?」って。なんじゃこりゃって思ったら、いわく「ちょうどBSE騒動で焼肉屋さんが苦しいときだから、キャラクター作って役に立ちつつ、一山当てようよ」って(笑)。
ヒロ●ハハハ。
箭内●で、焼肉のたれメーカーとかに企画を持っていこうとしたんだけど、担当がわからなかったりでほったらかしにしてたんです。そうこうしてたら、別のところから本当にカルビくんが出ちゃった。
ヒロ●シンクロニシティだったね(笑)。
箭内●やべぇ、ヒロさんに怒られるって思ったら、すかさず今度は「理容店にみんなが行くように、バーバーくんはどう?」というメールが入って。
ヒロ●次の使命ね(笑)。
箭内●これは動かないとマズイと思って、すぐ104で理容店の全国組合を調べて、プレゼンに行ったんです。結果的に歌を作ったり、キャラ作ったり、PV作ったり。
──クライアントを自前で作り出す方式ですね。
ヒロ●僕は昔からそういうのをチョコチョコ思いつくんだけど、自分では動けないタイプなんですよ。で、箭内さんはまだ博報堂にいたから、なんとかしてくれるんじゃないかなと思って。
箭内●というか、営業ですよね。エンライトメントの(笑)。
ヒロ●結局ダメだったけど、最初はフィギュアも20個くらい作る構想だったんですよ。それを理容組合の加盟店、全国に10万軒ほどあるので、全部買ってもらうと推定8億円は儲かる予定だった(笑)。
箭内●計算したら「すごい額になるぞ」って、二人でドキドキしちゃって。勝手に皮算用して「いまからマンションでも探しに行くか」って(笑)。
ヒロ●そういうことを全部、別の仕事の編集室でしゃべってましたね。
箭内●そもそも僕が独立したのも、そういう現場でヒロさんが「会社辞めちゃいなよ、辞めちゃいなよ……」って、耳もとで囁き出したからなんです。あれで洗脳された。全然辞める気がなかったのに。
──会社にいて、自由気ままにやるほうが性格的に合ってました?
箭内●ええ。もともと合ってました。
ヒロ●でも、辞めたほうがよさそうな人っているじゃないですか。そういう人たちは、肩を押されるのを待ってるのかなって。
箭内●一番ひどかったのは、フルーツポンチ(*2)というアイドル・ユニットのCDジャケットを一緒に作ったとき。僕がおおまかなところを作って、あとはお願いしますってヒロさんに託したんですね。で、もし会社辞めるんだったら、冗談でこんな会社名がいいなと言ってた名前があって、ヒロさんがそれを勝手にロゴ化して載せちゃった。
ヒロ●フフフ。
箭内●印刷されてから気がついたんですね。どんどん既成事実にしていく感じ。リリー・フランキーさんがヒロさんのこと「七三分けの悪い奴」って呼んでるんですけど……その通りなんですよ(笑)。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
次週、第2話は「お菓子屋の息子と歯医者の息子の結託」についてうかがいます。
(*1)CHARA、YUKI、ちわきまゆみ、伊藤歩、YUKARIによるスペシャル・バンド。2001年7月『Mean Machine』でインディーデビュー。
(*2)テレビ東京の早朝バラエティ番組「おはスタ」から生まれた、5人組アイドルグループ。ネーミングは箭内氏による。
(*2)テレビ東京の早朝バラエティ番組「おはスタ」から生まれた、5人組アイドルグループ。ネーミングは箭内氏による。
[プロフィール] ひろ・すぎやま●1962年東京都生まれ。東洋美術学校卒業後、湯村輝彦氏に師事。92年に独立、97年「エンライトメント」設立。グラフィック・デザイ ンや映像制作、VJなどの活動と同時に、フリーペーパー『TRACK』『Display』やアート作品集の発行を手がけている。国内外での個展開催、グ ループ展への参加多数。http://www.elm-art.com/ |