第3話 magabonの運営システムについて | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2006年、タグボートと電通が組んでスタートした雑誌総合情報サイト「magabon(マガボン)」は、さまざまな雑誌の一部を「立ち読み」ではなく 「ちょい読み」できるいま話題のサイトである。そのmagabonの編集長でもあり、タグボートのアート・ディレクターである川口清勝氏に話をうかがった。

第3話 magabonの運営システムについて





??magabonは現在、何人で運営しているのですか?

川口●現在はcamomeの人間と外部プロダクションを除くと、フルタイム14人くらいが働いています。パートタイムを入れると20人以上じゃないですかね。自分たちで更新したり、プログラムをつくれないといけないので、それを得意とするシステム系のチームと、広告代理店や雑誌社担当のチーム。magabon全体を見るチームとオリジナルのコンテンツを制作するチーム、そしてタイアップコンテンツを作るチームがあります。いくつかのチームに分かれていますが、それぞれのチームが統一感をもってディレクションされています。時にはタグボートのクライアント・ブランドキャンペーン制作チームが付いて、あるキャンペーンの表現をmagabon上で展開することもあるし、そのキャンペーンコンテンツをmagabonが制作したり、あるいはそのキャンペーンをmagabonではなくてcamomeが担当するということもあります。


??magabonの更新頻度はどのくらいですか?

川口●雑誌については、雑誌の発売されるタイミングで更新しています。現在60誌くらいでしょうか。今度Deftechとの新しいコンテンツがはじまるのですが、それはDeftechのプロモートとして展開するのでDeftechのタイミングにあわせて更新することになるでしょうし。更新は状況にあわせてですね。それ以外にmagabonオリジナルの読み物や、新しく出た雑誌をみんなで総評する「雑誌読みの会」というのを月2回ぐらいやっているのですが、コンテンツによって違うので、一概にはどれくらいで更新するとか言えないんですけど。

??実際にスタートしてからどうですか?

川口●ものすごく大変。良かったことは思ったより早くページビューが1000万を越えたということかな。そういったことからもインターネットにはフォローが吹いていることは確かですね。こういう新しいモデルのサイト、雑誌が立ち読みできる場所ができたというだけで、ある種の人たちを誘導することができるんですからね。大変なことは日々更新したり日々通用するコンテンツを作らないといけないことですね。サイトを見に来る人はほぼ毎日見にくるので、更新されないと信用されないみたいで。

magabonは、本当は最先端の人たちよりはほんの少し後だけど、でも遅れすぎない人たちのための位置くらいがちょうどいいと思うんですよね。アナログとデジタルとの中間とでもいったらいいでしょうか。デジタルだけが好きというような人は、ネットを見ていれば本屋に行く必要ないと思ってる人たちだし、最先端と最後尾にいる人たちはなかなかお客さんになりづらい。magabonは基本的に雑誌の情報を「ちょい出し」して雑誌のよさ、特集のよさを知ってもらって本屋で買ってもらうためのものだから、デジタルが好きなんだけどアナログにもいいところあるよねって思っている、ほんの少しだけ前にいる人たちはお客さんになってもらいやすい。同じように、旧メディアにいる人たちで、アナログが好きなんだけどデジタルのよさも知ってるんだよなといった、ほんの少しだけ後ろにいる人もお客さんになりやすいですよね。でも、デジタルのデの字も大っ嫌いという人や、ネット上にすべてがあると思っているような人たちは難しい。

インターネットというメディアの難しさはそういったところにありますよね。たとえば、中吊り広告や新聞広告だったらこれまでのアナログの方法論が通用するでしょうけど、僕らはデジタルとアナログという狭間でコンテンツをつくらなければならない。その作業が結構大変です。お客さんも、雑誌社も編集者もクライアントもみんな細分化されてきているとはいえ、僕たちはマスを取らなければいけないし、特殊な一部の人のためだけのコンテンツだけでは困るわけで。そういったバランスをとるのが極めて難しいということがわかりましたね。

キャンペーンサイトを作る方法とはまったく別の方法ですよね。キャンペーンサイトは、商品の価値をあるタイミングで見極めて、デジタルとアナログをうまく使い分けて旗を振れば、それに興味がある人は自然と集まってくるんです。しかも期間は長くても半年、短かいときは1クールぐらいで終わるじゃないですか。それは条件として極めてやりやすいんですよね。でも、インターネットのように継続性が重要なメディアでは、いきなりポンと出してもすぐに人は集まってきてくれない。人を集めるための作業に長期にわたって集中しなければいけないんです。常々絶えず自分の周りに人やコンテンツを集めておかないと、基本的に発信しても誰も見てくれない。

??そのためには何か具体的にされているのでしょうか?

川口●自分たちがやる行為はすべてそれに結びついてると思いますね。ひとつひとつのコンテンツを面白いだけではなくて、継続性のあるものにしているし、見ていない人のためのコンテンツだって考えている。すでに集まってきてくれている分野の層の人たちは、さらにより厚いものにしなければいけないし、まだ集められてない層の人々をどうやって集めるのか、それがコンテンツの役割になるわけで。だから「ある分野の層の人たちがまだ集めらていないぞ」って言ったら、その人たち向けのコンテンツをすぐに作らなければいけない。たとえば波乗りの雑誌だったら、波乗りのことだけやっていれば好きな人たち集まってくるじゃないですか。それとはちょっと違っているんですよね。そこが大変ですね。







(取材/文:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)





川口 清勝(かわぐち・せいじょ)

1962年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。電通クリエーティブ局アートディレクターを経て、1999年クリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を設立。
主な仕事に、富士ゼロックス、マグライト、英会話のGABA、サントリーDAKARAなど。
東京ADCグランプリ、The One Show Design金賞、New York ADC他受賞多数。

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