第1回 Webユーザビリティ(Web Usability)とは? | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、Webユーザビリティ―信頼を生む“使いやすさ”のデザイン

第1回 Webユーザビリティ(Web Usability)とは?


ユーザビリティを日本語訳すると「使い勝手」や「使いやすさ」とされる場合が多いのですが、このため、操作性の良し悪しといった狭い意味に取られがちです。細部のユーザーインターフェイスへの配慮が必要なのはもちろんですが、ユーザビリティの本質は、ユーザーに対するホスピタリティ精神にあると思います。ネットでは、その向こうのユーザーの姿を見ることができません。だからこそ、常にユーザーを念頭に置いてデザインすることがより重要な課題といえるでしょう。

(解説:石田優子)

著者プロフィール用イラスト [プロフィール]
いしだ・ゆうこ●クロッシングフィンガーズ代表。ユーザーエンパワーメントという手法により、ユーザー視点に立ったサイト構築、コミュニティ運営のコンサルティングなどを行っている。近著に『Webユーザビリティ・デザイン Web制作者が身につけておくべき新・100の法則。』がある。
(イラスト:MIKAさん)
クロッシングフィンガーズ:http://www.crossingfingers.org/
KeiYu HelpLab:http://www.keiyu.com/



ユーザビリティの定義について


ユーザビリティという言葉は、Webが出現する以前から工業製品やソフトウエアなど幅広い分野で使われています。人間工学、認知心理学など多方面からの研究がなされ、その定義にはさまざまなものがあります。

たとえば、Webにユーザビリティという概念を最初に持ち込んだひとりであるヤコブ・ニールセンは著書『ユー ザビリティ・エンジニアリング』でユーザビリティの5つの特性として「学習しやすさ」、「効率性」、「記憶しやすさ」、「エラー」、「主観的満足度」を挙 げています。また、国際標準規格ISO 9241-11、またそれに基づいて作成された日本工業規格JIS Z8521では下表のように用語を定義しています。

使用性
(usability)
ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び満足度の度合い
有効さ
(effectiveness)
利用者が、指定された目標を達成する上での正確さ及び完全さ
効率
(efficiency)
利用者が、目標を達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源
満足度
(satisfaction)
不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度
表1:JIS Z8521よりWebユーザビリティに関係の深い部分を引用

規格ですから言葉が難しいのですが、噛み砕いていえば、その製品を使う対象となるユーザーが、間違えずに最後 までたどりつけるかどうか、その目的達成までに無駄な時間や労力を使うことがないか、嫌な思いをせずに目的を果たして満足し、好印象を持てるかどうかとい うようなことになります。ニールセンの定義も、この規格に内包されています。

Webサイトの場合のユーザビリティを考える


Webユーザビリティにおいても上述の定義は通用するものです。オンラインショップの場合を例に考えてみる と、まず、ユーザーがほしい商品を探し出して購入できることが第一条件となります。どこのカテゴリにあるのかわからなくて探すのをあきらめたり、購入手続 きができずに買うのをあきらめたりすれば失格です。

次に、購入するまでの間に、ショッピングカートに商品を入れる方法がわからずにあちこちのページをうろうろしたり、入力に戸惑って取り消し操作を続けるようなことがあれば、効率が悪いということになります。

最後に、購入はすんなりとできたとしても、なんだか広告だらけのサイトで嫌な感じがしたりすれば満足度においては減点となります。

Webユーザビリティを高めると、そのサイトに対するユーザーの印象をよくし、顧客満足度を上げることができ ます。よい体験をしたユーザーはリピーターやファンといった優良顧客となり、そのユーザーからの口コミ効果も期待できます。ですから、小手先の技術の問題 というよりも、まず顧客サービスの一貫として、Webユーザビリティをとらえておくことが重要です。

この連載中ではユーザーインタフェイスやデザインについての個別の問題も解説していく予定ですが、広い視野からWebユーザビリティをとらえておく必要性があることは、忘れないでいただきたいと思います。

ユーザーの顔と姿を想像してみよう


ネットの利点として、時間と距離を飛び越えて、いつでもどこからでもアクセスでき、サイトを閲覧したり、コミュニケーションを取ることができるということ があります。しかし、現在のネットでは、相手の顔や姿が見えにくいという問題もあります。サイト制作・運営サイドは満足していたとしても、その向こう側に はイライラしたり困惑したりしているユーザーがいるかもしれません。

ネットの向こうのユーザーがどんな顔をしているか、不満顔ならどうしたら笑顔になってもらえるか。忙しい仕事 の中で、ついつい忘れがちになりますが、それを想像する。そして機会があればユーザーの声をキャッチする。ユーザーと対話する。現実には見えない相手で も、そういうことを繰り返して行くことで、これまで見えなかったサイトの問題点が浮かび上がってくるものです。

繰り返しになりますが、これから、技術だけでなく、ハートでWebユーザビリティを考えていってもらえればと思います。


著者より:
本年より連載を開始させていただきました。よろしくお願いいたします。私は、ネットにおける情報発信とは、読者の皆様とのキャッチボールだと考えておりま す。ご感想・ご質問などがございましたら、 [プロフィール]欄のサイトに記載しておりますメールアドレス宛にお気軽にお寄せいただければ幸いです。


次回につづく
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