第4話 日本人ならではのスタイルで海外の仕事をしたい | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 日本人ならではのスタイルで海外の仕事をしたい

2024.4.19 FRI

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2003年設立後、ルイ・ヴィトン・ジャパンのブランディングサイト、ADCのサイトなど、数々のブランディングサイトで評価を集めるSIMONE。そのSIMONEのクリエイティブ・ディレクター/代表であるムラカミカイエ氏に話をうかがった。

第4話 日本人ならではのスタイルで海外の仕事をしたい




??SIMONEが求める人は、どんな人ですか?


ムラカミ●SIMONEで働くことに必然性を見いだしている人ですね。SIMONEは、ファッション的志向が強く、感覚値が高いユーザーやクライアントにとって理想的なWEB環境を作るために存在している会社です。WEB業界には様々なスタイルやセンスを持つ会社が存在していますが、SIMONEは”ファッション”を中心に据えているという点で、方向性は非常に明快でわかりやすい会社だと思います。現状、ファッションを取り巻くWEB環境は、発信側、受信側、共に全分野的に未成熟で課題はいまだ多くありますし、WEB上にはファッションがコンテンツとして持つ振り幅の中で埋めきれていない領域がまだたくさんあります

僕らはこれまでブランディングサイトを中心に手掛け、今後もその活動をより深く活性化させていく一方で、そういったWeb上の空き領域に自分たちの考えるアイデアやセンス、システム、コンテンツを盛り込むための準備もしてきました。いまはそれらを具現化させていくためにディレクターやデザイナーに限らず、Web構成上必要な様々な職種、企画やマネージャーなど幅広く人材を募集しています。これまでもそうでしたが理想的なモノを作り上げていくためにはセンスだけではなく、根を詰めた作業が待ちかまえていますが、それを乗り越えるためには、まず個々に強い意志と意欲があり、同じセンスや目的を持つ人間が集う会社との出会いに喜びと必然性を感じることが一番重要だと考えています。

職種にかかわらず共通して望むことは、状況を見て自分で考えて動ける人。あと精神的にも肉体的にもタフであること。SIMONEは、多種多様なセンスと技術、指向性を持っている人間の集まりなので、それらに埋もれない、個性の強さと提案力、行動力を備えているコトを一番重要視します。クリエイターに求めるポイントとしては、映画やミュージックビデオなどのエンターテイメント指向のメディアが好きで映像表現に強い人や、ファッションフォトや雑誌を見ることが好きですでに形にしている人は常に求めています。単純に僕の望むスタイルに直結しやすく、楽しんで仕事ができる。感覚値の話を言語化することほど煩わしくて陳腐なコトはないので、ディスカッションやブレストを阿吽の呼吸で出来ることが理想的ですね。


??今後のWebに望むことはありますか?

ムラカミ●幅と深さが出てくることを期待しています。Webが持っている本質的キャパシティに対して、具現化されているサイト数はまだまだ足りていないですし、今後もその足りない部分を穴埋めしていく作業は続いていくでしょう。僕らはその穴をどれだけ良質で有意義なモノで埋めていけるか。を考えていかなければいけない。今後必要とされてくるのは、専門性に特化し一つの分野について掘り下げた、限りなく属性が明快なマイノリティ向けのサイトですね。

趣味指向もバラバラで不特定多数に向けたメジャーなサイトとは違い、「ユーザーの求めるモノに対してピンポイントに心を掴む」ことを前提としている。こういったサイトを作るには、クライアントやユーザーのことを掘り下げ、理解を深め、どうアプローチするか。という一流料亭でのおもてなしに似た、デザイナーとしての基本姿勢と質の高さが試される。業界全体で見ると、そういう本来必要なハートを持つ人材がまだまだ足りていないように感じられます。Webは構成要素が多く、完成度の高いモノを作るには時間も費用もかかりますが、「既存のテンプレートにはめる」という制作者サイドの事情に、クライアントの意向が飲み込まれているケースが最近あまりにも多い。こういった例が完全になくなることは無いと思いますが、今後Web業界の文化レベルを上げていくためには、こういった部分から真摯に取り組んでいかなければならないと考えています。

あと、これも文化レベルからくる話なのかもしれませんが、現状Webを評価するのにあたって「面白い」というキーワードで該当するサイトへの評価傾向が強いと感じています。これは僕らを含めた作り手側の課題でもあるのですが、本を読んでいても「面白い」演出、「面白い」コンテンツ、予測不可能な「面白い」動きをするなどの語句が多く、美しいとか、官能的とか、映画を評価するときに出てくるようなキーワードで評価されるモノがまだなかなか出てきていない気がします。評価する側もそういった角度や視点で見ていない。メディアの技術は「笑い」と「エロ」を取り扱う産業から進化して普及していく傾向が強いですが、すでにその段階は過ぎているし、違う視点の評価軸を誘発するサイトが出てこなければいけないタイミングだと思います。


??SIMONEの今後について教えてください?

ムラカミ●まず今年はブランディングサイト以外での僕らの可能性を探究すること。これまでファッションをベースとしたポータルやECなどのオファーは数多くありましたが、それをやるにもSIMONEらしいアイデアとシステムが必要だと思っていて。ようやく満足行く考え方とその形が出来つつあるので、その精度を高めつつ徐々にOUTPUTしていきたいと思っています。

あともう一つ、海外の仕事を積極的にやっていく予定です。Webは非常にボーダレスな特性を持つ分野なのに、なかなかそれができていない。日本は日本特有のとても曖昧で繊細な複雑なマーケティングを体系化できているわけだし、世界的に見てもずば抜けたエディット感覚や、緻密さも持ち合わせている。海外のADのような明確な方向性が必要とされるマーケットにおいても、本質を見失わなければ、受け入れてもらえる土壌は十分あると強く感じています。

クライアントの長期的ブランディングを考え、常にクールなことを淡々と仕掛けていく。というコンセプトは日本より海外での方がフィットしやすい。日本人だからこそのクリエイティブ、日本人が考えるマーケティング的観点を持って、海外のクライアントと一緒に仕事をしていきたい。海外ですでに活躍されているクリエイター達は、日本人なりのロジックとスキルを持ってやっているわけで、それをWebという分野で表現できたらいいなと思っています。




(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)


ムラカミ カイエ
SIMONE INC. / CREATIVE DIRECTOR

株式会社三宅デザイン事務所にて三宅一生に師事。
入社後間も無くISSEY MIYAKE、ISSEY MIYAKE MENのART DIRECTORとして数多くのプロジェクト陣頭指揮にあたる。独立後、フリーランスを経て、ファッションブランディングをベースとしたクリエイティブカンパニー “SIMONE INC.”を設立
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