第1話 最初は商品という意識はなかった | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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みなさん、ネットアニメ観てますか? ちょっと前まではアンダーグラウンドな動向に思われていた世界ですが、現在大ヒットを飛ばしている『やわらか戦車』を筆頭に一般レベルに浸透してきた新メディア。今回は、その最前線「livedoor ネットアニメ」のプロデューサー・高山晃氏、同サイトで刑事ドラマのパロディ作『マジデカ。』などを公開している作家・みやかけお氏に、ネットアニメの現在と今後について語っていただきます。


第1話 最初は商品という意識はなかった


高山晃氏(左)と、みやかけお氏(右)


ネットアニメ専門サイトの立ち上げ前夜


??2005年12月の「livedoor ネットアニメ」始動から1年あまりが過ぎました。非常に順調な活動のようですが、そもそも立ち上げの経緯とは?

高山●実は僕、それまでネットアニメ的な世界とは無縁だったんです。2005年8月に独立する以前、アニメ制作会社時代にフランスとの合作アニメ企画の件でカンヌに行って、映画『フィフスエレメント』の美術なども担当したフランスのコミック界の大御所メビウスが自身のコミックをFlashアニメーション化した作品『arzak rhapsody』を観たのがきっかけでした。フランスでは、アニメのテレビシリーズをFlashで作ることが結構主流で、有名なコミック作家も一人で動画を作っているんですね。そういう状況を知って、確かに作家が絵を動かしたほうが早いと思うようになった。今後、なんとなくそういう時代になっていくのでは……と、いまの会社を立ち上げたんです。

??プロダクションではなく、個人ベースでの制作時代の到来を予感して?

高山●ええ。たとえば、漫画家がアニメ制作会社を介さず、自分で絵を動かしてしまうような感覚。でも「2ちゃんねる」や、みやさんのHPなど、ネットの世界では個人レベルで面白いことをやっている人たちはたくさんいる。そんなムードを知ってか知らずか、日高さんという方から当時ライブドアの副社長だった伊地知さんを紹介されて、そのとき日高さんから「Flashのことはこいつに聞け」みたいな紹介をされたんですね。全然、知らないのに(笑)。

??どうしようと?

高山●もともと代理店出身なので、軽い調子で「みんな知り合いです」と言ってしまった。でも毎回、打ち合わせのときに新しい作家のFlash作品を持っていかないとならないから、いきなりメール送って、島根とか大阪とか筑波とかに会いに行ったりしてました(笑)。


高山晃氏

ネットアニメから広がる様々な仕事に多忙な高山さん
??みやさんとも、そうして出会ったのですか?

高山●みやさんは、中京テレビさんの紹介でしたよね。

みや●そうです。

高山●その前から中京テレビさんとFlashアニメの制作を進めてて、同時にインディーズ作家の発掘番組(ウキ→ビジュ)をスタートさせたんです。そのとき、先方がみやさんをキャスティングしたんです。

みや●その番組では、私は非常に不人気だったのですが(苦笑)。

高山●で、ちょうど企画中の「livedoorネットアニメ」でやりませんか……と声をかけました。

日本ならではのネットアニメ事情


??みやさんがネットアニメに興味を持ったのは?

みや●正直、興味を持ったことは一度もないです。以前から『機動戦士のんちゃん』などのGIFアニメは見ていましたが、一般人として「すごい」と思う程度。そもそも、アニメも漫画も興味がなかった人間なんですね。単純に、自分のHPに溜まっていたネタを動かすにはどうしたらいいか……と思ったときに、ちょっとコントみたいなことをやりたいなと思い始めて、たまたまFlashに行き着いたんです。

??そうだったんですか。

みや●もちろん、Flashアニメの動向も知ってましたが、自分がまったく同じ場所に行くとは思いもよらなかった。しかも、Flashを扱うための学習以前に、横浜にある放送ライブラリーに通って、昔の『ゲバゲバ90分』とかばかり見ていたんです。で、Flashでこれぐらい動けばいいか……と。


みやかけお氏

大洋ホエールズ時代からの横浜ファン、みやさん
??基本、お笑い好きなんですね。

みや●ええ、落語も好きですし。年齢的に小学3?4年生の頃に漫才ブームがあって、ドリフターズ、電線マン、ひょうきん族……という世代。高山さんがカンヌに行って新しい潮流を感じているときに、僕は自宅でGIFアニメを見ながら「大変だな、こんなの」と思っていたクチで(笑)。だから高山さんからお誘いがあったときも、なんで僕のところに話が来るのか不思議に思っていたぐらいでした。

高山●いやいや、私も基本はドリフ、ひょうきん族の世代ですから……というのは、どうでもいい話ですね(笑)。

??みやさんのパロディ性に、どこか引っかかるものがあった、と?

高山●お笑いのセンスとは話の次元が違いますが……そもそもフランスでFlashアニメのブームが起きていたのは少人数で作れるというのが第一理由なんです。それまで国内でアニメを作るとなると、人件費が高くて韓国や中国に外注しないとならないという事情があった。でも、フランス政府は「国内で作れ」という政策を打ち出してて。そこでFlashを使えば、外注しなくても国内で100%作れるようになったんです。

??なるほど。

高山●その結果、Flashスタジオがたくさんできたわけですが、日本の状況とはちょっと違うんですよね。日本におけるFlashアニメの台頭は、個人の作家がガシガシ作品を作ってネットで公開するようになったという、世界的に見ても珍しい動き。たぶん漫画やイラスト……もっと言えばお笑いの文化に近い。それがFlashによって、個人でどんどん頭角を現すことができるようになった。

みや●だから、最初は商品という意識はなかったんでしょうね。

高山●そうですね。みんな、勝手に作って出している感じ。

みや●5?6年前まではプロも素人もなく、同じ土俵にいましたから。

高山●ネットからどんどん沸き出てくるという、いわばYouTube的な展開。2ちゃんねるだったり、みやさんみたいに自分でサイトを立ち上げている人たちが中心で、それは日本ならではの雰囲気があるように思います。



次週、第2話は「既存のメディアとの違い」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



高山晃氏

[プロフィール]

たかやま・あきら●1964年生まれ。同志社大学商学部卒業後、広告代理店、映像制作プロダクション、アニメーション会社勤務を経て、2005年8月にインディーズアニメのプロデュース企業、株式会社ファンワークスを設立。livedoor ネットアニメの企画・運営、テレビ番組や携帯コンテンツの構成などを手がけている。

http://www.fanworks.co.jp/



みやかけお氏

みや・かけお●1971年生まれ。1999年より自身のWebサイトを開設。2003年「ザ・ガーベージ・コレクション」として新装、Flashによる映像作品などを公開。2005年、DVD『みつおの世界』を発表。現在、livedoor ネットアニメで「マジデカ。」を連載する他、アニクリで「坂井さん家の卓袱台ハッピートーク」を公開している。http://garbage.web.infoseek.co.jp/


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