第2話 自分の好きな曲を選ぶのに、嘘はない | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

2006年5月にスタートし、まもなく1周年を迎える音楽発見サイトMUSICSHELF(ミュージックシェルフ)は、CD、DVDなどエンターテインメント・パッケージの印刷・加工でトップシェアを持つ株式会社金羊社が始めた、音楽と人をつなぐサービスである。そのミュージックシェルフの企画・運営に携わる中村博久氏に話を伺った。

第2話 自分の好きな曲を選ぶのに、嘘はない


――なぜ印刷業務を中心とした金羊社がこういったサイトをはじめることになったのでしょうか?

中村●金羊社は、CD、DVDなどのエンターテインメント・パッケージの印刷・加工を主業務としている会社で、昨年創立80周年を迎えた歴史のある会社なんです。その中で、ぼくが所属している企画営業部というセクションは、古くはCD-ROMやCDエキストラの制作から、今ではDVDオーサリングやプロモーションWebサイトの制作など、パッケージ以外のデジタルコンテンツに関する企画・制作業務を担当しています。本来「お客様のお役に更に立つ」という会社としての大きなテーマがあって、3、4年くらい前から請負ビジネスだけでなく、インターネットを使ってなにか新しい提案ができないだろうかと、具体的なアクションを始めました。

当時、音楽業界においてCDの売上とともに、プロモーションの予算が減ってきているというお話しをよく耳にしました。とは言え、誰もがアーティストや作品をプロモートしたいわけです。特に、新人アーティストや素敵な作品を作り続けているベテラン・アーティストの情報が途切れることは、リスナーとしても不幸なことです。そこで、その受皿となるような新しい概念のサイトを作れば、皆さんにプロモートのために使ってもらえるのかなと思ったんです。リスナーは、ヒットチャートやレコード会社にこだわって音楽を探しているわけではないし、逆に音楽好奇心が旺盛なリスナーが集まってくれるサイトができたらいいなって。

CDジャケットは、「音楽」という作品をリスナーに伝えるためにデザインされ、印刷されているわけですよね。ミュージックシェルフも、そういうジャケット的役割りをプロモーションメディアとして追求していきたいです。本人のプレイリストを通じて新人アーティストの一面を知ってもらえたら、というのもそういう意味です。良い音楽を伝えたいという想いが、良い音楽を聴きたいという人に伝わってほしい。作り手の皆さんのお手伝いという意味で、ジャケット製造もネットコミュニティ運営も本質的に同じ気持ちでご一緒させていただいてると思っています。


――はじめてみてからの反応はどうでしたか?

中村●1年前にオープンした頃は、「プレイリスト」という言葉さえ一般に認知されていなかったんです。それで、まず最初にプレイリストのお手本を見せていただきたくて、知り合いの音楽関係の仕事をしている人たちの協力で、少しずつアーティストや音楽ライターの方々に参加してもらえるようになりました。さすがに、独特なテーマ設定と個性的な選曲による素晴らしいプレイリストが集まってきました。プロのアーティストは、プロのリスナーである。このことは、とても大きな発見でした。

編集部は社内には3名ですが、様々なライターさんはじめブレーンの方々の協力のもと、特集インタビューや連載コンテンツを制作しています。アーティストのルーツを探る特集インタビューや『子どもたちに聴かせたい、伝えたい10曲』というテーマ連載など、いくつかのコーナーを設置してWebマガジンとして掲載しています。とてもうれしいことに、ここではアーティストの方々が、ひとりの音楽ファンとして楽しんでプレイリストを選曲して、インタビューに応えていただいています。現在では、ご紹介やご案内もいただき、数多くのアーティストの方々にプロモーション活動の一環としてミュージックシェルフに参加していただけるようになりました(セレクタ人数:取材時347名)。

――現在ページビューはどのくらいなのでしょうか?

中村●まだ、数字的には月間95万ページビューという小さなメディアです(07年4月時)。でも、はじめて間もないにも関わらず、月10万人以上の音楽ファンの方々が見に来てくれた、ということが驚きでした。音楽に対して積極的な方たち、探している人たちの力に少しでもなれてたらいいな、って思っています。

――どんな方が見に来ているのでしょうか?

中村●メンバー登録は幅広くて、13歳から70歳代の方もいらっしゃいます。若い子からは、もっとCDが聴きたいです!というメッセージもいただいたり。当初、ぼくらの想定としては20代後半から40代くらいをイメージしていたのですが、やはり音楽を積極的に求めるということについては、世代は関係ないようですね。佐野元春さんの言葉でとても的確なフレーズがあります。「音楽の恩恵をうけて、自分の人格形成やライフスタイルに影響を受けている(きた)人たち」、まさにそうだなあって思いました。

――他の音楽サイトとの違いはなんでしょうか?

中村●僕自身もそうですが、音楽のない生活ってヤダ!というのが、まずあると思うんです。それは日々の生活に音楽が組込まれているということですが、その割に音楽に関する新しい拡がりを得るチャンスが少なくなってきていると思っています。いろいろな音楽情報サイトがありますが、多くの人たちがわかるメジャーなアーティスト情報サイト、あるいは、コアファンによるとてもマニアックなサイトというのもありますよね。でもその間の、幅広く知りたい音楽ファンのためのサイトって少ないと思うんです。

左:5月15日リニューアルオープンしたミュージックシェルフのサイト新たにメンバーもプレイリストを作成して公開できるようになっている






その中でも、「プレイリスト」を中心に置いたという点が大きな違いでしょうか。自分の好きな曲を選ぶのに、嘘はない。自分が影響を受けてきた曲を挙げる時には、皆さんピュアにアーティスト自身の素の部分を見せていただいてると思うんです。そういうアーティストの魅力をストレートに感じることができれば、音楽ファンにとってとても安心できる情報になりますよね。

また、5月15日のリニューアル以降は、メンバーの方々もプレイリストを作って公開できるようになります。そして同じ曲は自動的に判断されますから、プロのアーティストと高校生がある1曲についてコメントが同時掲載されることも、他ではあまりない経験だと思います。


→第3話に続く


(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨  撮影:谷本夏)




中村博久●なかむらひろひさ
MUSICSHELF編集部
株式会社 金羊社 企画営業部 副課長

(プロフィール)
1968年生まれ、神奈川県横浜市出身。
主にエンターテインメント商品やプロモーションの分野で、DVDやWebサイトのディレクションを行っている。

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